easy poem「更地」

どうしても更地にしたい人達がいて
チェーンソーの音が
私の為だけの音楽を邪魔するので
イヤフォンのボリュームを上げると
均等に切られて束ねられた木達が
無声映画を観る時の過剰な敏感さで
その姿をあらわにする
伐採の音を聞くべきなのかと思いつつ
作業員の慣れた手つきが
無性に腹立たしくなって
どうやら私は佇んで睨みつけていたらしい

木漏れ日がとても良い塩梅の
好きな林だったけれど
誰かにとってはおそらく
節税対策の為に更地にし
おそらく誰かの為の
駐車場だか住宅地になり
誰かの為の林の
誰かは亡くなったらしい

先月は近くの栗林が更地になったばかりで
人が亡くなることは更地になることなのだ
と、思うといつか全てが
更地になるのではないかと危惧している

紅葉の只中
作業員がチェーンソーを
木にあてがうと
葉が落葉させられてゆく
怒りの矛先も見つからずに
作業員を睨みつけてしまう
ひとりの作業員が
私に何かを言っているようだけど
何しろ無声映画なのだから
その声は私には届かない

#日記 #詩