「全部みる」シリーズ

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    アメリカ、映画の祭典アカデミー賞で作品賞を受賞した作品を全部みていくという企画です

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    ヴェネツィア国際映画祭の最高賞・金獅子賞の論評です。

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    キネマ旬報日本映画ベストワンを受賞した作品を全部みるという企画です

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    カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールの受賞作品の論評です。

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    キネマ旬報外国映画ベストワンを受賞した作品を全部みるという企画です

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「全部みる」シリーズのすべて~または私達は如何にして映画の光を信じて作品を観ようと思ったか~

はじめに 私たちがこの企画を始めたのは「何かを達成したい」という気持ちからであります。 例えば、金熊賞の作品を全部観た人はどれくらいいるでしょうか。 それを達成できれば私たちはもう一段上へと登っていけると思うのであります。 ここでは映画祭や映画賞で受賞した作品を全制覇することを目的とし、評価とレビュー、対談を交えて一記事とします。 この企画が何かの役に立てば幸いです。 メンバー 〇おいしい水 1996年生まれ。北海道出身の現役大学院生。 ピアノ弾き語りシンガーソン

    • ローレンス・オリヴィエ監督『ハムレット』クラシカルな古典の映画化

      <作品情報> <作品評価> 85点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 陰影のはっきりとした美しい撮影、そして豪華な衣装が素晴らしいです。それに加えてローレンス・オリヴィエの演出で優れていると思ったのは空間の見せ方でした。階段や廊下の空間の示し方が抜群に上手いと思いました。父王にハムレットが会うあの塔の上、オフィーリアとハムレットの距離など劇的で不穏な感じを見事に醸し出していました。 ただ、オフィーリアを演じたジーン・シモンズはどうですかね

      • エドマンド・グールディング監督『グランド・ホテル』ホテルに集った人々の群像劇

        <作品情報> <作品評価> 70点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 「グランドホテル」形式と一種の型になるだけあってなかなか面白かったです。男爵が可哀想でしたし、クリンゲラインとフレムヒェンのシーンは泣きました。起こっているのは悲劇ですが、グランドホテルの物語はまだまだ続く、という感じで爽やかに終わるのがいいですよね。 吉原 偶々、そこに居合わせた人々の動きが同時進行で描かれるというスタイルで描かれることの面白さは勿論ですが、あんなに

        • オードレイ・ディヴァン監督『あのこと』臨まぬ妊娠をした学生の12週間

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 徹底したリアリズムによって語られる一人の女性の受難、とにかく辛く痛い映画でした。終盤に向かってどんどんそれが加速していくので観ているのが本当に辛かったです。 本当に監督二作目?というくらい洗練されたディヴァン監督の手腕に舌を巻きます。展開も早く語り口もこの物語には一番適したトーンでよかったです。 人工中絶が違法だったフランス、世界がどんどん保守的になっていく今の時代に語

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          ヒュー・ハドソン監督『炎のランナー』英国産!感動の実話

          <作品情報> <作品評価> 55点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 英国映画らしい格式高いお上品な作品でした。でもまあ退屈だったかな…大して盛り上がりもないですし。 冒頭海辺を走る選手たちのシークエンスがピークであとは興味を失っていきました…あのテーマ曲はすごい。テンションあがりますね。 やっぱりそこまで厳格な宗教観というのは馴染みがないですし、「意志を貫く」というよりも我儘にみえてイライラしました。もちろんそれが宗教家としての一面も持

          ヒュー・ハドソン監督『炎のランナー』英国産!感動の実話

          メル・ギブソン監督『ブレイブ・ハート』闘い続ける!アツい物語

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 メル・ギブソン監督主演の作品賞らしい壮大な大作です。それと同時に史実とはかなり異なることから論争を呼んだ作品でもあります。 Wikipediaにもかなり史実との違いが詳しく書いてあります。まあそれは置いておくとしても、古きよき英雄譚だなぁ、という感じです。素直に面白かったし感動しました。 メル・ギブソンは政治劇を細かく描写するよりも戦争シーン、拷問シーンがやりたかったん

          メル・ギブソン監督『ブレイブ・ハート』闘い続ける!アツい物語

          ローラ・ポイトラス監督『美と殺戮のすべて』闘い続ける写真家

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 非常によくできた作品です。オピオイド危機とナン・ゴールディンの個人的な物語が次第に交錯していく様を上手く描いています。 『シチズンフォー』を観た時点では映画祭向きの監督ではないと思いましたが、本作を観てみるとアーティスティックな感性が光る作品に仕上がっていました。ゴールディンの写真、スライドショーに展覧会など印象に残るアートがたくさんありました。 美術界に片足を突っ込ん

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          濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』文学的表現が光るヒューマンドラマ

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 『寝ても覚めても』が全くハマらなかった濱口竜介監督作品ですが、本作はすっかりノックアウトされてしまいました。3時間が全く苦にならない傑作です。 車を運転すること、してもらうこと、演技すること、稽古すること…全てが過去の蓄積であり人生なのです。 人が自分の苦しみや後悔にどう折り合いをつけて生きていかなければならないのか問いかけてくる作品です。 吉原 本作は村上春樹原作の

          濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』文学的表現が光るヒューマンドラマ

          クリント・イーストウッド監督『許されざる者』リアルな現代西部劇

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 今や押しも押されぬ巨匠となったクリント・イーストウッド監督作品です。西部劇としては『シマロン』『ダンス・ウィズ・ウルブス』とこの作品の三作品しか作品賞を獲ったことがありません。 今まで自身が演じてきたような西部劇のいわゆる型を否定するかのような演出が印象的でした。雨に濡れれば銃は暴発しますし、人を殺して平気なはずはないのです。西部劇のリアルを追及しながらも見事な脚本によ

          クリント・イーストウッド監督『許されざる者』リアルな現代西部劇

          衣笠貞之助監督『地獄門』色彩豊かな時代劇

          <作品情報> <作品評価> 55点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 一時間半かけてやる話じゃないと思います。誰にも共感できないのが辛かったです。ストーリーが雑すぎます。なにが「許してくれー!」だ。 ただ、やっぱり京マチ子の存在感と妖しさは素晴らしいし、色や画がきれいなのは認めます。 おすすめはできません。退屈なだけです。 吉原 色彩が非常に美しく、人妻に惚れ込むという内容とは裏腹に画面全体が華やかな作品です。 内容も90分弱でまとまっ

          衣笠貞之助監督『地獄門』色彩豊かな時代劇

          ピエル・パオロ・パゾリーニ監督『カンタベリー物語』ブラックユーモア満載の奇想天外物語

          <作品情報> <作品評価> 60点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 『デカメロン』から続く「生の三部作」の二作目です。原作の24話の中から『貿易商人の話』『托鉢僧の話』『料理人の話』『粉屋の話』『バースの女房の話』『親分の話』『免罪符売りの話』『ケジの話』の8話を映像化しています。 パゾリーニらしいブラックユーモア満載のオムニバスです。一つ一つが繋がっていそうでそうでない。 パゾリーニは好きな作家。なのですが、本作はあまり楽しめなかった

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          黒澤明監督『影武者』アメリカでも評判を呼んだ戦国巨編

          <作品情報> <作品評価> 70点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 うーん、長い!黒澤明の色彩感覚や歴史スペクタクルをまとめあげた手腕は認めますが、全盛期の『七人の侍』『蜘蛛巣城』なんかと比べるとキレがなく冗長に感じました。 巻き込まれた男をユーモラスに、かつヒューマニズム溢れる目線で見つめるのはよかったです。 ただ、それと同じ比重で各武将の陰謀や勝頼の反発を描いているため話にまとまりがなく感じました。 歴史考証を飛ばしてカラフルな衣装

          黒澤明監督『影武者』アメリカでも評判を呼んだ戦国巨編

          ジャック=イヴ・クストー、 ルイ・マル監督『沈黙の世界』色彩豊かな海洋ドキュメンタリー

          <作品情報> <作品評価> 40点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> おいしい水 最初は当時こんな道具だったんだ、とかこれどうやって撮影したんだろうとかワクワクするけどだんだん飽きてきます。 作為があからさまで、もうちょっと上手くできなかったのかなと思います。 海洋ドキュメンタリーなら最近だと『オクトパスの神秘』は好きかどうかは置いといてすごくナチュラルで優しかったです。演出が上手いのだとヤコペッティの『世界残酷物語』とか一連のはやらせって分かってて

          ジャック=イヴ・クストー、 ルイ・マル監督『沈黙の世界』色彩豊かな海洋ドキュメンタリー

          ニール・ジョーダン監督『マイケル・コリンズ』アイルランドの英雄

          <作品情報> <作品評価> 65点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 よく出来てはいます。欠点の見つからない映画ではありますが、正直あまり新味がなく退屈してしまいました。 顔も知られていない暗殺者としてのマイケル・コリンズをリーアム・ニーソンが見事に演じていました。ですが、個人的にはそれを上回るキャラの濃さだったのはアラン・リックマン演じるデ・ヴァレラでした。不遜な表情で立ち回る政治家としての恐ろしさを体現していました。 一番いらないなー

          ニール・ジョーダン監督『マイケル・コリンズ』アイルランドの英雄

          【最速レビュー!】クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』原爆の父の真実

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> 上村 ノーランはどうしてもノれない(唯一の例外は『インセプション』)のですが、本作もそうでした。ノーランらしい時間軸の操作や化学を映画的にみせる手法は素晴らしいです。 日本を軽視しているかというとそういうことでもないです。あくまでオッペンハイマー博士の視点から描かれた原爆開発の裏側であり、直接描かないのはそれはそれでアリだと思いました。 ただやはり「アメリカの映画」だなぁというのは

          【最速レビュー!】クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』原爆の父の真実

          ユルマズ・ギュネイ監督『路』獄中から指揮した人間ドラマ

          <作品情報> <作品評価> 70点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> 上村 トルコのユルマズ・ギュネイ監督が獄中から指揮を出し撮り上げた労作です。コスタ・ガヴラス『ミッシング』とパルムドールを分け合いました。 ユルマズ・ギュネイは二枚目俳優として多くの映画に出演しましたが、1960年にクーデターが起こると、執筆した小説が共産主義的だとして投獄、二年後に出所してから監督デビューしました。 自身がクルド人ということで本作もクルド問題を描いた作品になってい

          ユルマズ・ギュネイ監督『路』獄中から指揮した人間ドラマ