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『涙雪』

クリスマスが近づいてくると

(といってもまだ1ヶ月弱あるが…)

ある友人のことを思い出す。

付き合い始めたばかりの女の子と

とてもいい雰囲気で

その年のクリスマス当日に、当時流行っていた

Folli Follieのネックレスをプレゼントするんだと

とても嬉しそうに僕に話してくれた。

そんな幸せそうな友人を見ていて

僕もほっこりした気分になったのを覚えている。

しかし、、、

現実とは残酷なものだ。。

クリスマスの3日前に友人はフラれた。

理由までは教えてくれなかった。

「新品のネックレスどうしてくれんだよ。」

と友人は笑っていたが、辛かっただろうに。

出逢いに別れはつきもので

出逢いと別れを繰り返して人は成長していく。

クリスマスが近づくと、

なぜだかいつも彼を思い出す。

『涙雪』

枯れ葉が舞い散る頃

静かに聴こえてくる冬の足音

街を行き交う人々は

庇い合うように

お互いに身を寄せる

華やかに彩られたクリスマスの夜は

心踊らせた恋人達の歌が流れて

紛れるように僕も街の真ん中に立ち

約束していた彼女を待つ

選びぬいた贈り物一つ

ポケットに携えて

ハラリハラリと降り始めた雪は

次第に街を染め始める

そうだ 二人が出逢った時も

こんな雪景色

缶コーヒーを二本買って腰を下ろし

周囲に目をやると

前から彼女が少し遅れて現れた

満面の笑みで迎える僕と

下を向く彼女

二人の間に生じる温度差に

僕は気づくことなく

ポケットから取り出した

贈り物を彼女に

「メリークリスマス」

という言葉を添えて

「受け取れない」と両手を伸ばし

告げられたのは別れの言葉

まだハラリハラリと

降り続く雪は

風に流され空に舞う

どんなに手を伸ばしても

もう今は届かない

背を向けて去っていく

彼女の姿を見つめていた僕は

頬に残る雪の結晶を

ただ溶かしていた

震える肩に涙交じりの声

煌々と灯していた蝋燭の明かりは

光を失ってしまった

まだ長いまま

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