見出し画像

熊井啓監督『海と毒薬』骨太な社会派サスペンス



<作品情報>

太平洋戦争末期、米軍捕虜八名を生体解剖した事件を二人の研究生の目を通して描く。原作は遠藤周作の同名小説、脚本・監督は「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」の熊井啓、撮影は楢山節考」の栃沢正夫がそれぞれ担当。

1986年製作/123分/日本
原題:The Sea and Poison
配給:日本ヘラルド
劇場公開日:1986年10月17日

https://eiga.com/movie/34931/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

おいしい水
若き日の渡辺謙がW主演でやっぱりカッコいいな〜
医学における倫理観をめぐる対立、医学部長をめぐる争いとか最近見た『白い巨塔』に似てるなと思いました。しかしそっちで善良で正直な医者を演じていた田村高廣がこっちでは正反対の役でそこも興味深いです。
手術室の床にはる水、そこに落ちるガーゼなどケレン味のある映像がなかなか面白いです。生々しい手術風景もスゴい。
岸田今日子はもう出てくるだけですごい。「どいて」の威圧感!
熊井啓、社会性のあるテーマを劇的に演出し、かつ映像的な見せ場もつくるという意味でとても上手いと思いました。

吉原
モノクロ映画だが、製作されたのは86年とそこまで昔ではありません。手術のシーンは非常にリアルで、人によっては嫌悪感を催すような映画かもしれません。白いタイルの上に落とされた血だらけのガーゼがものすごく印象的。
医学の発展のためにと人体実験を行う医者達と人の命を軽んずることを許せない医学生。
中学生のときに原作を読んだことがあったので、懐かしい思いと今ある医学が多くの犠牲の上に成り立っているという事実に対するやるせなさ、そしてインフォームドコンセントが重視されるようになった現代の医療とはかけ離れた「おまかせ医療」や医療現場における「医師至上主義」に対して語りかけるようなメッセージを感じました。
日本の医学におけるブラックな部分をここまで描くことは今の日本映画界には出来ない可能性が高いですし、後世に残すべき医学映画の傑作と言えると思います。

<おわりに>

 名匠熊井啓監督による作品です。映像的な見せ場も存分な名作と言えるでしょう。

<私たちについて>

 映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?