「全部みる」シリーズ

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    ベルリン国際映画祭の最高賞・金熊賞の論評です。

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    アメリカ、映画の祭典アカデミー賞で作品賞を受賞した作品を全部みていくという企画です

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    キネマ旬報外国映画ベストワンを受賞した作品を全部みるという企画です

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    カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールの受賞作品の論評です。

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「全部みる」シリーズのすべて~または私達は如何にして映画の光を信じて作品を観ようと思ったか~

はじめに 私たちがこの企画を始めたのは「何かを達成したい」という気持ちからであります。 例えば、金熊賞の作品を全部観た人はどれくらいいるでしょうか。 それを達成できれば私たちはもう一段上へと登っていけると思うのであります。 ここでは映画祭や映画賞で受賞した作品を全制覇することを目的とし、評価とレビュー、対談を交えて一記事とします。 この企画が何かの役に立てば幸いです。 メンバー 〇おいしい水 1996年生まれ。北海道出身の現役大学院生。 ピアノ弾き語りシンガーソン

    • ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア』疾走感あふれる人間ドラマ

      <作品情報> <作品評価> 55点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 『トレインスポッティング』のダニー・ボイルの監督作です。つまらなくはないけど色々都合良すぎますし結末それでいいの?と思ってしまいます。 鮮やかな色彩と勢いのある演出、撮影は凄いです。でも話としてはどうなんだろう。コルトの問題はあれ答えられるだけの情報ありましたかね?最後の2問に至っては単に勘でしかないですよね?というか彼女と話せた時点で終わりでいいんじゃない?刑事はそれ

      • ディアオ・イーナン監督『薄氷の殺人』ビビッドな中国ノワール

        <作品情報> <作品評価> 85点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 好きっていう結論以外思い浮かばないです。 今でもなにがすごいのか未だに分からないんです。ストーリーはよくあるファムファタルものですし、特徴的な撮り方とかそういうわけでもないですし。なんでしょう。 やはり監督の計算し尽くされたストーリーテリング、何気ないけどこれまた計算され尽くした撮影と美術、あとロケーションの素晴らしさでしょうか。しかしそれは一部でしかないんですよね。

        • カリン・ペーター・ネッツアー監督『私の、息子』風変わりなルーマニア映画

          <作品情報> <作品評価> 85点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 原題「Child's Pose(胎児の姿勢)」が示すのは公式サイトによると「子どもが母親の胎内で丸まっている姿勢。親が子を育む愛情が、実は子どもを窒息させていること、親が子供の人格形成に傷跡をあたえているという、現代社会の抱える普遍的なテーマ」を示しているそうです。 ベルリン映画祭ってやっぱり独特ですよね。これも『タッチ・ミー・ノット』や『心と体と』のように面白いか、と

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        • 金熊賞全部みる
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          8本
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          アンソニー・ミンゲラ監督『イングリッシュ・ペイシェント』壮大なラブストーリー

          <作品情報> <作品評価> 55点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 スケールの壮大さは認めますが、「はぁ…だから何なんすか…」としか思えなかったです。 全てが淡々と薄味で進んでいくのがつまらないんですよね。美しいシーンもあるがいかんせん薄味すぎて印象に残りません。 ジュリエット・ビノシュのキャラクターの必要性が分からなかったです。いてもいなくても変わらなくない? 流し見する分には退屈しないが、後に何も残りません。彼らがなぜそんなに惹かれ

          アンソニー・ミンゲラ監督『イングリッシュ・ペイシェント』壮大なラブストーリー

          ピーター・ボグダノヴィッチ監督『ラスト・ショー』アメリカン・ニューシネマの名作

          <作品情報> <作品評価> 60点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 思ったよりずっといい作品でした。ボグダノヴィッチ監督らしい叙情的な演出が光る秀作です。 アカデミー賞を受賞した二人は確かに美味しい役どころです。街のボス的なサム、高校生と不倫するルース。サニーとデュエーンというタイプの違うイケメン、ジェイシーという狡猾な女性という描き分けができています。 寂れた炭坑町ならではの閉塞感もあります。街のまとめ役的な役回りだったサムが死んだこ

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          熊井啓監督『海と毒薬』骨太な社会派サスペンス

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 若き日の渡辺謙がW主演でやっぱりカッコいいな〜 医学における倫理観をめぐる対立、医学部長をめぐる争いとか最近見た『白い巨塔』に似てるなと思いました。しかしそっちで善良で正直な医者を演じていた田村高廣がこっちでは正反対の役でそこも興味深いです。 手術室の床にはる水、そこに落ちるガーゼなどケレン味のある映像がなかなか面白いです。生々しい手術風景もスゴい。 岸田今日子はもう出

          熊井啓監督『海と毒薬』骨太な社会派サスペンス

          スティーブン・ソダーバーグ監督『セックスと嘘とビデオテープ』風変わりなヒューマンドラマ

          <作品情報> <作品評価> 65点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 非常に奇妙で風変わりな作品、まるでヨーロッパ映画とアメリカ映画を折衷したような感じです。 セックスレスな夫婦と夫と不倫してる妻の妹、そこに夫のかつての親友が入り込むことで波紋が広がります。 夫と妹がマジクソすぎてイライラしたんですが、最後はまあそうなるわなと。収まるべきところに収まった感じでした。 途中までは親友の男が闖入者だと思っていたのですが、実は妻アンこそが価値観

          スティーブン・ソダーバーグ監督『セックスと嘘とビデオテープ』風変わりなヒューマンドラマ

          デヴィッド・リンチ監督『ワイルド・アット・ハート』変人だらけのロードムービー

          <作品情報> <作品評価> 70点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 デヴィッド・リンチ監督×ニコラス・ケイジ×ローラ・ダーン×ウィレム・デフォーという時点で好きに決まってます。 母親を演じたローラ・ダーンの実際の母であるダイアン・ラッドもアカデミー賞助演女優賞にノミネートされただけあって強烈でした。 男女の逃避行もので割とすいすい話は進んでいくのですが、出会う人全員変人ばかり。それに加えて悪い魔女とかが入り込んでくるもんだからもう何がな

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          ボブ・フォッシー監督『オール・ザット・ジャズ』めくるめく自伝的名作

          <作品情報> <作品評価> 60点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 自らの死期を悟ったボブ・フォッシーが命を削るようにつくった自伝的作品です。単純なミュージカルではなく、自らの過去を振り返る幻想のような形でミュージカルシーンが挟まれます。 やはりミュージカル出身監督だけあり、迫力あるミュージカルシーンは文句のつけようがないほどきらびやかで独創的です。 ロイ・シャイダーの、薬でなんとか体調を保ちながらの演技も軽やかながらリアルでとてもよか

          ボブ・フォッシー監督『オール・ザット・ジャズ』めくるめく自伝的名作

          ジョージ・ミラー監督『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ノンストップ活劇大作!

          <作品情報> <作品評価> 95点(100点満点) オススメ度 ★★★★★ <短評> おいしい水 人殺しながら行って帰ってくるだけなのになんでこんなに面白いんだろう? 映画の面白さってこうですよね。『バーフバリ』に近いものを感じました。美術、キャスト、演出、全てが素晴らしすぎます。 前作みてないですし、一回見ただけじゃ細かいところまで語れないですね!!とにかく面白かったです!! 吉原 僕が高校1年生の時に公開された作品で、僕の人生を大きく変えた映画の一本でもありま

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          黒沢清監督『スパイの妻』真実はどこに?緊迫感あふれるサスペンス

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 銀獅子賞とか抜きにして普通に映画としてめちゃくちゃ面白い!お見事!いや、ほんとにあっという間でした。 戦争の話ではありますが、夫婦の疑心暗鬼合戦がとにかくおもしろいです。とはいえ黒沢清にしては独特のホラー演出はあまりみられなかったのですが、セリフの間や沈黙、カメラワークが素晴らしく、全体に終始漂う不穏感は流石黒沢清といった感じでした。 もちろん蒼井優や高橋一生など役者も

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          ロバート・アルトマン監督『ショート・カッツ』全てが繋がっていく群像劇

          <作品情報> <作品評価> 65点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 長い!ロバート・アルトマンはあまり合わないかもしれません。物語がどうこうというよりも長くて飽きてしまいました。 10組の夫婦を断片的に描き、微妙に重なっていくという脚本はすごいと思います。しかもジャック・レモン、ジュリアン・ムーア、フランシス・マクドーマンドなど主役級のキャストで。 その中でも目を惹くのはやはりジュリアン・ムーアです。医者の妻で画家というユニークな設定を

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          ヤスミラ・ジュバニッチ監督『サラエボの花』ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が残した傷跡

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 大傑作『アイダよ、何処へ?』の監督ということで期待していました。そしてその期待に違わぬ秀作でした。とてもいい。 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が残した傷跡を切実に描いています。シングルマザーの女性と娘を描いたシンプルな作品ですが、深い傷跡を観客にも残します。 内戦ものは辛くてあまり観ないのですが、本作は観てみるとちょっと違った視点です。母娘を淡々と映し、その背景に内戦が浮

          ヤスミラ・ジュバニッチ監督『サラエボの花』ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が残した傷跡

          ジョン・シュレシンジャー監督『真夜中のカーボーイ』都会の孤独を描いたニューシネマ

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 素晴らしい!これは映画としてすごく面白く、そして革新的です。もろアメリカン・ニューシネマのこの作品がアカデミー作品賞とれたという事実が驚きしかないですね。 時系列関係なく、というか未来に起こるかもしれないことまでごちゃまぜにしたフラッシュバックの編集の迫力が凄いです。多くを言葉では説明しないこの映画の文法がすごく好きでした。 ダスティン・ホフマンがよかったです。終盤はも

          ジョン・シュレシンジャー監督『真夜中のカーボーイ』都会の孤独を描いたニューシネマ

          クラウディア・リョサ監督『悲しみのミルク』ペルーの人間ドラマ

          <作品情報> <作品評価> 65点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 白人裕福家庭に入り込む原住民のメイドという設定や雰囲気は『ラ・ヨローナ〜彷徨う女〜』を連想させました。実際近いものがあると思います。 落ちてバラバラになったピアノや真珠など印象的なシーンも多く、搾取される原住民というモチーフもありがちではありますが、興味深く観ることができました。 吉原 冒頭、「膣の中にジャガイモがある」という衝撃的な一文でどんな物語が展開されるのかと

          クラウディア・リョサ監督『悲しみのミルク』ペルーの人間ドラマ