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easy poem

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簡単な詩を掲載。自由に。詩誌に投稿はしないだろう詩、のちのち推敲して投稿するかもしれない詩。
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#日記

easy poem「あっちの空」

easy poem「あっちの空」

ひときわ大きなゴールデンレトリバーの吐く息がとても白く、それは昔テレビで観たたばこを吸うゴリラの吐く煙に似ているが、私の吐く息は少し白いだけであり、朝のお散歩にはマスクを外すようになって日々その白さは濃さを増しているように思うも、ゴールデンレトリバーはマスクをしないから相変わらずとても白いままであるのが少しうらやましい朝で、あっちの空は晴れており影のあるのとないのと境い目はどのあたりなのだろうか気

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easy poem「私ABC」

easy poem「私ABC」

目が覚めると
私Bはよく動いた
朝ごはんを作り
洗濯物を干した
私Aの下着は
箪笥の奥にある

私Cはよく笑った
友人とウォーキングをしながら
互いの夫を褒め合いながら
子供の受験について語った
私Aの夫は
友人の評価「は」高い

私Aは透明人間であろう
が、実在する
私Bと私Cは
私Aと結託している

(B=C)≒A

私がベッドに入って眠る
私Aは箪笥の奥を漁っている
#日記 #詩

easy poem「nostalgie」

easy poem「nostalgie」

ブランコに乗りたい
シーソーに乗りたい

椅子取りゲームがしたい
花いちもんめがしたい

50m走のタイムを測りたい
走り幅跳びがしたい

英単語のテストをしたい
漢字のテストをしたい

木登りがしたい
砂のお城を作りたい

初めてのキスをしたい
初めてのセックスをしたい

太陽が当たるのに
外に干した洗濯物が
凍って固くなってしまった
氷点下の一日だった

夜に玄関先に
水を入れたグラスを
置い

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easy poem「脈」

easy poem「脈」

1月23日 AM8:13

空にも脈がある、と思う。
裸木が教科書でみた毛細血管に
とてもよく似ていたから。

踵にも脈がある、と思う。
靴下がゆっくりと赤く
染まってゆくから。

脈打つリズムで踵が痛む
乾燥して固くなった踵の
ひび割れの一筋が
深くなった模様である
ひび割れが血管に
達したのだろう
歩くと痛い

今日はもう歩けそうにない

生きる事に
脈絡なんてない
#日記 #詩

easy poem「晴れのち曇り」

easy poem「晴れのち曇り」

良い天気だ
と、いうのは晴れのこと
と、誰が決めたのだろう
曇りが好きな人は
曇りが良い天気だし
雨が好きな人は
雨が良い天気だ

理由なく悲しい朝があって
嫌な夢に寝返りを繰り返す眠りがあって
私の一日はひどく退屈である

気象予報士に不意に
明日の天気を聞いてみるといい
答えはいつでも
晴れのちくもり
なんだって
冬は快晴が多いこの街で
木枯らしが吹いたら
砂埃で空が茶色くなる
それでも冬晴れ

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easy poem「陸橋」

easy poem「陸橋」

電車は西に向かっている
日の入りの太陽を
追っているわけではない
私は私を追いかけて
あるいは
あなたがあなたを追いかけて
北へ向かっているように

音が変わる瞬間の
車輪の決意は
遠くへ響いてから
私の耳に食い込む
その瞬間がとても好き
耳の裏のGIVENCHYが
鼻腔をくすぐる
河川敷を歩く犬たちに
感ずかれているに違いない
それならば、おもしろい
紐を操る人を困らせるほどに
走ってみたらいい

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easy poem「痕」

easy poem「痕」

雨は降っていなかった

透明に浮遊していた水が
誰かの重みをまして
姿を現わし
地面に降りてきて
さらに誰かの重みをまして
氷になっている
早朝にみつけた
誰かと水の戯れの痕

誰かとは
私なのかもしれないし
私ではないのかもしれない
昨夕、
乗換案内に逆らって
路線図を遠回りをして
最寄り駅から暗い近い道を避け
大通りの街灯に沿って
遠回りをして帰宅した
夏ならば夕方の陽の名残が
まだ新しい、1

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easy poem「K子」

easy poem「K子」

学生時代から苗字が変わらないK子は
毎年、律儀に年賀状を送ってくる
今年は早々に喪中の葉書が届く
お父さんが亡くなったらしい
五年ごとの割合で住所が変わっている
最後に会ったのは私の結婚式だろうか
いつ頃からかSNSで繋がっているが
特に言葉は交わさない

砂漠でラクダに乗るK子
断崖絶壁の岩場に立つK子
透明な青い海に潜るK子
きまぐれにエアメールが届く

最近は登山をするK子
住所は長野県に

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easy poem「イルミネーション」

easy poem「イルミネーション」

街のイルミネーションが
一層と派手になり
ある人の歩幅はゆるやかに
ある人の歩幅は忙しくなる
私は足を止める

子供の頃サンタクロースに手紙を書いた
(おちないくんが欲しいです)
紫色の猿の身体から伸びる手が長く
万歳して両の掌をくってけて
どこかにぶらさげると落ちないから
おちないくん
クリスマスの朝、枕元の袋を開けると
私が欲しかったおちないくんよりも
二まわりも三まわりも小さかった
私は悲し

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easy poem「初冬」

easy poem「初冬」

寂しさを寂しいと言える人の首は
きりんのように長いことを
悟られないようにしていて
水紋の輪を正しく数える

ベビーカーを押す掌の温もりは
共通の言語であって欲しい
抱っことおんぶの差は
顔が見えるか見えないか
というだけで
その重さに差などない

寂しさと優しさは似ている
スタバのキャラメルラテと
母が入れるコーヒーは
同じくらいにおいしいから

気温10度の朝、
20分も歩けば上着を脱いで

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easy poem「トレンチコート」

easy poem「トレンチコート」

一歩
また一歩
足を前に出すたびに
こぼれてゆくもの
が、ある気がして立ち止まる
トレンチコートを着た男が
肩にぶつかって
舌打ちをしながら
追い越していった
「ごめんなさい」
は、通過する急行列車の轟音
に、かき消されて
ななめ45度、頭を下げた

地面には何も落ちていない
不安はどす黒い赤色をしていて
動悸とともに身体中を
一気に支配してゆく
拾うことさえ許されないこぼれもの

謝らなくて

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easy poem「更地」

easy poem「更地」

どうしても更地にしたい人達がいて
チェーンソーの音が
私の為だけの音楽を邪魔するので
イヤフォンのボリュームを上げると
均等に切られて束ねられた木達が
無声映画を観る時の過剰な敏感さで
その姿をあらわにする
伐採の音を聞くべきなのかと思いつつ
作業員の慣れた手つきが
無性に腹立たしくなって
どうやら私は佇んで睨みつけていたらしい

木漏れ日がとても良い塩梅の
好きな林だったけれど
誰かにとってはお

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easy poem「境目」

easy poem「境目」

ひと雨ごとに
季節が進むことは
私だけに与えられた
特別な感覚だと思って
ずっと生きてきた
ある人が時候の挨拶として
「ひと雨ごとに寒さが
増してきますね」
と、メッセージを送ってきて
私は特別ではないと知った
あるいは私とある人にだけ
特別に与えられた特別な感覚
なのかもしれない
あるいはそう思いたいだけ
なのかもしれない

春が好きではないらしいので
ある人は秋が好きなのだ
と、勝手に思って

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easy poem「からっぽ」

easy poem「からっぽ」

身体の中には
臓器がいっぱいつまってる
頭の中には
脳みそいっぱいつまってる
勝手に動いてくれる心臓のおかげで
勝手にまばたきできている

SNSは見たくない
小説は読みたくない
詩集なんて触りたくもない
文章ってなんだっけ
しゃべりたくない
話したくない
考えたくない
言葉ってなんだっけ
書くなんてもうまっぴらだ

身体の中は
ぱんぱんに詰まっているけれど
な~んだかからっぽなのだ
こ・こ・ろ

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