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読書記録 田舎の洋服店のモデルの妻

読書記録
田舎の洋服店のモデルの妻

宮下奈都先生
文藝春秋 2010年

家族を描いた物語らしい麻布に貼り絵をしたようなイラスト





久しぶりに宮下奈都さんの本を借りた。図書館でみかけてなんだか懐かしい予感がしたのだ。
読んでみて、わかった。この本は以前読んだ神さまの遊ぶ庭の前編みたいなお話だ。




◎あらすじ
竜胆梨々子(りんどう りりこ)は、4歳になる息子の潤(じゅん)1歳の歩人(あると)の2人子どもと結婚して4年になる夫の竜胆達郎(たつろう)と暮らしていた。

そんなある日、夫が突然会社を辞めたいという。梨々子は顔色がすぐれないような小さな夫の異変に気づかない訳ではなかったが、まさか鬱が、そこまで深刻とは思っていなかった。

そして夫は実家のある北陸の街に帰りたいと、いい、一家で転居することになる。


◎気になった箇所

*本文 64ぺーじ
こんな田舎に暮らしているのも、父親が病気なってしまったのも、母親である私自身がときに悶々としてしまうことも、全部この子たちのハンデだ。そう思うと後ろめたかったけれど、もしかしたら、親がどうであろうとこの子たちの人生にとっては遠景でしかのではないか。

**174ページ
達郎さん、と呼ぶときのほのかなときめきは疼きにも似て、達郎さん、達郎さん、と親しく日に何度も呼びかけていた自分もまた遠い見知らぬ誰かのように感じられるー中略ーここから、近づいたり離れてたりしながらまた一歩ずつ歩いていくのだ。

***196ページ
梨々子は自分と母の関係がよくないと考えたことは一度もなかった。特に仲がよいというわけでもないが、大きな喧嘩は一度もした覚えがない。リビングへ戻り、何事もなかったようにソファに腰を下ろしている母の横顔を見る。母と私は思った以上に離れているのかもしれない。私が外れたのだと母は感じているだろう。


◎感想
*子どもを育ていると思い通りにならないことが多い。

 母乳やミルクを飲んでくれない。夜泣きがひどく夜寝てくれない。体重が思うように増えない。身体発達がほかの子供に比べて遅い。まだ〇〇ができない。数えてたら、きりがない。

私も初めての子育ての時はそんなことばかりだった。

そして、育児休暇を終えると仕事復帰が待っていた。それからは、学校らか帰ってくる時間に家にいて子供たちを迎えてあげたたい、丁寧な食事を作ってあげたいといつも思ってはいたが、目の前の仕事をこなすことで精一杯だった。

 軽重の差はあれどもどの家庭にもハンデはあるのかもしれない。それでも前を向いて日々を暮らしている姿をみせれば、子どもは育っていくのではないだろうか。

**
人生に迷いや戸惑い、多くの巡りあわせがある。時には、自分の心の衝動を抑えることにエネルギーを使い、またブレーキが利かずに寄り道をしてしまうこともある。

長い道のりの中では、心が躍ることは人生が潤うことでもあるが、周囲の人の人生も巻き込んでしまうことがあることをどこかにおいておきたいと思う。

***
人の価値観は、家庭環境に影響を受けると思う。人生で一番大事な物は何か年長者はその言動で小さな人たちに示してしまうことになる。
私は散歩を好みんていた温厚な父と読書好きで世話好きの母の影響を受けた。

そして、定年退職しても援助する仕事を大事にしている夫を支えていこうと思っている。

しかし私の息子は娘は違う時代の流れ、ほかの価値観をもつ配偶者と家庭を築くことで私に違和感をもっているかもしれないと、心の隅では思っている。

正解はないのだ。一人一人が正解かもしれない。でも彼らと同じ時代を生きることができ、ときおり気づかされる新しい風にハッとすると、思わず心の中で苦笑いをする私だ。

登校途中の潤くんと歩人くんかな。

〇子育て中の方、子育てを終わったかた、家族のことで悩んでいる人に
読んでほしい1冊です。


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