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アンドレ・カイヤット監督『裁きは終りぬ』陪審員ものの金字塔!


<作品情報>

「火の接吻」のアンドレ・カイヤットと「二百万人還る」のシャルル・スパークの合作になるオリジナル・シナリオ(台詞はスパーク)から、カイヤットが監督した一九五〇年作品で、安楽死裁判をめぐる陪審員の行動から、人が人を裁くことの問題を追求する。五〇年ヴェニス国際映画祭でグランプリを受賞。このコンビの「われわれは皆殺人者だ」(52)と対をなす作品である。撮影は「火の接吻」のジャン・ブルゴワン、音楽は「トパーズ」のレイモン・ルグランの担当。出演者はコメディ・フランセーズのクロード・ノリエ、「情婦マノン」のミシェル・オークレール、「流血の港」のレイモン・ビュシェール、「肉体の悪魔(1947)」のジャン・ドビュクール、「狂恋」のマルセル・ペレス、「花咲ける騎士道」のノエル・ロックヴェール、「幻の馬車」のヴァランティーヌ・テシエ、「幸福の設計」のアネット・ポアーヴル、「一日だけの天国」のアントワーヌ・バルペトレ、「賭はなされた」のマルセル・ムールージらが共演。

1950年製作/106分/フランス
原題:Justice est Faite
配給:東映
劇場公開日:1954年8月24日

https://eiga.com/movie/44848/

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

上村
優れた作品でした。とにかく隙がない。陪審員たちの物語として一番連想されるのはやはり『十二人の怒れる男』でありますが、それに先んじてこんな素晴らしい作品があったなんて。
映像的な工夫がしっかりされています。転換や撮影が優れており、印象に残るシーンがありました。テンポも早く、一切飽きさせることなく物語を転がしていくのが素晴らしいです。
人が人を裁くということ、そして安楽死は許されるのか。キリスト教の多い欧米ではやはりそれはより議論になりやすいでしょう。宗教的な正しさと現実、そして愛との乖離と矛盾を突いた鋭い物語です。
陪審員を主に描き、それぞれのキャラクターの背景までスマートに描き出しているカイヤットは流石だとしか言いようがない。
陪審員制度は難しいけれど、社会システム上どうしても折り合いはつけなくてはいけない。その難しさを考えさせられます。陪審員たちの出した結論が正しいものだったのか、それは誰にも分かりません。
裁判について、安楽死について非常に考えさせられる鋭い作品でした。もちろん映画としてめちゃくちゃ面白い。必見の一作です。

吉原
世界三代映画祭の作品を鑑賞していると、各映画祭の特性であったり、時代のニーズに合わせたジャンルだったりと傾向がわかってくるのですが、本作のような「法廷もの」は意外と少ないことがわかります。
本作と題材が似ている「十二人の怒れる男」やナチスに加担した罪を問われる「ミュージック・ボックス」くらいじゃないでしょうか。黒人差別を題材にした法廷ものが獲ってないのが意外なのですが、そこはアカデミー賞の仕事なのかもしれんよね…
本作1番のポイントは、裁判官や弁護士ではなく、陪審員8人に着目することで、人が人を裁くことの難しさについて問うてることです。しかも、裁判だけがフィーチャーされるのではなく、陪審員に選ばれた人たちの周りで起こる出来事ふぁメインなので、そこがまた面白いです。
撮影や編集も非常に面白く、一本の映画としての完成度が非常に高い作品なので、古い映画と思わずぜひ鑑賞してもらいたい一本です。

<おわりに>

 陪審員制度を描いた社会派作品でした。ベルリン映画祭とヴェネツィア映画祭の両方を制しているという珍しい作品でもあります。

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