見出し画像

滞在記|みちたるあくねの日々【鹿児島県阿久根市ワーケーションプログラム】

知人から教えてもらった鹿児島県阿久根市のワーケーションプログラム。6泊7日間で職業体験付で阿久根にゆったり(?)といられる素敵な取り組みだ。(ゆったり?なのはこのあとの毎日をみていただくとわかるようにみちたりた日々を過ごし、いわゆるゆったりなのは定かでないなと思ったからだ)

こちらのプログラムに2023年10月に参加した。わたしは元々、鹿児島県鹿屋市生まれで(育っていないのだが)鹿児島に縁があり、いま両親がともに鹿屋市に住んでいる。その帰省も兼ねて、ワーケーションプログラムに参加した。もともと、阿久根市の前情報はほぼなく未知。故郷といいつつあまり接点のなかった鹿児島でまちづくりで話題の場所というほんのりとした噂をたよりに、いろんな人にお会いしてみたいという気持ちと、あとあまりにお得なプログラムだったので参加を決めた。(前職でランドスケープデザインの事務所で働いており、デザインリサーチなどを大学生の時に学んでいたため、阿久根のまちづくりのことを耳にしていた)

たまたま、フリーランスになったタイミングだったので、1週間鹿児島に行く融通が効いたのも大きい。こういうプログラムは、学生対象のものが多いけれど、U40のフリーランスも対象なのがうれしかった。

ちなみに、今回の取り組みと滞在については、詳しくはこちらの記事で取り扱ってくださっているので、わたしは当時書いていた日記をもとに阿久根での日々を振り返りたい。

こういうのを振り返るには日記というのはあまりに個人的すぎるかもしれない。けれど、なんとなく阿久根での過ごした日々をお伝えするにはこの形がいいような気がするし、私自身のまとめとしてこのような形にしてみたいのでこういった形でまとめてみる。


初日 月曜日

実は前々日から鹿児島入りをしていた。両親と鹿児島市内や霧島市のほうへ足を伸ばしていた。なので鹿児島市内から電車で阿久根市に向かう。肥薩おれんじ鉄道というローカル線がかわいい。自転車を持ち込んでもいいらしい。良い取り組み。しかし、乗車している人はかなり少ない。ローカル線の将来をなんとなく危ぶむ。ぼんやり阿久根はどんなまちかを想像しながら窓際に座っていると飛び込んでくる海。おーっとなる。窓越しの海は心が踊る。

阿久根駅に到着。あんまりにも綺麗な駅舎で驚く。地域おこし協力隊の今回お世話になるおふたりと合流。とても丁寧なヒアリングをしてくださり、この1週間の流れを確認。その後、地域おこし協力隊の拠点にお伺いするとその中のおひとりが餃子を作っているらしくうれしくなる。金曜日に餃子をつくる予定に。わくわく。そこで地域の方からお裾分けしてもらったというみかんをいただく。こういうお裾分けとかがうれしい。

その日はちゃめちゃに素敵な脇本海岸という海に連れてってもらい、地元出身の大学生と話す。みんな、阿久根が好きだということに驚きを隠せない。そんなことあるのか....?しかし、この自然が豊かなで人も素敵な場所だから戻りたいと思うのかなと。脇本海岸の素敵な波模様に冥丁の『波』を脳内で合わせて遊んだりした。今日はイワシビルに宿泊。明日からの職業体験がたのしみ。銭湯に行こうと思っていたが、疲れていたのか、部屋に着いたらパタリとねむってしまった。

2日目 火曜日

職業体験が朝早くからだったので、7時30分に朝食。イワシの丸焼きなどの素敵な朝食にびっくり。今日からお世話になる下園薩男商店さんがやられているゲストハウスイワシビルの朝ごはん。こんな美味しい加工をするところにお世話になれるのか〜と感動する。そもそも、下園薩男商店さんの「旅するイワシ」は鹿児島みやげとしてよく購入していたのでご縁に驚く。薩摩仙台市にある本社工場で、加工の体験を。イワシの見分け方などを教えてもらい、丸干しにするための串刺を体験させてもらう。生の魚を扱い、串刺しにする感覚がすごくおもしろかった。それに、こういったリアルな食品加工工場での体験ははじめてだったので、衝撃と面白さでボルテージがあがる。

午後2時くらいには解散なので、ハモニカンという喫茶店で仕事をする。すごく素敵なご夫婦がやられている喫茶店でうれしくなる。そこからきみよし温泉にいく。夕方早い時間帯だったが、毎日入っていると思われるおばあちゃんたち4人組に遭遇。無人受付スタイルだったのでお金の支払いが分からなかったが、おばあちゃんたちに教えてもらう。「どっからきたの?」といろいろ質問攻めに合う。「ゆっくりしてってね」こういうのがうれしい。夜はハモニカンさんで教えてもらった居酒屋の凌へ。ここでも隣の席の人が鹿屋出身らしく盛り上がる。こんな感じでみちたりた日を過ごし、阿久根最高という気分で眠りにつく。

3日目 水曜日

今日も朝が早い。今日も昨日に引き続き、下園薩男商店さんにて職業体験。今日は阿久根漁港の見学とイワシの日というイベントのお手伝い。イワシビルのたい焼きを食べる。朝はめちゃくちゃ苦手だけど美味しい朝ごはんを用意してもらえるこのハッピーワーケーション様様により起きられる。ありがたい。

漁港はとってもおもしろい。いろんな人にいろんな役割が与えられ、みんなテキパキと仕事をこなす。船が入ってくるまではいろんなところでおしゃべり。おばちゃんたちのルックスがかっこいい。漁港があるというだけでも豊かだと思うが、改めてそこで働く人、その魚を使う人、運ぶ人といういろんな食の流通の流れがあるからこその食なんだなと思う。イワシの日のイベントをお手伝いして、この日は宿泊場所を移動。

その前に竹籠やザルを編むサークル(?)にもお伺いする。おじいちゃんおばあちゃんがやっているのだが、自分達で竹の伐採をして、竹を煮て、乾かし、竹カゴの材料にするための加工をして、それから竹で製品をつくる(編む)と聞いて度肝を抜かれる。すごすぎる。感動して、竹ザルをくださいとお伝えし、別日にまたお会いすることになった。こういった行為がみんなの安否確認につながっているコミュニティづくりや、竹の維持管理につながっていることにとても感動する。その後、道の駅に寄ってもらい食材などを買い、きてんさんのある薩摩大川へ。川が近くにあって、すごく過ごしやすい場所。この日の夕方は、仕事をして、きてんさんにあるキッチンで簡単に料理をして、ご飯を食べ、イベントでクタクタだったのでお布団にたどり着いた。

4日目 木曜日

朝がとても苦手にもかかわらず、宿泊拠点から自転車で30分くらいいった山の上で豆腐をつくっている徳永豆腐店を教えてもらった。朝5時に到着すれば豆腐づくりをみさせていただけるかもとのことで、頑張って起きようとするが、5時30分起床で撃沈。めちゃくちゃヘコむが次回きた時のたのしみにしようと自分をなだめる。しかし、本当に朝が苦手ではあるが、ご迷惑をかけてしまい、よりヘコむ。

今日からは、鶴見という銘柄の焼酎をつくっている大石酒造さんにお世話になる。こちらも朝が早く、7時20分くらいに地域おこし協力隊の方に迎えにきていただき、大石酒造さんに合流。朝のラジオ体操などの朝礼にも参加させてもらう。ラジオ体操中、ポケットにいれていたiPhoneが空中を舞って、みんなで笑う。緊張していたけれど、緊張がとける。麹や発酵のことなどを教えていただく。日本酒蔵には行ったことがあったけれど、焼酎蔵ははじめて。焼酎が発達した文化などを教えてもらい、鹿児島はお米文化の発達よりももともとはヒエやアワで蒸留酒をつくっていたらしい。そこに薩摩芋という鹿児島に適した農産物が採れるようになって、焼酎に発展したらしい。蒸留方法などもとても興味深く、資料などを教えてもらう。大石酒造さんはお昼を働いている人みんなで食べており、混ざらせていただく。文化人類学を専攻しているという人がいて、話が弾む。季節労働だからなかなか人を集めにくいという話を聞くが、自然のリズムに合わせて生活したほうがよっぽど素直だよなとおもって、季節労働とてもいいなと思う。

午後は駅の近くの港町珈琲焙煎所で仕事。とてもおしゃれで素敵なカフェだった。でもおいしそうなケーキが売り切れていてちょっぴり涙で、仕事。仕事を終わらせてこれなかったことが悔やまれる。本当はもっと町を歩いたりしたかった。とはいえ、午後はわりとフリーなので時間が調整できる人なら仕事をしながらでもワーケーションに参加できる気がする。なんだかんだ近くの川まで散歩したり、今日みたいにまちのカフェで作業をしてみたり、まちを徘徊して壁の採集をしたりしている。

5日目 金曜日

宿泊場所のある薩摩大川駅から阿久根駅までおれんじ鉄道(ローカル線)で移動して、鶴見酒造さんへ。いろんなところでローカル線の撤廃などが進んでいるけれど、本当にこうやってみると、ローカル線の大事さがわかる。出勤するというあまりない貴重な体験を味わえるのがうれしい。周りは、高校生らしき子たちがたくさんだ。阿久根駅はフリースペースが広くあるので、放課後いくと(昨日)フリーピアノを弾いている高校生がいたりみんなが勉強していたりでとてもいい。高校生のとき、お金なくてフリースペースがどんだけ大事だったか。少子化対策とかいうならタダで過ごせる場所がたくさんあることが大事だよなとか思いながら通勤する。通学路でもある道は、小学生の登校時間にも被っていて手を上げて通学する子たちらが微笑ましい。途中で駄菓子屋さんを見つけて、おおーとなる。駄菓子屋ってほんと大事。でも入ってみる勇気はまだなかった。

大石酒造さんでは今日は業務のお手伝いとして、ビンの洗浄から、ラベル貼りをまずはお手伝い。その後、焼酎に使う芋切りも。芋切りは農家の方などもいらっしゃってみんなで円形になってやる。スピードが熟練の方と驚くほどちがう。笑 実際にこういうリアルな色に触れられる体験が本当におもしろく、ありがたい。阿久根でつくられたというその薩摩芋は白い品種で、これを蒸留する。芋がダメになっている部分などがあると、その日中に仕込む量処理しなければならないので、みんなでずっと芋切りをしているらしい。自然と一緒にというのは簡単だけれど、きっといわゆる定時の働き方とかではなく自然に合わせた形になるんだろうなと思う。

そして、帰宅をし、今日は待ちに待った餃子をつくる日。地域おこし協力隊の方が開催してくれる。とてもうれしい。きてんの店主のゆかりさんも含めて、わたしをいれて4人で皮から餃子をつくる。自然と話がしやすい。なにもない状態で、はい仲良くなっては難しいけれど、食に興味があるみなさんと皮を捏ねながらの会話はとてもたのしく、素敵な夜をすごした。

6日目 土曜日

なんと今日は舟釣り体験をさせてもらう。アジ釣り漁船に乗ったことがあるけれど、貸切舟スタイルははじめて。前は全然釣れなかったので釣れたらいいな〜という気持ち。船長さんは元市役所の方らしく、趣味で釣りを続けてきたらしい。舟を操縦して、いろんな魚を釣る話をしている船長さんの顔は本当に好きなことを話す人の顔をしていて素敵だなと思った。しかも絶対に釣れるようにいろいろしてくれて最後の釣る部分をやらせてくれる。そのおかげもあって、たくさん釣れた。釣りの才能があると言ってもらって調子に乗る。結局8匹くらい全部で釣れたかな。天候が悪くなりかけていて不安だったし、酔ったらどうしようかとおもったが、なんとかなるものだ。船長さんは、すごい素敵な五右衛門風呂などがある宿もやられていて、そこも見せていただく。阿久根への想いにあふれた素敵な方だった。その後、素敵なビューのともまち珈琲さんで珈琲を飲んでいると雨が。しかし、地域で会う人会う人がみんなすごく素敵でうれしくなる。いろんなことをやってご縁があって流れ着いたという人もいれば、ずっと阿久根にいる人もいる。私もいつかどこかのまちでやっていきたいという思いがあるので、そういう場所を見つけられて羨ましいという気持ちと、決める決心がすごいなぁと思う。

今日は、ぼんたん湯でお風呂。ここもとても居心地がいい。ビニール袋を忘れてしまい、番台のおじちゃんに、袋はないかと相談すると、夜ご飯が入っていた袋をくれた。やっさっしい〜〜〜!!そして、最終日なので懇親会もしていただく。(これもワーケーションプログラムの一環、すごい!)職業体験でお伺いした下園薩男商店の下園さんと、まちの灯台阿久根の石川さん、今回のワーケーションを紹介してくださったライターの上さん、ずっと案内してくれた地域おこし協力隊のお二人とお寿司を。いろいろお話しをして、まちのことについて考えさせられる夜。もう最終日かぁと思いながら、眠りにつく。あっという間だったなぁ。

7日目 日曜日

朝はなんと昨日釣った魚を捌いて、朝ごはんに、石川さんがしてくれるという豪華でありがたすぎることがあり、それをいただく。今日は雨で鹿児島にきてもっとも寒い日だったのもあり、魚のお味噌汁が沁みる。私は、鹿児島の麦味噌のお味噌汁が大好きだ。本州のお味噌汁は大豆でつくるお味噌ではなく、九州のお味噌汁は麦が入っていて麹が多く、甘口。お味噌汁となると本当にほっとして安心できる味で大好き。石川さんが作ってくれたお味噌汁は、お魚などは豪華すぎるものの、やっぱり染み渡るやさしい味だった。

最後に、3日目にお会いした方に、竹ザルを買わせていただき、「今度また来いよ」といってもらう。なんかくすぐったいけれど、「はい!」と答える。うれしい。これで阿久根滞在はおわり。お昼前には帰宅をする。地域おこし協力隊のお二人は本当に丁寧に最後までお見送りをしてくれた。お土産でずっしりと重くなったスーツケースともにおれんじ鉄道に乗る。なんだかさみしいな。でもまた絶対に来よう。そんな気持ちを込めて。

この日々を1ヶ月後に見返してみると、本当に素敵な体験をさせていただいたなと思う。いまでも脇本海岸の波模様や、魚やじゃがいもを持った感覚、そしてなによりもお会いした人たちの顔をふと思い出す。この体験で激変する何かがあったわけではない。少し別世界に行ったような特別な1週間だった。けれど、そのあとの生活に確実に少しずつ影響される日々だった。

阿久根でこんなことをしてみたい!すぐに仕事に!というのもあるけれど、それよりも、またあの人に会いたいな、また帰りたいなという気持ち。好きな友達とか、大切な人とかと一緒に、またまずは行って今回お会いした人たちにまた会いたい。美味しいものをつくる人に会って、それがどう作られているのかを知って、美味しいものを食べたい。それがなんだか自然に縁を運んできてくれる気がするのだ。

また行くね、阿久根。

p.s. 宿泊でも大変お世話になったきてんで購入したはちみつを実家に持って帰ると、亡くなった祖父が好んで食べていたはちみつの生産者だとわかる。またつながった。こうやって縁がつながるのがとてもうれしい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?