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Jリーグ 観戦記|想像を超えること|2021年J1第15節 川崎F vs 横浜FC

 一週間。時間が過ぎる。その中で生まれる心の凹凸。等々力は、その上空は、観客が身につける青いユニフォームはその凹凸を均一にしてくれる。

 ハイライン。緊密な中盤。横浜FCの挑戦が始まる。川崎のサッカー。サイドへと流れるボール。縦パス。ボールは中央へと戻り、逆サイドへと流れ着く。後方からのロングパス。ボールは横浜FCの網目を通過し、上空を舞ってそれを広げる。

 サッカーへのリスペクト。それはスペースへのリスペクトと表現するのは大袈裟だろうか。相手のスペースを攻略するため、そこに入り、それを広げる。川崎は淡々と横浜FCの想像を超えていく。レアンドロ・ダミアンが前線から仕掛けるプレスと上昇するディフェンスラインが象徴するように、相手を圧迫していく。そこにはボールへの関与と非関与があり、試合の趨勢が定まっていく。

 横浜FCの高らかな咆哮。その声量は徐々に下降線を辿る。前を向いた時の選択肢。それを生むのは人の動きだ。しかし、その動きが少なく、川崎のイマジネーションにひびは入らない。支柱の少ない橋。その揺らぎは僕にそんな思いを連想させる。

 田中碧は僕の予期を今日も軽々と超えた。トラップがパスになる。その動作によって生まれる数秒は異なる景色をピッチに届ける。そのパスがなかったら。そんなことは想像しても無駄だ。しかし、ディテールは世界の最果てでしか採取できないスパイスのように、極上の香りを放つ。意識の逆手。そのマインドはすべてに通底する。試合に芯を通し、攻撃を着火させる。トラップ。パス。ドリブル。ゴール。プレス。そのプレーを眼にするたびに、サッカーがもっと好きになる。

 後半は様相が一変した。川崎の勢いは削がれ、横浜FCは小気味よくボールをつなぐ。自力で得点を奪おうとする欲が増した。そんな風に感じる。疲労。AFCチャンピオンズリーグを前にしたモチベーションの弛緩。ブレーキ。代表への招集。それらの要素が動きに波及したのだろうか。

 課題が勝敗に影響を与えることはない。その事実に、川崎の充実ぶりが表れる。しかし、チームは新たな局面へと突入する。変化。改善。成長。衰退。その先にはどのような感情が待ち受けているのだろうか。真夏の日差しに思いを馳せる。

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川崎F 3-1 横浜FC

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