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引っ込んだり、出たり、また引っ込んだり(ひきこもることの余談)

 これまでのアキをみていると、引っ込んで、出て、また引っ込んで・・・ということを繰り返しているようにみえる。

 保育園のころ、あまり気のあう友達がいなかったアキは、いつも絵を描いて過ごしていた。その絵は主に電車の絵だったのだが、だんだんエスカレートしていき、ほんとうに細部まで細かく書かれていてすごい(親バカ)ものだった。保育園というのは、地域事情にもよるが、待機児童も多く、ほぼ親は選べない。(今はこども園とかできて多少違うのだろうか)アキの通っていた保育園は親の私からみてもあまり楽しいところとは思えず、そのことは、楽しい幼児の時期を過ごさせてあげられなかったと、今でもアキに申し訳ない気持ちとなって残ってしまっている。(つれあいは、そういう一人ぼっちの時間も大事なんじゃない、とあっさり言っている。前向きである。確かにそういう面もあるかもしれない。ひきこもれ、と言っているわけだし)

 そんなアキが小学校にあがった途端、なんか弾けたというか、友達といっぱい遊ぶようになった。特に小3のころから交友関係が広がり、群れてたくさんの友達と遊ぶようになった。そして大抵うちがたまり場だった。毎日5,6人、多い時で10人近い小学生男子がよりによってこんなに狭い我が家にやってきてワイワイ遊んでいた。今時はあまり子どもを家に入れない家庭も多いので、私も「いつもうちばっか」と思いながらも、アキの親に生まれたからには致し方ないと観念したのだった。もう「友達命!」という感じで、友達と遊んでいる時のアキはイキイキしていた。それが、みんなが帰ってしまうと、いきなりスイッチオフになってしまい、テンションが一気に下がり、夕食を食べながら寝てしまう。(夕食を食べながら眠くなり、そのまま椅子からズリ落ちてよく床の上で寝ていた)友達さえいれば生きていけるような子だった。

 ある時は、「アキ祭り」と称して、射的、ゲーム、カード、かき氷などの色々な屋台を出し、チケットやスタンプカードもつくって、マンションの子たちを招待したことがあった。

 またある年のクリスマスには、家でクリスマス会の企画をした。その時はキャッチーなコピーをたくさん書いて、家中に貼り、自身は100金で買ったサンタのコスチュームで友人をお出迎えしたのだった。(さすが100金だけあって、遊んでいるうちにお尻の縫い目がバリっと避けてしまったのだが)

 そんな小学校時代の中でも、低学年のころ、一時他の男子と遊びが合わなくなって、一人ぼっちで過ごす時期が数か月あった。運動が不得手であまり活発な子でないので、外でのボール遊びが主流になってしまうと、入れないのだ。かといって女子を過ごすことは大の苦手で、近寄りたくもない。女子と過ごすくらいなら一人で過ごすほうがよっぽどましだ。ある時は近所の公園で基地つくってきた、と帰ってきたことがあった。私が後で見にいくと、一本の樹木がヒモやガムテープでぐるぐる巻きになっていた。なんとなくほほえましい気持ちになって、公園には悪いがこのままにしておいた。

 中学に入ると、部活や、もともと仲の良い友人がいたテニス部の友人たちとよく遊んだりしていた。けれど、小学校の時の、友人と過ごして弾けてハイテンションなアキでは、少しずつ、なくなっていったような気もする。

 そして、この4月から高校生になるも、コロナで入学式もなく、5月ごろまでずっと家にいる生活だった。家から一歩も出なくても何の苦もないようで、こちらの方が心配になって外行ったら、とか言ってみたりする。今の子はネットでつながっているから、外出なくてもOKなのかなとも思ったが、友人たちとも特段何の連絡もとっていないようだった。小学校時代のアキとは隔世の感があるひきこもりである。

 その後学校も徐々に再開したものの、行事も部活も大してなく、この人高校で友達できたのかね?と思っていたら、先日学校の帰りに友人と楽器屋に行ったと言っていた。

 こんな風にアキは引っ込んだり、出たり、また引っ込んだりしている。こうやってバランスをとっているのだろうか。これからアキがどうなっていくのか、楽しみだ。

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