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ホウ・シャオシェン監督『悲情城市』台湾を舞台にした一大叙事詩


<作品情報>

台湾現代史において、最も激動的な1945年の日本敗戦から1949年の国民党政府の樹立までの4年間を、林家の長老・阿祿とその息子たちの姿を通して描いた一大叙事詩。台湾ニューウェーブの雄、ホウ・シャオシエン監督は本作でベネチア映画祭金獅子賞を受賞、その評価を決定づけた傑作。主演は香港のトップスター、トニー・レオン。彼は台湾語を話せないために聾唖という設定になったという逸話もある。

1989年製作/159分/台湾
原題:悲情城市 A City of Sadness
配給:フランス映画社
劇場公開日:1990年4月28日

<作品評価>

70点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

クマガイ
人生初のホウ・シャオシェン監督作品でした。
一枚絵はもはやこれ以上完成させることはできないんじゃないかと思えるくらい丁寧かつ重厚に作り込まれていて、約3時間という長尺でしたが目移りすることなく映画を鑑賞することができました。
本作の問題は、人間関係があまりにも複雑で、初見だとどうしても理解しきれない部分が多いことだと感じます。
さながら『ゴッド・ファーザー』のような抗争劇が展開されるのですが四兄弟+各勢力etc…で把握しきるのが非常に困難に感じました。
おそらくトニー・レオンの出世作だと思うのですが、この段階から非常に演技が巧く、とりわけ彼が演じた四男視点で物語に見入っていました。

上村
思ったより『ゴッドファーザー』でした。日本統治から解放された台湾を舞台にヤクザ一家を、主に耳の聞こえない末っ子の視点から描いた大河ドラマ的作品です。
長い!シャオシェンは『童年往事』しか観ていないけど、どちらも観終わってどっと疲れるんです。とにかく登場人物が多くて追うのが大変でした。
ヤクザ一家の親父と四人の息子、それだけでなくそれぞれの妻や抗争相手なども出てくるので相関図を見ながらじゃないと追えないくらい大変。
故に全てを理解できなかったですが、とにかく長いという印象が残りました。体感8時間くらいあったな・・・
引きの画だったり印象に残る撮影、この作品によって一躍観光地として人気が出た九扮のロケーションがよかったです。どのシーンも画はバシッと決まっていました。
クオリティは高く、こちらに委ね説明しすぎない感じは流石ホウ・シャオシェン。その分、台湾の歴史や理解力が必要ではあるのだけど。
一番ハンデを負ったはずのトニー・レオン演じる四男が最終的には生き残ります。トニー・レオンが香港人で、言語的に喋れなかったからそういう設定にしたそうですが、それが上手い具合に働いています。時折出てくる文字、そして耳が聞こえない=世の中の醜い部分から耳を塞ぐという暗喩にもなっていて象徴的です。
面白くはないですが、台湾の歴史に対する知識、行間を読む力があれば楽しめる一作ではないでしょうか。まさしく叙事詩であり、代表作と言われるのも納得のクオリティではありました。僕には合わないけど。

<おわりに>

 重厚な一大叙事詩です。台湾の現代史を描いたものとして勉強にもなるクオリティの高い作品です。

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