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ゆきしろ
2022年9月25日 00:55
芸術と恋は似ている。人は恋をするとき、大なり小なり相手を理想化している。あるいは「この人こそ理想の人だ!」と相手に理想を重ねるものだと思う。芸術も、(ある面においては)理想を描く行為だ。世界から美しい部分を切り取って増幅させたり、自分の理想を形にしたりする。私の敬愛する画家は、見たままを描くのではなく「こう見えたらいいな」と思うものを描いているという。「写実主義はありのままを描くではないか」と
2022年9月1日 23:54
絵画論の本を何冊か図書館で借りて読みました。うち2冊は、部分部分には共感したり腑に落ちる記述はあったものの、あまりピンと来ず、通読できませんでした。しかし、『絵画の表現』という本と出会って、目から鱗が落ちました。この本と出会うために、今まで色々な本を読んできたのだ、と思いました。その本で示された「絵とは何か」「なぜ描くのか」という問いに対する答えに、私は「これだ!」と直観しました。先日のno
2022年6月15日 01:10
リルケ著『神さまの話』を読んだ。リルケの書いたものは、みな繊細で優しく、神聖で清らかだ。私が知っている作家の中で、最も敬愛している作家だ。文字を追うごとに、次々に透明な感銘が湧き上がる。心が浄化されていく。読んでいて、思わず涙しそうになった。特に惹かれたのは、「人間の真の姿を神様にお伝えするのが、子供たちや、絵を描いたり、詩を作ったりする人たち(要約)」と書かれた箇所だ。なぜ惹かれたのか、
2021年12月2日 19:12
こんな文章を読みました。ラスコー、アルタミラの洞窟壁画にはじまる絵画は、成立当初から既に高度なものであったが、動物画に比べ人物画は稚拙だった。その理由は「解剖」にあるんじゃないか。旧石器時代の人は狩りをし、食べるために動物を解剖したから動物画はリアルだった。人物画が発展したのは古代エジプトでミイラが作られるようになってからで、そのとき人間を解剖したために、肉体の内側を意識するようになり、人物画
2022年5月22日 00:39
絵を副業にすることを決意しました。元よりそのつもりで就職したのだから、今更ではあるのですが、いざ働き始めるととても描く余裕がなく、1年目はろくに描けずに過ぎてしまいました。一応、展覧会に新作を2枚、出せはしましたが。再び火がついたのは、私の絵を購入したいと言ってくれた人が現れたこと、またフルタイム正社員勤務がしんどいので別の道を探りたいと思ったこと、そして何より絵を描く時間をもっととれるよ
2022年5月19日 12:31
吉原幸子さんの詩『紙』とエッセイ『永遠の百合』を読んだ。以下、私なりの解釈をまとめる。彼女は、人間という儚く滅びやすい存在が、己の死後まで作品を残すという「不遜」をいぶかる。自然の模倣としての芸術は、「滅ぶ」がゆえの美しさにおいて、自然を越えることはない。しかし、それを知りつつ「滅ぶことのない」ものを造ることこそ「芸術」という営みなのであり、「自然を超える=永遠を目指す」ときのみ、自然を真似る