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「悪」は存在しないかもしれないけど、「悪人」は存在する気がする/濱口竜介監督『悪は存在しない』

「悪」は存在しないかもしれないけど、「悪人」は存在する気がする/濱口竜介監督『悪は存在しない』

 『ドライブ・マイ・カー』でも音楽を担当した石橋英子さんのライブ映像の製作をきっかけに作られた『悪は存在しない』。

 昨年のヴェネチア映画祭で初お披露目となったこの作品は、濱口竜介監督の2年ぶりの新作でしたが、制作されていたこと自体が衝撃のニュース(ほんとに誰も知らなかったのよ!)だった上、銀獅子賞(審査員大賞)と国際映画批評家連盟賞をW受賞したもんですから、本当に驚きました。

 アカデミー賞

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やっぱりソフィア・コッポラはソフィア・コッポラだった/『プリシラ』

やっぱりソフィア・コッポラはソフィア・コッポラだった/『プリシラ』

 エルヴィス・プレスリーが亡くなったのは1977年のこと。

 ギネスブック(いまは正確には「ギネス世界記録」らしい)に最も成功したソロアーティストとして載っているエルヴィスの伝記映画がはじめて作られたのは意外にも2022年とわずか2年前。
(テレビ映画は2作が製作されています。)

 セレブリティの伝記映画はハリウッドでは題材として人気があり、存命中に製作されることも少なくありませんので、今まで

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【2024年】これから日本公開予定の注目作

【2024年】これから日本公開予定の注目作

 『異人たち』、ご覧になりましたか!?コナンもいいけど、『異人たち』もね!

 『オッペンハイマー』は公開されましたが、今後も有力作が目白押しです。今年はもっと映画館で観たいです。

4月公開悪は存在しない

 濱口竜介監督最新作。邦画で現在のアカデミー賞有力作品はコレ。4月26日公開。

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命

 3か国合作の昨年のカンヌコンペティション部門出品作品。同じ

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109シネマズプレミアム新宿に4,500円の価値はあるのか!?

109シネマズプレミアム新宿に4,500円の価値はあるのか!?

 高校生から映画館に欠かさず通っている自分ではありますが、映画館に行かないというひとたちは少なからず存在します。

 文化庁が行っている「文化に関する世論調査」というものがあるのですが、サンプル数3,000人に対する「1年間に芸術鑑賞をしたか?」という質問に対し、No(鑑賞したものはない)と回答したひとはなんと47.8%も占めています。

 「映画鑑賞」と回答したひとは39%(性格にはアニメ以外が

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『異人たち』はマイノリティの孤独を映像化した涙の傑作

『異人たち』はマイノリティの孤独を映像化した涙の傑作

 日本の小説を原作とした洋画ってあまりなくて、最近だと『ブレット・トレイン』、『沈黙 -サイレンス-』くらいでしょうか。

 『ブレット・トレイン』は清々しいほどとんでもジャパンだったので、元々が伊坂幸太郎氏の小説とは思えない感じでしたが、『沈黙 -サイレンス-』はスコセッシだけに真面目な作品でしたね。

 スコセッシ監督は狐狸庵先生こと遠藤周作が好きなようで、『沈黙 -サイレンス-』は原作と出会

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ようやく全米脚本家組合賞(WGA)が発表/賞レース脚本賞を振り返る

ようやく全米脚本家組合賞(WGA)が発表/賞レース脚本賞を振り返る

 アカデミー賞授賞式が終わったことにより、2023年度の賞レースがすべて終わったかと思いきや、実は重要な前哨戦である全米脚本家組合賞の発表がされていませんでした。

 その理由はもちろんWGAのストライキによる影響です。

 全米脚本家組合賞は、アカデミー賞にも影響が大きく、由緒ある賞なのですが、やはり「前哨戦」という位置づけが強いことから、今回はエントリーをしなかった作品が少なくありませんでした

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『アイアンクロー』はプロレスファンでなくても問題なしのイケメンマッチョの祭典映画

『アイアンクロー』はプロレスファンでなくても問題なしのイケメンマッチョの祭典映画

 一度目の引退から30年近く経つというのに、大仁田厚といえば「有刺鉄線」「電流爆破」が頭に思い浮かぶように、フリッツ・フォン・エリックといえば「アイアンクロー」。

 というかもう「アイアンクロー」はプロレスの定番技ですよね。

 そんなフリッツ・フォン・エリック一家を題材としたA24配給映画が登場。その名も『アイアンクロー』(原題同じ)

『レスラー』以来の真面目なプロレス映画 真面目にプロレス

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スーパーボウルを彩ったディーバたちと映画

スーパーボウルを彩ったディーバたちと映画

 アメリカで毎年一番の視聴率を稼ぐ番組は、アカデミー賞…ではなく「スーパーボウル」です。

 日本では馴染みがないアメリカンフットボールですが、他を寄せ付けない人気で野球を遥かに超える人気です。
 そのプロリーグであるNFLの優勝決定戦である「スーパーボウル」は、それ自体が一大産業で、30秒のCM枠の価格が650〜700万ドルと言われており、数年前にメルカリがCMを流したことでも話題になりました。

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【第96回アカデミー賞】受賞者たちの今後の待機作

【第96回アカデミー賞】受賞者たちの今後の待機作

 授賞式から3週間が経ち、来年のアカデミー賞に向けた噂がチラホラ出て生きています。

 フランシス・フォード・コッポラ監督の10年以上ぶりの新作"Megalopolis"やレディガガが出演する『ジョーカー』の続編"Joker: Folie à deux"など…。

 次回アカデミー賞の予想はまた改めて記事にするとして、ひとまず第96回アカデミー賞受賞者たちの今後の予定について見てみましょう。

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世代にはたまらない現代のラブ・ストーリー『パスト ライブス/再会』

世代にはたまらない現代のラブ・ストーリー『パスト ライブス/再会』

 第96回アカデミー賞に向けた賞レースで、インディペンデント映画として最後までトップランナーだった作品が『パスト ライブス/再会』です。

 毎年1月に開催されるサンダンス映画祭で絶賛されると、その勢いのまま6月に公開され、ほとんど息切れしないまま、アカデミー賞でも2部門でノミネートされました。

 作品賞にノミネートされた作品で、個人的一位は『オッペンハイマー』ではなくこの作品でした。

数々の

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『オッペンハイマー』をより楽しむために頭に入れておきたい3つのこと

『オッペンハイマー』をより楽しむために頭に入れておきたい3つのこと

 ついに本日公開となったクリストファー・ノーラン監督、『オッペンハイマー』。

 「複雑」とも言われる本作ですが、同監督の『メメント』や『インセプション』、特に『TENET テネット』に比べたらそこまで身構える必要はありません。

 ただ『メメント』などと比べて、【1】登場人物が桁外れで、セリフもかなり多いこと、【2】(主に核関連の)物理学の用語が出てくることもあり、字幕で追うとちょっと置いてけぼ

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アカデミー賞にノミネートされた舞台が原作の映画たち

アカデミー賞にノミネートされた舞台が原作の映画たち

 Amazonプライムのラインナップに『市子』が加わって、Xなどでぼちぼちレビューがまた増えてきているようなのですが、この『市子』が実は舞台を原作とした作品ということを知っているひとは多くないようです。

 原作舞台は『川辺市子のために』のタイトルで再演となった舞台で、再演の際には『川辺月子のために』という続編も制作されました。

 このあたりのお話はnoteに投稿済みなので上記をご覧いただくとし

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第96回アカデミー賞の振り返り/予想を外した部門

第96回アカデミー賞の振り返り/予想を外した部門

 授賞式から2週間が経ち、世間の話題も移ってきていますが、しつこく第96回アカデミー賞についてこすっていきます。

 まずは外した部門の反省会から。

【主演女優賞】リリー・グラッドストーン→エマ・ストーン 主演女優賞はリリー・グラッドストーンがSAGの結果を見て予想しましたが、甘かったです。

 ここで考慮すべきだったのが、SAGでのエマ・ストーンがリリー・グラッドストーンの受賞を心から喜ぶ様子

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【第96回アカデミー賞】短編ドキュメンタリー映画賞候補作ランキング

【第96回アカデミー賞】短編ドキュメンタリー映画賞候補作ランキング

 短編ドキュメンタリー映画部門がアカデミー賞に新設されたのは1941年のことで、衣装デザイン賞(1948年)、メイクアップ&ヘアデザイン賞(1981年)、ドキュメンタリー映画賞(1947年)、アニメーション映画賞(2001年)より歴史のある賞です。

 日本ではあまり特集されない部門ですが、今回はじめて授賞式前に候補作を観て、さすがアカデミー賞、侮れないなと改めて感じました。

 これはドキュメン

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