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児童養護施設等出身者の就労支援を行う団体一覧

ブリッジフォースマイルの調べによると、2022年春に高校や特別支援学校などを卒業した子どものうち、54.7%が就職、うち約6割が正社員・公務員として就労しています。

しかし、正社員就労した人の中で、就職から3カ月後に16.9%、1年3か月後には50.6%が退職しており、離職率の高さが大きな課題となっています。


養護施設出身者の就職活動の難しさ

高卒の就職の特徴

昨今、大学生の就職活動の早期化が叫ばれ、多くの学生が1年生からインターンに参加、3年生には内定を受ける運びになっていますね。

このように、大卒であれば、働き始める1年以上前から、じっくりと自己分析や企業分析を行い、自分が選んだ複数の企業の試験や面接を受けて内定を取るのが一般的です。

一方、高校生の就職活動は、短期集中型
高校3年生の夏ごろに、企業が学校に求人票を送付し始めます。生徒はこれを基に志望する企業を選び、エントリーを実施。
そこからエントリーシートの作成、面接、試験、内定を高校3年生の冬までに行うのです。

つまり、働くことや自身の適正について、じっくりと悩み、考え、学ぶ期間が圧倒的に短い状況なのが高卒就職者の特徴です。

高卒就職者が直面する課題

高卒就職者が就職で直面する際には、いくつかの難しさがあります。

採用基準
一部の企業や職種では、大卒が採用基準となっており、高卒者は応募できる企業や職種が限られることがあります。

職場経験の不足
インターンシップやアルバイトなどの実務経験が不足しているため、初めてのフルタイムの仕事に適応するのに時間がかかることがあります。

昇進の機会
企業によっては、大卒者に比べて昇進の機会が限られる場合があり、キャリアパスが狭まることがあります。

ビジネスマナーの理解不足
敬語の使い方や基本的なビジネスマナーを知らないまま就職することがあり、職場でのコミュニケーションに支障をきたすことがあります。

対人スキルの不足
学校生活とは異なる職場での対人関係に適応するのが難しく、人間関係のトラブルが発生することがあります。

進路指導の不十分さ
高校での進路指導が不十分な場合、自分に適した職業や企業を選ぶのが難しく、ミスマッチが発生することがあります。

企業情報の不足
企業や業界に関する情報が不足しているため、適切な選択ができずに就職先でのギャップを感じることがあります。

支援体制の不足
企業や学校によるフォローアップが不十分であり、問題が発生しても適切なサポートを受けられないことがあります。

これらの高卒就職者が転職する際に直面する問題は、必ずしも児童養護施設や里親家庭の出身者に限ったことではありません。しかし、親を頼れない若者にとって、こうした問題はより深刻なケースが多いです。

離職が生活基盤の崩壊に直結

児童養護施設等出身者たちは金銭的な理由などから、就職先の選定基準に「社員寮の有無」を重要視することが多くあります。
このことは、言い換えるならば、離職率と同時に住居を失うリスクを含んでいます。

また、職場の人間関係や仕事の進め方などで悩みがあっても、身近に相談できる大人がおらず、一人で悩みを抱え込んで精神的に不安定になったり、離職につながることもあります。

退所後も、児童養護施設の職員と連絡を取る若者はいます。しかしながら、施設は新しい児童の受け入れが行われ、職員の慢性的な人材不足が起こっている施設も多く、退所後の若者に十分なサポートができるかと言われたら難しいのが現状です。

皆さんが就職して一人暮らしを始めた時に、いつでも帰ることができる実家がない状況があった時、どんな気持ちになるか――
少しでも想像していただけたら嬉しいです。

そこでここからは、児童養護施設を退所した児童たちに対するサポートを行っている国内の団体と、それぞれの支援内容を紹介します。

支援団体一覧

1. 公益財団法人 あすのば

奨学金の提供やキャリア支援プログラムを通じて、児童養護施設を退所した若者たちの教育や就労を支援しています。また、生活費の支援やカウンセリングも行っています。

2. 認定NPO法人 キッズドア

経済的に困難な状況にある家庭の子どもたちへの学習支援やキャリア支援を行っています。
特に、進学や就職に向けたサポートに力を入れており、学習の機会を提供することで自立を支援しています。

3. 公益社団法人 日本フィランソロピー協会

企業と連携して、職業訓練や就労支援プログラムを実施しています。児童養護施設を退所した若者たちが社会に出るためのスキルや知識を身につけることを目的としています。

4. 認定NPO法人 育て上げネット

子どもの「働く」と「働き続ける」を応援する団体です。若者の就労支援を専門に行い、特に児童養護施設を退所した若者への支援プログラムを提供しています。職業訓練や就職活動のサポート、メンタルヘルスケアなど、総合的な支援を行っています。

5. 一般社団法人 カタリバ

キャリア教育や就労支援プログラムを通じて、子どもたちの未来をサポートしています。特に困難な環境にある子どもたちへの支援に重点を置き、社会に出るための準備を手助けしています。

6.NPO法人 夢の宝箱

施設出身の若者のコミュニティ作り、住居、就職・転職をサポートしています。法人運営者に企業の代表が多く、民間企業との繋がりが強固であることが強みです。

これらの団体は、それぞれの方法で児童養護施設を退所した若者たちが自立し、社会で成功するための支援を提供しています。

(まだまだ紹介しきれていない団体さんが多いですが…!)
各団体の詳細や具体的な支援内容については、各公式ウェブサイトをご参照くださいませ。

養護施設出身者の近年の就職動向

「福祉就労」が増加

ブリッジフォースマイルの調査によると、高校卒業直後に就労する人のうち、4人に1人は「福祉就労」をしています。

福祉就労とは、障害者や高齢者などの社会的に弱い立場にある人々が、福祉サービスを受けながら就労することを指します。

この就労形態は、一般の企業での通常の雇用とは異なり、特別な支援や環境の提供が行われることが特徴です。福祉就労の主な目的は、これらの人々が自立し、社会参加を果たすことを支援することです。

福祉就労の種類

日本における福祉就労の形態としては、以下のようなものがあります☟

  1. 就労移行支援:一般企業での雇用を目指すための訓練や支援を提供するサービス。

  2. 就労継続支援A型(雇用型):障害者が雇用契約を結び、継続的な就労支援を受けながら働く形態。

  3. 就労継続支援B型(非雇用型):雇用契約を結ばずに、働くことを通じてスキルを習得し、自立を目指す形態。

  4. 生活介護:日中活動として、就労を含む様々な支援を提供するサービス。

これらの福祉就労は、障害者総合支援法などの法律に基づいて実施されており、個々のニーズに応じたサポートが行われます。
就労継続支援A型、就労継続支援B型など、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

こうした就労の選択が増加していることから、正社員で雇用された人は直近7年は減少傾向にあると言われています。

これからの支援

今後は転職を含めた福祉就労の支援を強化していく必要があるでしょう。
いずれにしても、就職前後におけるサポートは今後も必須事項です。

中学・高校在学中のキャリアカウンセリングの実施や、高卒就職者向けのインターンシップの推進など、こうした企業との連携を強化することでミスマッチを減らすこと。

また、もし離職した場合にも、できるだけ自分に合った、条件の良い転職先を見つけられるようサポートが必要です。

更に根本的なことを言うならば、日本企業の働き方全般においても、見直すべき点があるかもしれません。


◆取材・編集
中村愛 - Ai Nakamura
青山学院大学経済学部卒業。新卒で医療福祉施設のM&A担当として新規施設の開所に携わる。その後児童福祉施設の支援員、タウンニュース編集記者を経て福祉業界に特化したフリーライターに。NPO法人夢の宝箱の広報担当。
Xアカウント ☞ https://x.com/love_chanchanch

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