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The cat's pajamas


「猫のパジャマ」という作品を読みました。
恋愛、SF、エッセイなど、いろんなお話を楽しめる短編集です。

作者のレイ・ブラッドベリさんは、アメリカの作家。
「火星年代記」、「たんぽぽのお酒」、「10月はたそがれの国」など、他にも有名な作品がたくさんあります。

アメリカの歴史や文化を知ると、さらに深く伝わってくるものがあるだろうなあ……と、読んでいる間に何回も思いました。
人種や肌の色の違いがもたらすもの。
護身のために銃が必要となる生活。
懐かしさや切なさ。恐怖、そして緊張感。
どの作品も、「何となく読んでいく 」ことを許してくれない……!

私のお気に入りは、「猫のパジャマ」と「雨が降ると憂鬱になる(ある追憶)」です。

「猫のパジャマ」は、カリフォルニアが舞台。
偶然見つけた仔猫をめぐり、若い男女がそれぞれ引き取ることを主張。会話は平行線を辿るのですが……。
派手な展開はありませんが、会話からは二人の誠実な性格、猫に対する優しさ、愛情が伝わってきます。
作中でも出てくる「猫のパジャマ(cat's pajamas)」という言葉は、『素晴らしい人、もの』を意味する俗語だそうです。意味を知った後、この物語をもっと好きになりました。
恋が始まる予感もあり、ロマンティックで素敵。こういうの、いいなと思います。

「雨が降ると憂鬱になる(ある追憶)」は、作家仲間と過ごした、夢のような楽しいひとときを回想する作品です。
記憶の中を流れていく時間は、とてもあたたかくてキラキラしています。
そして、戻ることはもうできない。
言葉よりもっと遠くにある切なさが、痛いほど伝わってきました。

特に印象に残ったのは、「連れて帰ってくれ」。
絶筆となったエッセイです。
子供の頃、祖父と過ごした夏の夜。小さな「火気風船」を、星が瞬く空へ飛ばす様子。見えなくなったあとの静けさや寂しさ。
描かれた情景は、とても綺麗。
穏やかで、泣きたくなるような懐かしさがあって、とても心に残りました。

作者さんにとって特別な、とても遠い赤い星。
火星。
幼い彼が手を伸ばし、心から願ったことは、今はもう、叶っているのかな?

叶っていたら、いいなあ……。


序文で収録作品の説明があり、作者さんの気持ちや作品を書くまでの経緯などを知ることができます。
それでも、一番最初の時は「読む」のが精一杯でした。わからなかったり、気づけなかったことがたくさんあって、何かぼんやりした感覚がずっと残る感じがして。
自分なりに調べたり、考える機会をたくさんもらうことができる、素敵な本……あっ、ここで「the cat's pajamas」って言ってもいいのかな?


「再読」って、いろんな気付きをくれますよね。
これからも大切にしたいと思っています。
読み返した時に見えるもの、感じることが違ってくる。
物語の輪郭がくっきり浮かびあがってくる。
まるで映画を見ているみたい。
とても楽しかったです。





【おまけ】


帯の文も載せておきます。どんな本なのかなあ、と思って読むきっかけをくれたから。
「表紙買い」する時もありますが、帯の一文で決める時も多いのです。
知らなかった作品や作家さんと出会う機会がいっぱいある、本屋さんが大好き。
ちなみに、帯の色はピンクでした♪(///∇///)




ブラッドベリが遺した最高のラブストーリー!
猫を拾った男女の不思議なめぐり合いを描く表題作をはじめ、巨匠のすべてが詰まった傑作短編集。
絶筆となった自伝的エッセイ「連れて帰ってくれ」を特別収録。

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