【読書記録】後編:Work with Source
今回の読書記録は、2021年3月に出版された、Tom Nixon(トム・ニクソン)『Work with Source: Realize big ideas, organize for emergence and work artfully with money(『ソースを活用する:大きなアイデアの実現、創発の仕組み化、そして、賢くお金を使うために)』の、後編です。
本書の著者であるトム・ニクソン(以下、トム)は、フレデリック・ラルー(以下、フレデリック)の『Reinventing Organizations』に共鳴している起業家・コーチであり、フレデリックとも対話を重ねてきた人物です。
本書の読書記録の前編では、国内における『ティール組織』ムーブメントを概観した後、どのように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』が国内に伝わり、その後の『Work with Source』邦訳へ繋がっていったのか等をまとめました。
中編では、トムが『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』の2つのコア・コンセプトと紹介している『ソース(Source)』と『クリエイティブ・フィールド(creative field)』および、『ティール組織(Reinventing Organizations)』との相異について扱いました。
また、中編を書き終えた後に、『Work with Source』著者のトムを私の地元に招待し、アクティビティを通じて対話を重ねる機会もありました。
今回まとめていく後編では、『Work with Source: Realize big ideas, organize for emergence and work artfully with money(『ソースを活用する:大きなアイデアの実現、創発の仕組み化、そして、賢くお金を使うために)』というタイトルにもある『人とお金の関係性』について主に取り扱っていく予定です。
『Source(ソース)』という新しい概念を紹介してくれている本書ですが、その体感には様々な前提条件も多く含まれており、一読しただけでは難しい部分もあるかもしれません。さらに、一冊の本をまとめるとなると、その人のバイアスがどうしてもかかってしまうもの。私の読書記録も、参考までにご覧いただければ幸いです。
『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』の精髄に触れることにご興味のある方は、是非とも原著の購入と探究および著者であるトムや『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』提唱者であるピーター・カーニック(Peter Koenig)氏との対話を重ねることをおすすめします。
それでは、前回の続きへと進んでいきたいと思います。
ソース(Source)の創造性とお金との関係
『Work with Source』の第三部では、お金の本質とソース(Source)であることに関して取り扱います。
これまで、本書の読書記録のまとめにおいても、ソース(Source)がビジョンを実現するという外向きのクリエイティブなプロセスに焦点を当ててきました。
しかし、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』は、ソース(Source)が外向きのクリエイティブなプロセスだけではなく、内向きの自己開発(self development)に取り組む重要性を強調しています。
自分のソース(Source)に踏み込むということは、世界の物事を創造したり変化させたりするプロセスだけではなく、自分の偏見や盲点、過去が現在の現実に及ぼす影響などを意識し、自己認識を深める内面の旅でもあるのです。
そして、創造性とは個人の歴史や欲求の表れであり、自分自身を完全に解放するためには、自分の内面に目を向けなければならない、と考えているためです。
そして、この内面の旅には、お金との関わりから入っていくことができるのです。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、どんな実体のあるビジョンでも、お金がなければ適切な流れにはならないためです。
お金とは鏡のようなもので、私たちが無意識のうちに固執したり拒絶したりする自分自身の側面を映し出します。また、私たちの過去は、お金との関係を形成しています。
私たちは内面の旅において、お金による条件付けを超えることで、お金と上手に付き合い、創造的なビジョンを実現することができます。この条件付けを超越するプロセスはお金との関係を変えるだけでなく、個人的にも深い変化をもたらすことができるのです。
以上、ソース(Source)の創造性とお金との関係について、そして、ソース(Source)の内面の探求のためにお金との関わりを見ていく重要性が見えてきました。
以降、『お金』というテーマを扱うに当たって、
そもそもどのように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』が生まれてきたのか?
開発者であるピーター・カーニック氏(Peter Koenig:以下、ピーター)はどのような旅路を経て、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』を作り上げるに至ったのか?
について捉えなければ、その本質が見えてきません。
いわば、「ソース(Source)の役割」と「お金と人の関わり」に関して人に伝え、ビジネスに愛をもたらそう(Create Love in Business)というイニシアティブのソース(Source)はピーターであるためです。
ここからは、トムに『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』を伝えた、ピーター自身について見ていきたいと思います。
Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の提唱者:ピーター・カーニック(Peter Koenig)
ピーターは、現在75歳。イギリスのロンドンに生まれ、20代半ば以降はスイスのチューリッヒを活動の拠点としているとのことですが、今なお、お金と人との関わり、お金をきっかけとした内面の変容、歴史的・文化的・社会的・精神的に深くシステムとして根付いたお金そのものに関する探求を続け、人々にその知見を提供しています。
彼自身の言葉によれば、彼は『お金が大好き』。
それは、小さい頃からずっとそうであり、幼い頃から学生時代、そして学生時代以降にも多くのお金を稼ぎ、若くして経済的な成功を収めたビジネスマンでした。
しかし、33歳の時に転機が訪れます。
これ以上稼いでも、自分のためにも、健康のためにも、周りの人のためにもならないと思い、これまでの働き方・あり方に大きな疑問符がついたと言います。それ以降、彼のお金と人との関係についての研究が始まりました。
その後の約7年の間に、彼はいくつかの重要な結論、特に、自由について重要な結論に達しました。
それは、人は、お金があってもなくても自由なのだ。そして、自由はお金の多寡とは関係ない、というものです。
このことは、彼の仕事における極めて重要なコア・メッセージとなりました。
ピーターは1980年代に経営コンサルタントとしての仕事を始め、ビジョン作成および組織変革プロセスに取り組むほか、1994年には初のお金に関するセミナーの開催、1999年にはマネー&ビジネスパートナーシップに関する新たな国際カンファレンスを開始しました。
この活動の中、何百人もの人々と出会う中で、なぜ組織の変革プロジェクトが失敗することが多いのか、なぜ創業者のビジョンが実現しないことが多いのかに興味を持つようになりました。
また、これらの活動の中で創業者や起業家たちのビジョンや取り組みについて、何十回も小規模なワークショップを重ね、組織の中における「ソース(Source)の役割」を意識し始めます。さらに、「マネーワーク('moneywork')」という、お金との関わりを起点にソース(Source)の内面の変容を促すワークを開発し、人々に提供するようになりました。
これらの知見をもとに人とお金との関わりに関しての書籍をまとめ、
2009年からは、500人以上の起業家や創業者を対象としたリサーチにより、ソースに関するアイデアを精緻化し始め、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』へとまとめ上げていきました。
ここまでの一連の流れとイニシアティブを貫いている、ピーターの人生の目的が「ビジネスに愛をもたらす(create love in business)」です。
以上のように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』は膨大な実践と研究に裏打ちされています。
しかし中編でも書いたように、ピーターは自身の見出した『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』が自然の法則(laws of nature)である、とは断言していません。
検証による、モデルのさらなる発展を期待しており、更新の可能性があることを認めています。
さらに、後述する『JUNKANグローバル探究コミュニティ』の吉原史郎氏もまた、ピーターやトムに直接インタビューを申し出て、なぜ理論(Theory)ではなくプリンシプル(Principle)としたのか?についてを紹介してくれています。
2022年。Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の現在
上記のような変遷を経て、現在、ピーターおよび『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』はどのような状況にあるのでしょうか。
まず、ピーターのウェブサイト(ブログ)は、以下のものです。ここでは、彼の知見が記事として更新されている他、彼の関連するイニシアティブへのリンク等も充実しています。
また、マネー&ビジネスパートナーシップおよび、カンファレンスについては以下のサイトで運営されています。
Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の書籍化
『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』書籍化については、彼のパートナーたちが担うことで実現されてきました。
一冊は、2020年に出版された、ステファン・メルケルバッハ(Stefan Merckelbach)による『A little red book about source』(未邦訳)。
もう一冊が、2021年に出版された、トム・ニクソン(Tom Nixon)による『Work with Source』です。
特に、この『Work with Source』については、トムが中心となって『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』に関する特集サイトが運営されています。
『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』とReinventing Organizations(ティール組織)
ここ近年では、Reinventing Organizations(ティール組織)著者であるフレデリック・ラルーが、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』の考え方を自身のモデルの中に引用し、日本国内でも紹介した他、
2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分にも反映し、
さらに、以下の動画で紹介しています。
ピーターのイニシアティブのサブソース/sub-source(スペシフィック・ソース/specific source)であり、Reinventing Organizations(ティール組織)のコンセプトに共鳴していたトムは、組織のパーパス(Purpose)に関する見解の違いについてフレデリックと対話を重ねました。
その中でフレデリックは、このような言葉を残しています。
この点に関して、トム自身も『Work with Source』の中で言及しています。
ここでも、『JUNKANグローバル探究コミュニティ』の吉原史郎氏が、トムやピーターから直接話を伺い、パーパス(Puropose)に関しての理解を深める記事をまとめてくれています。
こうしてピーターの視点からSource Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の展開を振り返ってみると、前編でまとめた流れとはまた違った景色が見えるかもしれませんね。
2022.夏。『Work with Source』著者トム・ニクソンの来日
2022年8月。以上のような経緯を経て、トムが日本へ来日することとなりました。
現在、国内における『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』探究の入り口づくりを行っているイニシアティブは、大きく2つ。
一つは、『ティール組織』解説者・嘉村賢州が参加し、また、『Work with Source』の邦訳出版プロジェクトを推進している『令三社』。
もう一つは、「自然の畑」からの学びを組織経営に活かす『JUNKANグローバル探究コミュニティ』です。
『JUNKANグローバル探究コミュニティ』(吉原史郎)は、先述してきたように、トム来日前からトムやピーターと直接対話することで、その知見を紹介する記事を提供してくれていました。
また、『令三社』は国内での公開イベントで語られたトムの知見をまとめてくれています。
余談ですが、日本全国を廻る途中、トムは私の地元の伊賀に立ち寄り、畑体験を一緒に取り組んだ他、ソース(Source)の次世代への継承などのテーマで対話を深めることができました。
以上、国内でも少しずつ広がりつつある『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』ですが、10月の『Work with Source』邦訳出版以降の流れも楽しみです。
※2022年10月末追記。日本においても、『Work with Source』翻訳出版イニシアティブによってウェブサイトがオープンしました。
再び、ソース(Source)の創造性とお金との関係について
以上、改めてソース(Source)とお金が関係しているのか、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の開発者であるピーターのプロセスも辿りながら整理してきました。
ここで一度、ソース(Source)の働きについても振り返りたいと思います。
ここまで、ソース(Source)とは「あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割」であり、「脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと」であると見てきました。
本書中においては、アイデアを実現するための継続的な展開プロセスである「イニシアティブ(initiative)」。
ソース(Source)がイニシアティブ(initiative)を取る時、ビジョンを実現するために必要な人やその他のリソースを引き寄せ 、努力を束ねることで一貫性を生み出す魅力的なフィールド…クリエイティブ・フィールド(creative field)が確立されます。
この時、アイデアを実現するという外向きのクリエイティブなプロセス……ビジョンを描き、集ってくれたサブソース/sub-source(スペシフィック・ソース/specific source)や、また異なるイニチアティブとコラボレーションしていくなどの外向きのプロセスだけではなく、ソース(Source)自身の内面……内向きの自己開発(self development)に取り組むことが重要です。
なぜなら、自分のソース(Source)に踏み込むということは、自分の偏見や盲点、過去が現在の現実に及ぼす影響などを意識し、自己認識を深める内面の旅でもあるからです。
ビジョンに対するソース(Source)のエネルギー、つまり情熱は、努力のための燃料のようなものです。そのため、ソース(Source)は、自分の肉体的・精神的な健康と、自分がエネルギーを持つビジョンにつながり続けることに気を配らなければなりません。ソース(Source)の内面的な状態は、参加するすべての人が感じる活力やエネルギーの感覚と直接的に関係しているのです。
もし、ソース(Source)が、自分に合わないとわかっているものを入り込ませてしまったら、ゆっくりと、しかし確実に、クリエイティブ・フィールド(creative field)はまとまりを失ってしまうでしょう。そうなると、ソース(Source)のエネルギーが衰え、ビジョンに取り組む全員の活力が失われていくことが予想されます。
ソース(Source)が明晰で、創造的で、究極的には愛に満ちた場所から行動するとき、私たちはその文化が活力にあふれ、可能性、つながり、行動に 満ちたものになることを期待できます。一方、ソース(Source)が無意識の影(shadow)にある病理から行動すると、文化は痛みと混乱に満ちたものになるでしょう。
そして、この内面の旅には、お金との関わりから入っていくことができます。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、どんな実体のあるビジョンでも、お金がなければ適切な流れにはならないためです。
お金とは鏡のようなもので、私たちが無意識のうちに固執したり拒絶したりする自分自身の側面を映し出します。また、私たちの過去は、お金との関係を形成しています。
私たちは内面の旅において、お金による条件付けを超えることで、お金と上手に付き合い、創造的なビジョンを実現することができます。この条件付けを超越するプロセスはお金との関係を変えるだけでなく、個人的にも深い変化をもたらすことができるのです。
お金とアイデンティティの関係を紐解く
ソース(Source)のお金との関係は、彼らのクリエイティブ・フィールド(creative field)でお金がどのように機能するか、あるいは機能しないかを決める重要なものです。興味深いことに、この関係は、ソース(Source)が創造的な可能性を発揮するために不可欠な、深い自己啓発への強力な直接のルートでもあります。
最も効果的で創造的なソース(Source)は、執着や回避を伴わないお金の扱い方を持っています。彼らは、自分のビジョンを推進するためにお金を働か せる方法を見つけます。彼らは、自分のビジョンを実現するためにお金を働かせる方法を見つけるのです。いずれにしても、自分の創造的な取り組みが美しく、驚くような形で実現するのを目の当たりにし、それが彼らの真の原動力となるのです。
部屋中の人に「お金とは何だと思いますか」と尋ねれば、部屋中に答えが返ってくるでしょう。あなたのお金のライフストーリーのエクササイズに参加すれば、あなた自身の答えの数々が浮かび上がってくるでしょう。
あなたがお金についてどんなストーリーを持っているかによって、 あなたにとってお金がどんなものになるかが決まります。そしてそ れは、あなたがその物語に執着している限り、あなたにとって真実となります。
お金には良いも悪いもなく、根本的な性質がありません。何かをしよう、何かになろうという意志もありません。お金は、私たちが考えた通りのものになるだけなのです。お金にまつわる物語は無限にあり、唯一の限界は人間の想像力です。
お金にまつわるストーリーは、実は自分自身にまつわるストーリーでもあります。それは、人生の舞台で演じるキャラクターのようなもので、アイデンティティと考えてください。
人のアイデンティティとは、その人が人生で演じるキャラクターおよび演じることに抵抗を感じるキャラクターのことです。アイデンティティは、私たちの 習慣、態度、信念、行動、視点を支える基盤であり、最終的には私た ちの人生の状況を作り出すものです。
ピーター・カーニックは、このことを視覚化するために、私たちのアイデンティティ全体を、何千もの小さな鏡でできた大きくてキラキラしたディスコボールと考えることができると言っています。
それぞれの小さな鏡は、安全な私、自由な私、可能な私、 面白い私など、特定の瞬間に私たちが体現するさまざまなキャラクターを表しています。ディスコボールの反対側には、それらは、カール・ユングが「影(shadow)」と呼んだように、暗闇の中、無意識の中、抑圧された状態である不安な私、閉じ込められた私、障害のある私、退屈な私など、それぞれの個性の反対側があります。
私たちの人生経験によって形成された、光を浴びたり隠れたりするアイデンティティのユニークな組み合わせが、私たちの総合的なアイデンティティを構成し、私たちを私たちたらしめています。このアイデンティティは、最終的に私たちの生活環境を作り出す習慣、態度 、信念、行動、視点を動かします。ソース(Source)の人生においては、彼らのトータル・アイデンティティが、ソース(Source)としてのビジョンが実現されるかどうかの最も深い原動力となります。
私たちは、あるアイデンティティを完全に体現するには、その反対のものを深く知り、受け入れなければなりません。囚われていることを知らずに自由になることはできません。不安を知らずに安心することはできません。悲しみを知らずに喜び、愛されていないことを知らずに愛されることはできません。アイデンティティを取り戻すことは、全体性への道なのです。
お金との関わりの変容を促す実践法
本当の意味でお金に動かされている人はいません。人は、お金に投影(project)する力と、お金が語ると信じているストーリーによって動機づけられます。
ピーター・カーニックは、私たちが自分のアイデンティティを広げるための練習法を開発しました。抑圧されていたアイデンティティを取り戻し、アクセスすることができます。また、安全や自由をお金に投影(projecting)するように、自分のアイデンティティを他のものに投影(projecting)するのをやめることもできます。
お金との付き合いの中で、罪悪感や嫉妬、不満、恥、あるいは病気のような感覚が残っていることかもしれません。また、次のステップを明確にしているにもかかわらず、足踏みしている場合もあります。あるいは、誰かの行動が引き金となって、その人を批判している自分に気づくこともあるでしょう。これらは、取り戻すべきアイデンティティがあるという有益なシグナルや、採用すべきアイデンティティに対する恐れ、躊躇に気づく一歩となります。
ここからは、3つのエクササイズの手順について簡潔にまとめていきたいと思います。
あなたのマネー・ライフ・ストーリー:YOUR MONEY LIFE STORY
あなたが初めてお金の存在を覚えた時から現在に至るまで、お金が強力な力を発揮した人生の重要な出来事と、その際に感じた気持ちを時系列順に書き表してみましょう。
• 稼ぐ、使う、貯める、借りる、盗む、見つける、失う
• 葛藤と満足の時、栄光と恥、恐怖と喜び
• 罪悪感、嫉妬、不満、あるいは病気など
何が起こったかだけでなく、それぞれの瞬間にお金が何を表していたかを書き留めてください。
あなたのお金のライフストーリーが見えてくると、実はあなたの人生について非常に個人的な話をしていることに気づくでしょう。
自分の特性が長年にわたってどのように発展してきたか、そして、あなたの人生におけるお金の物語は、あなたがどのように今日のあなたになったか、という深い物語の窓であることがわかるでしょう。
特に、同じような性質、何度も現れるパターンがあれば、注意してください。これは、あなたとお金との関係を垣間見る最初の一歩です。
お金への投影の再生フレーズ:reclamation phrases
続いて、お金への投影を扱う方法です。代表的な例を挙げてみましょう。
という投影があります。
(安心という言葉は、あなたがお金から連想するポジティブな力…自由、成功などに置き換えてもいいでしょう)
では、これを言い換えて唱えてみるとどうなるでしょうか。
このプロセスでは、再生フレーズを声に出して唱えることで、頭だけでなく、体や神経系にもこれらのアイデンティティを処理する機会を与えます。そうすることで、知的な受容を超えて、身体的な統合感を得ることができるのです。正確に繰り返すことが大切です。
いかがでしたか?そのフレーズは抵抗なく通り抜けたのか、 それともどこかで遮られたのか。
声に出してフレーズを繰り返し、今度は体の感覚に注意してみましょう。
腸、胸、喉などに抵抗がありますか?もしかしたら、全身が抵抗して拒絶しているのを感じたかもしれません。何かを感じることができれば、あなたはうまくいっています。それを探ってみてください。
それはどのような感覚ですか?ドキドキするような感覚、 むずむずするような感覚、締め付けられるような感覚?鋭い痛みですか?その感覚は持続しているのか、それとも変化しているのでしょうか? 動いたのでしょうか?
さらに、このフレーズをもう一度繰り返し、生じた身体的感覚に耳を傾けます。
抵抗感は同じですか、それとも変化していますか?
何かを変えようとする必要はありません。ただ気づいてください。
感覚は強くなっていますか、それとも弱くなっていますか?時間が経てば、抵抗感が消えて、このフレーズが純粋に自分のものになるかもしれません。
投影されたものを即座に取り戻せないのであれば、落胆するのは当然ですが、その必要はありません。
このフレーズは嘘だと思っていても、自分の中で一番役に立つ嘘かもしれないと思ってください。とりあえず、自分に嘘をつくことを許可して、それによって安心感やお金との関係がどう変わるかを見てみましょう。
また、別の機会にこのフレーズに戻って、何か変化があったかどうかを確認してみてください。変化が起こると、それはとても大きなものになり、あなたがアイデンティティの上に築いてきた習慣、考え方、信念なども変化することを経験するかもしれません。
私たちの中には、身体的な経験につながることが難しい人がいます。そのため、最初は不自然に感じられる方もいらっしゃると思います。
このような場合、心と体の意識を高めるための練習を始めてみることが良いかもしれません。
『Work with Source』巻末には、そのような方法への招待が記載されています。
正反対のものを取り戻す:Reclaiming the opposite
今度はその正反対の面を取り戻すことに切り替えます。
例えば、「安心」 に取り組んでいるのであれば、自分にとって「安心」の反対語は何かを考えてみてください。単なる不安なのか、それとももっと正確なのなのか。そして、次のような再生のフレーズを声に出して唱えてみてください。
もう一度言いますが、これが嘘のように感じても大丈夫です。
体のどこで、どのような抵抗があるかに気づいてください。それでもブロックが移動しない場合は、このフレーズを自分に言い聞かせるためのとても有効な嘘として扱うことを自分に許してみましょう。意識を向けるだけで、力強い一歩となります。
何度かフレーズを繰り返し、身体の感覚に同調したら、再生の段階に戻ります。自分のアイデンティティを取り戻したら、それをさらに高めていきましょう。
から、
さらに、
もしさらに上げていけたなら、
というような、大袈裟な表現まで行ってみましょう。
ここまでたどり着いた時、これらの長い間閉じ込められていた自分自身の一部は、今では彼らの人格に統合されています。それらはそこにあることを認められているのです。
あらゆる人々がソース(Source)である
自らの内面を豊かにしていくことは、人生における創造性と充実感を高めることにつながります。
一方で、私たちは皆、性別、肌の色、学歴、出生地など、自分ではコントロールできない状況や特性の影響を受けています。
多くの人々が、欠乏や思いやりの欠如、体系的な人種差別など、 さまざまな問題に基づいて構築された社会経済システムの犠牲になっています。これらのシステムは、お金とは何かを深く理解していないリーダーや、自分自身の内面の仕事をしていないリーダーによって監督されています。これが、今日の世界を支配している植民地 ・産業システムです。
すべての人に十分な食料を生産できる世界で 、多くの人が飢えているのは、恐ろしく、不必要な悲劇です。しかし、被害を受けたからといって、被害者であるというアイデンティティに固執したり、そのアイデンティティに縛られたりする必要はありません。
そのような環境下で、「創造的で目的意識を持った天職に就くことは自分には向いていない 」「まずお金が必要だ」「不安や罠にかかっていて、自分ではどうしようもない外部環境を変えなければ何もできない」「本当に創造的な 人生を送れるのは恵まれた環境に生まれた人だけだ」などと言うのは 、抑圧的な考え方を助長することになります。
お金からは何も始まりません。ビジョンを追求するソース(Source)のエネルギーがあれば、イニチアティブを始めることができます。
また、活動を継続するためにお金が必要なわけでもありません。 クリエイティブな活動には、お金があってもなくても、ビジョンの実現に向けた次のステップが必ずあります。
会社という法人が倒産しても、ビジョンとエネルギーを持つソース(Soirce)がいる限り、創造的な試みは何らかの形で継続することができます。
もしあなたが内面の旅を経て、お金に投影していた自分自身のエネルギーを取り戻せた時、これまで以上に自分のやりたいことに創造性を発揮していくことができることでしょう。
創造的な道は誰にでも存在しています。そして、執着や嫌悪感を乗り越えて自分らしさを取り戻すことのできる人間の創造的な可能性は無限です。この再生プロセスを使えば、どんな状況にあっても、自分の天職を生きることができますし、他の人にも自分の中に源を見てもらうことができます。より多くの人がこの作業を行うことで、私たちが生きているシステムを一緒に変えることができるのです。
終わりに
前編、中編、後編を合わせると、一冊の本の読書記録としては、これまでで最も文章量の多い読書記録となりました。
この『Work with Source』は私自身の人生に深く交わっている特別な一冊のため、それだけ熱量を持って取り組むこととなったのかもしれません。
また、この本で紹介されている『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』は机上の理論ではなく、実践のための優れたレンズのため、生身の体験、体感を以てこの本に向き合うことができた、というのも大きかったように思います。
この本に出会うことで、間違いなく私の人生は変わりました。
父から実家の田んぼを継ぐことになったこと、それに伴う仕事や家族におけるシステムや関係性の変化、そこに向き合っていた自身の葛藤や希望といったものが、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』のレンズでよりクリアに捉えることができるようになりました。
そして、今こうして健康に生きていられること、日々コミュニケーションをとっている皆さんと時間を共にできること、原風景である伊賀の自然とともにあることのありがたさ…そういった私に関わるあらゆるものに対して感謝の気持ちを持ち、接することができるようになりました。
私の中に息づいた「愛」を確かめることができた、のかもしれません。
この出会いを導いてくれたすべてに、そして、素敵なアイデアをこの世界に送り出してくれたピーターとトムに感謝したいです。
この後編を書き上げるまでに、著者のトムとの邂逅と対話、ピーターとの出会いなど、書かれた文字を追うだけでは感じ取れないエッセンスも感じる機会も得ることができました。
これを書いている2022年9月時点は、8月のトム来日の熱量がやや落ち着き、我が家の稲刈りの収穫も終え、邦訳本の出版を約1ヶ月後に控え、季節は秋に向かっていくというタイミングです。
今、この瞬間に様々な人々の様々なプロセスやイニシアティブが生起しては消えていき、その先でまた何か違った縁と繋がることができるかもしれない。そんな感覚を感じています。
次なる探求の場は、『Work with Source』翻訳前後の様々な取り組みや、以下のような本の読み込み、対話にてご一緒できるかもしれませんね。
今回の読書記録は、そんな漠然とした未来への希望を感じつつ、終えたいと思います。
最後に。ここまで長文の読書記録を追ってくださった皆様、ありがとうございました!
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