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2021年7月の記事一覧

キネマの神様(著者:原田マハ)

キネマの神様(著者:原田マハ)

著作者名:原田マハ 発行所:株式会社文藝春秋 2013年7月20日発行

映画を愛する父と娘の物語である。父は、円山郷直(まるやまさとなお、以後ゴウと呼ぶ)79歳。娘は、円山歩(あゆみ)39歳。

歩は、国内有数の再開発企業の東京総合開発株式会社のシネマコンプレックスを中心とした文化・娯楽施設担当課長である。「開発地区に映画館を中心とした文化施設を作る」というたったひとつのアイデアを貫いた結果、昇

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須賀敦子さんの訳が素晴らしいタブッキ2冊 ~ほか翻訳が素敵な海外文学を

須賀敦子さんの訳が素晴らしいタブッキ2冊 ~ほか翻訳が素敵な海外文学を

 アントニオ・タブッキの著書を2冊読んでいて、須賀敦子さんの翻訳にほれぼれしました。

『供述によるとペレイラは……』『島とクジラと女をめぐる断片』の2冊です。

 かなり個性の異なる2冊ですが、どちらも翻訳の日本語が素敵(私の好み)で、するする読めてしまいます。
 あらためて「須賀敦子さん、すごい!」と思いました。

 海外文学を読むときは翻訳との相性もあるので、こういう出合いはとてもうれしいで

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水を眺めていて思い出した小説(池澤夏樹の「スティル・ライフ」)

水を眺めていて思い出した小説(池澤夏樹の「スティル・ライフ」)

 STILL LIFE

 休日のこと、喉が渇いたので水を飲んでいると、テーブルに置いた水が光を反射しながら揺れていました。

 そんな様子を見ながら思い出したのが、池澤夏樹さんの小説「スティル・ライフ」の一説。

 コップの水を見ている友人に主人公が何してんのと尋ねると

「ひょっとしてチェレンコフ光が見えないかと思って」

「何?」

「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核

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