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【九章】北海道、上陸。

無事、警察から解放された。

(【八.五章】より)

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再びヒッチハイク。
だがこの道は厄介だった。

だいたいこんな感じの道路になってて、
↓の向きに車が走っていた。
左側は二車線になってて、右から合流してくる車がある。
緑は草が生い茂ってて、青いところがヒッチハイクできそうなスペースだった。
上側の青でスケッチブックを掲げ、下側の青で車を止めてもらう考えで挑む。
車の数はかなりある。
しかもフェリー方面も多いとなれば、チャンスだらけだ。
と思ったのもつかの間。通り行く車は速いものばかりだった。
ましてや辺りもやや暗くなってきてて、
スケッチブックの文字が見えているのかさえ怪しい。
ぶっとく書いてるので見えているはずだけど、
いろいろ不安になる。
周りは山に囲われているし、
信号もなければコンビニも見当たらない。
青森めっちゃ田舎じゃん。
現段階で
・通り行く車は速い
・辺りは山
・スケッチブックをそもそも見てくれない
・車の通りはそれなりにある。
という感じだ。
フェリー方面かどうかはわからないが
とりあえずその方面なのは間違いないらしいので
信じてヒッチハイクを続ける。
するとウィンカーが光り車が止まった。
置いていた荷物と広げたスケッチブックを不器用に
寄せ集めて駆け寄る。
フェリー方面、乗せてくれる!
しかも女性だという衝撃。
女神…

【第十三号車 救いの女神】

まず男性である自分を乗せてくれたこと。
見た感じ武術に携わっているような女性ではないし、小柄だし、
それにがたいこそないが背は高い僕を乗せてくれて、
このとき自分には結構信用されやすい能力があるのかな
って思った。知らんけど。
にしてもどうして乗せてくれたのか聞いたら、
「一回通ったときに、なんかヒッチハイクしてる子いるなーって思って、もう一回戻って、まだいたら乗せてあげようと思って、いたから乗せてあげた。」

まじかよ笑

知り合いでもなんでもない。
バチくそイケメンでもない。
有名人でもない。
もはや善意のみ。
わざわざ戻って、いたら乘してあげよって。
移動しなくてよかったぁ~
もし見切りをつけてヒッチハイクする場所を変えていたら。
ほんとうに助かった。
恋に落ちそうだ。
丁度仕事から帰るところで、青函フェリーのりばの近くに住んでるから、乗せてくれたそうだ。
そして一般道を通る中、大阪から来たことを話す。
大阪は暑い。この時期35℃は余裕である。
しかしここまでくると秋頃の気候。
とまぁそんな話をしつつ、のりばに近づいてくる。
そんなときに、
「ここが一番近いコンビニで食べ物とかはとりあえず大丈夫だと思うよ。」
わざわざこの近くのコンビニを知らせるためにまわってくれただと!?

女神じゃ…
もうお主は女神じゃ…

そんな女神のノアの方舟に揺られて天空フェリーにたどり着く。
ほんとうにありがとう。


ついに。

ついにフェリーのりばに。

ここまで来た。やっと。
長かった。ほんとうに、長かった。
だが、この先もまだ長い。

しかもそこには日本一周と書いたスケッチブックを掲げたパンパンリュックを背負う男がいた。
彼もまた、挑んでいるわけか。

というわけで秒で切り替え、
フェリーのチケットを購入する。
乗るまでにまだ時間がある。
ここにきて今まで以上に体調が心配だ。
寝れていないし、ご飯も買い弁ばかりだ。
少しでもと思い、くだものを買っていく。

トロピカルフルーツ。
アップルマンゴーは知っている。
ここにきて新商品との出会い。
このフローズンフルーツが僕の健康を保ったと言ったら過言でしかないけどそれぐらいのうまさ。
バナナ、マンゴー、パイナップル。
それぞれの良さがいかされている。
バナナの柔らかくしっとりとした食感。
マンゴーの甘み。
実はこのマンゴー、サーモンの味がするのだが、
マンゴー好きの友達にそれを話したら
ふざけるなって言われた。
ふざけてない。
俺の口の中ではサーモンなんだ。
そしてパイナップル。
ほどよい酸味が個性を発揮する。
そして果肉と繊維の織りなすくだもの界のペルシャ絨毯。
げきうま。
そして食べ終えた私はフェリー待合室に行き、
体を拭き、出向に備える。

北海道、函館行きのフェリーだ。
青森から函館をつなぐ青函フェリー。
なにげに初フェリー。
中に入るや否や海猿感ただよう。
この鉄の塊が海を行くと思うと、すごいなって。
部屋についたらそこは大部屋になっていて、
9人は寝れそうなスペース、そしてテレビがあった。
にしてもテレビがうるせぇ。
みんな寝ようとしてたので、
「テレビの音量下げて大丈夫ですか?」
ときいて下げる。
昔の自分なら考えられない。
知らない人に声をかけて尋ねるなんて。
ここまでヒッチハイクしてきたので、この程度なんのその。
「お客さん、お客さん、着きましたよ」
気づいたら寝ていた。そして着いていた。
はやくね?笑
まだ実感がわかない。
今俺は北海道にいるのか。
本当に北海道か。
寒い。パーカーを持ってきて正解だった。
大阪じゃ35℃だし、荷物だし、いらないかなーと思いつつ、
寒くて凍えるくらいなら、邪魔になったとき捨てたらいいか
ぐらいの気持ちで持ってきたパーカーに救われた。
ここが、北海道。


北海道の第一印象は、
暗くて寒い。

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