タナカユウコ

「ケアとリペア」を大事にしながら、「お金を使う生活」(=人や物との関係が薄まる)と「捨…

タナカユウコ

「ケアとリペア」を大事にしながら、「お金を使う生活」(=人や物との関係が薄まる)と「捨てる生活」(=自分事を遠くのどこか見えない人、場所、物に押し付けて他人事にしてしまう)」から少しずつでも遠ざかるくらしをしていきたい。 本、植物、ピアノからくらしの栄養をもらう毎日。

記事一覧

『他者の靴を履く』

ブレイディみかこ 文藝春秋 2021.6 著者は私と同年代。今の時代を読み取る感度がめちゃくちゃ高い。この本に出てくる数々の論点をいちいち頷きながら読んだ。この本が読…

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『地球が燃えている』

ナオミ・クライン 大月書店 2020.11初版 ジャーナリストで環境活動家の著者の約10年にわたるエッセイは、小手先の対応の間にも気候問題がより深刻になる過程とも重なる…

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『無意識のバイアス』

ジェニファー・エバーハート 明石書店 2020.12初版 2021.32刷 「あの男の人、飛行機を襲わないといいね」。5歳の息子の言葉に黒人女性の社会心理学者である著者は憤り…

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地域の仕事は誰がやる?

 子ども会の班長を決めることになった。次期5年生の親が役員や班長をやることになっているのだが、先に役員決めがあり、誰も手を挙げないのでくじ引きとなり、次は班長・…

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引っ込んだり、出たり、また引っ込んだり(ひきこもることの余談)

 これまでのアキをみていると、引っ込んで、出て、また引っ込んで・・・ということを繰り返しているようにみえる。  保育園のころ、あまり気のあう友達がいなかったアキ…

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「ひきこもる人」、『ひきこもれ』

 勤務先で「ひきこもり」についての本を出す時、複数のタイトル案があった。その中で、「ひきこもる人」というのがあった。私はそれに惹かれた。「ひきこもり」というと、…

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ヒョウ柄

 ナツは動物が好きだ(まあ最近少しその熱も冷めてきた感があるが)。女子が好きな動物といえばウサギ?とかリス?とかの可愛い系の小動物だろうか。私も子どものころ、好…

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高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道②

 結局隠岐の島の暴走はなかったかのように秋を迎える。部活も終わっていよいよ塾にも行くかなとも思ったが、この期に及んで「塾って行かなきゃいけないの?」と言うので、…

高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道①

 この春はハルの大学受験と同時に、アキの高校受験の年でもあった。うちはハルとアキの年の差が3歳、アキとナツの年の差が6歳ということもあり、このように「同時に来る」…

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大学への細道②

 そんなこんなでハルの受験生活(と言えるのか、家での姿をみるかぎり相変わらず疑問であった)もラストスパートに突入。年末からは願書を出したりという作業が始まる。 …

大学への細道①

 一番上のハルがこの4月から大学生になった。  高校は塾の力(個別の塾でどれだけお金かかったか。「集団じゃダメなの?」と聞くと、「それだと学校と一緒とで勉強でき…

地球の裏側からやってきた(としか思えない)子どもたちのこと

 それほど子ども好きでもなかった私が(高齢出産で)なぜか3人の子の母親となった。ハル(19歳男子)、アキ(16歳男子)、ナツ(もうすぐ10歳女子)、3人の子どもたちが展…

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『他者の靴を履く』

ブレイディみかこ 文藝春秋 2021.6

著者は私と同年代。今の時代を読み取る感度がめちゃくちゃ高い。この本に出てくる数々の論点をいちいち頷きながら読んだ。この本が読めてよかった。著者が世にでてくれてよかった。

この本は「ぼくイエ」で触れた「エンパシー」が刊行後ひとり歩きしたので、著者としてもう一度エンパシーについて考察した大人の続編という位置づけとのこと。「エンパシー」とは自分とは異なる他者

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『地球が燃えている』

ナオミ・クライン 大月書店 2020.11初版

ジャーナリストで環境活動家の著者の約10年にわたるエッセイは、小手先の対応の間にも気候問題がより深刻になる過程とも重なる。重要なのはこれが気候単独の問題ではなく、負の側面を「どこか」に押しやり、無制限の消費で成り立つ経済システムと不可分である点だ。「ディグ(化石燃料などの掘削)&ギグ(人間を資源のように使い捨てる)エコノミー」から「ケアとリペア」の

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『無意識のバイアス』

ジェニファー・エバーハート 明石書店 2020.12初版 2021.32刷

「あの男の人、飛行機を襲わないといいね」。5歳の息子の言葉に黒人女性の社会心理学者である著者は憤り深く傷ついた。バイアスから自由でいられる者は誰一人として存在しない。だがそれは人間が大量の情報を処理するためになくてはならないものでもある。私たちは見て判断するのではなく、判断して見ているのだ、と帯にある。その「自然」な傾向

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地域の仕事は誰がやる?

 子ども会の班長を決めることになった。次期5年生の親が役員や班長をやることになっているのだが、先に役員決めがあり、誰も手を挙げないのでくじ引きとなり、次は班長・副班長を決めるという順番だ。

 私は真ん中の子の時に役員をやっていたので、役員は免除。班長も、できればいろいろな家庭に関わってほしいと思っていたので、まあ、どうしても決まらない時は少し考えようかなという程度だった。班長決めをしきるのは現班

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引っ込んだり、出たり、また引っ込んだり(ひきこもることの余談)

引っ込んだり、出たり、また引っ込んだり(ひきこもることの余談)

 これまでのアキをみていると、引っ込んで、出て、また引っ込んで・・・ということを繰り返しているようにみえる。

 保育園のころ、あまり気のあう友達がいなかったアキは、いつも絵を描いて過ごしていた。その絵は主に電車の絵だったのだが、だんだんエスカレートしていき、ほんとうに細部まで細かく書かれていてすごい(親バカ)ものだった。保育園というのは、地域事情にもよるが、待機児童も多く、ほぼ親は選べない。(今

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「ひきこもる人」、『ひきこもれ』

「ひきこもる人」、『ひきこもれ』

 勤務先で「ひきこもり」についての本を出す時、複数のタイトル案があった。その中で、「ひきこもる人」というのがあった。私はそれに惹かれた。「ひきこもり」というと、当事者ではない人間が、当事者を困った存在という目でみている、という感じがする。だが「ひきこもる人」には当事者の意志が感じられた。そこにはひきこもることに大きな意味や尊厳すら立ち現れているように感じる。結局本のタイトルとしては「ひきこもり」に

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ヒョウ柄

ヒョウ柄

 ナツは動物が好きだ(まあ最近少しその熱も冷めてきた感があるが)。女子が好きな動物といえばウサギ?とかリス?とかの可愛い系の小動物だろうか。私も子どものころ、好きな動物は?と聞かれたら、(そもそもそんなに動物が好きというワケではなかったが)ウサギ、と答えていたと記憶している。

 ところがナツはそういう系ではない。ネコ科の肉食動物が好きなのだ。一番好きな動物は密林の王者トラ。それに草原の貴公子チー

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高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道②

高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道②

 結局隠岐の島の暴走はなかったかのように秋を迎える。部活も終わっていよいよ塾にも行くかなとも思ったが、この期に及んで「塾って行かなきゃいけないの?」と言うので、「いやいや、自分で勉強できるなら、全然行かなくてもOK!」ということで、結局最後まで塾には行かなかった。ほとんどの子が塾に通っている中、ある意味勇気ある行動である。そもそもアキは早寝早起きで、夜寝るのが大変早く、とても遅い時間まで塾に通うこ

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高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道①

高校までの紆余曲折とした(と思っていたのは親だけだった)道①

 この春はハルの大学受験と同時に、アキの高校受験の年でもあった。うちはハルとアキの年の差が3歳、アキとナツの年の差が6歳ということもあり、このように「同時に来る」めぐり合わせの年が数年に一度ある。3年前は小、中、高の入学(それに先立って卒業も)が重なった。

 何事も経験というのは心強いもので、ハルの高校受験を経験していたので、それよりはコツコツまじめで成績もハルよりよかったアキに対しては、入れる

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大学への細道②

大学への細道②

 そんなこんなでハルの受験生活(と言えるのか、家での姿をみるかぎり相変わらず疑問であった)もラストスパートに突入。年末からは願書を出したりという作業が始まる。

 わたしは何も手出ししないと決めていたので(しくみも煩雑そうだし、わかろうとする気力はもはやない。ここらあたりも家庭によって親の意気込みがかなり違うのだろうな・・・)、ここでも本人に任せるしかない。「出し忘れとか、お金の払い忘れとか、私は

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大学への細道①

 一番上のハルがこの4月から大学生になった。

 高校は塾の力(個別の塾でどれだけお金かかったか。「集団じゃダメなの?」と聞くと、「それだと学校と一緒とで勉強できないから」と言う。学校で何やってるんだ~。)で地元の都立高校に入ったが、高校からいきなり勉強に目覚めるわけでもないので、親は就職とかしてくれた方がよいと思っていた。どうみても知的好奇心がそれほどあるとは思えず、高等教育に向いているとは思え

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地球の裏側からやってきた(としか思えない)子どもたちのこと

地球の裏側からやってきた(としか思えない)子どもたちのこと

 それほど子ども好きでもなかった私が(高齢出産で)なぜか3人の子の母親となった。ハル(19歳男子)、アキ(16歳男子)、ナツ(もうすぐ10歳女子)、3人の子どもたちが展開してくれるドラマは発見の連続、私は人の親になることで自分を育ててもらっているのだということを日々実感している。

 子どもたちは三者三葉、3人いると社会ができるというのは本当で、ナツが誕生してから子どもたちの関係性は一層彩り深いも

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