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ポール・グリーングラス監督『ブラディ・サンデー』実際の事件をドキュメンタリックに描いたサスペンス


<作品情報>

1972年1月30日、北アイルランドのデリーでデモ隊と軍隊が衝突し、13人の死者を出した「血の日曜日事件」をドキュメンタリータッチで再現した社会派ドラマ。2002年・第52回ベルリン国際映画祭で、「千と千尋の神隠し」とともに金熊賞を受賞した。北アイルランドで公民権運動のリーダーを務める下院議員アイバン・クーパーは、カトリック系住民に対する差別や政府による裁判なしの拘禁に反対するデモを計画。デモはあくまで平和的に行われるはずだったが、イギリス軍も過剰に警備を強化し、デモ隊を刺激する。やがて一部の若者が投石を始めたことから現場は混乱し、銃撃戦へと発展。一般市民13人が死亡、14人が負傷するという最悪の事態を招く。エンドロールには同事件を題材にしたU2の「Sunday Bloody Sunday」が流れる。

2002年製作/111分/イギリス・アイルランド合作
原題:Bloody Sunday

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

上村
素晴らしい!キレのある演出と編集、ドキュメンタリーのようなリアルな感触のある傑作です。
アイルランドの都市デリーでの行進が思わぬ惨事へと発展してしまうサスペンスなのですが、ドライな描き方がとにかく素晴らしいですね。
地方議員アイヴァン・クーパーの視点でIRAや同志たち、そして警察や政府との軋轢を見事に描いています。
映画としても文句のつけようのない傑作ですが、これが実際に起こった事件であり、誰一人政府側は逮捕されたりしなかったという事実が怖い。軍の指揮者はこの後叙勲されたという字幕で唖然となります。
もちろんこの映画の視点が絶対に正しいとは限らないのですが、どう考えてもやりすぎているのは明らかなのに。終盤自作自演するシーンの差し込み方の見事さ…流石グリーングラスです。
永遠の傑作『千と千尋の神隠し』と同時受賞した本作、ハードルが勝手に上がっていましたが、それを余裕で超えてくる傑作でした。

吉原
世界三大映画祭の受賞作品には、「父の祈りを」「麦の穂をゆらす風」「マイケル・コリンズ」など、アイルランド問題を題材にした作品が非常に多い印象ですが、その中でも本作は非常に生々しく残虐性のある作品であると感じました。
本作はTV映画として制作された作品ですが、デモに参加している若者たち、そしてそれを阻止しようとするイギリス陸軍と同じ目線で物語が展開されるため、TV映画とは思えないほど没入感があります。
他の作品でアイルランドとイギリスの関係性についてある程度学んでいると、理解しやすいかもしれないけど、本作だけだとなかなか難しいと思うので、同時期のアイルランド問題を題材にした「ベルファスト」と「父の祈りを」と一緒に観るのがおすすめかもしれません。

<おわりに>

 今も活躍するポール・グリーングラス監督のドキュメンタリー調の映画作品です。アイルランドのことをより知ることが出来る一作です。

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