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【読書感想】被害者なら何をしても許されるのか?

こんにちは、Yukiです。

今回ご紹介する本は、貫井徳郎(著)『悪の芽』です。

久しぶりに小説を紹介してみたいと思います。この小説はミステリー小説に位置づけられるようですが、それよりも読んで考えさせられることが多かったです。

それも簡単には結論が出ない、とても難しい問いでした。
ぜひこの本を読んだ際は、この本が投げかけてくる問いに向き合ってみてください。

本の紹介

小説なので、内容紹介はあらすじに留めておきます。

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主人公である安達は、会社に勤め家庭を持つサラリーマンでした。子供にも恵まれ、幸せな家庭を築いていました。一つ言えるのは、安達自身が自他共に認めるエリート街道を走ってきたということです。

ある日のこと、安達はある事件を知ります。
それが無差別大量殺人事件でした。通称「アニコン」と呼ばれるイベント会場で、人の集団に火炎瓶を投げ込み、8人を死亡させたというものでした。

犯人はその場で自殺してしまいます。遺書なども残さなかったため、結局犯人の動機は明かされることはありませんでした。

安達はその事件の報道を見て、気になることがありました。犯人の名前に聞き覚えがあるのです。そこで記憶をたどると、なんと犯人は安達の小学生時代の同級生でした。

それだけでなく安達は、彼が虐めにあうきっかけを作った張本人でもありました。

安達は考えます、今回の事件は、元をたどれば虐めが原因ではないだろうか、と。そしてもし自分がかつての同級生で、自分がその虐めのきっかけを作ったことが明るみに出れば、残された被害者家族の怒りの矛先は、自分だけでなく家族にも及ぶのではないか。

その結果、安達はパニック障害に陥ってしまい、人前に出ることができなくなります。

パニック障害を克服するには、自分の過去と向き合わなければならない。
そう考えた安達は、犯人を知る人に聞き込みをすることを決意しました。

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以上が、この小説のあらすじとなります。

読んだ感想

冒頭にも書いたとおり、「ミステリー小説の面白さもあったけれど、それ以上に考えさせられる作品だった」というのが、僕の率直な感想です。

では何にそこまで考えさせられたのか、と言えば、一つはタイトルにある問いでした。

つまり、「被害者なら何をしても許されるのか?」です。ちなみにこれは、小説の中に書いてあるわけではありません。読んでいて、僕が感じた問いです。

この問いを持った背景を説明します。

何も悪いことはしていない。ただイベント会場にいただけ、という理由で大切な家族を奪われた人たちがたくさん居ました。
犯人の動機も分からないため、やり場のない怒りを抱えたままでした。ある時、残された被害者家族が集まりました。その目的は、被害者家族の会を立ち上げ、今回の事件に対して、どのように対応するかを決めることでした。
犯人は自殺したので、代わりに犯人の家族に賠償金を請求する。加害者家族の住所を公開して、社会的制裁を与えるなどいろんな意見が出ました。

これが背景です。

確かに、被害者家族にとっては、理不尽に大切な人を奪われたわけです。その怒りは当然だと思います。

ですが、だからといって、何をしても良いことになるのでしょうか?

僕がこのように言えるのは、実際に被害者家族の立場にたっていないからかもしれません。もし僕が同じ立場だったら、どうしていたかわかりません。

それでも、この疑問を感じざるを得ません。先述したとおり、この問い自体難しく、簡単に答えられるようなものではありません。
今でも考え続けています。

この小説の良いところの一つは、事件を安達の視点だけでなく、様々な人の視点から描いているところです。

立場が異なれば、考え方も異なります。そうすると、それぞれが持つ正義も異なるでしょう。しかし、行き過ぎた正義は暴走してしまいます。

僕が考えた問いだけでなく、随所でいろんなことを考えさせられます。
まるで、「アナタはどう考えますか?」と著者である貫井さんから、問われているようでした。

また話は変わりますが、この本を読むに当たって、Amazonのレビューを見てみました。他の人の感想が気になったためです。

最低評価をしている人が何人か居たのですが、共通しているのは、「期待ハズレだった」ということでした。

どういうことかと言えば、この本の帯には「驚愕の真相」と書いてあるが、そこまで驚愕ではなかった、ということのようです。

また、「中身のない小説」というレビューもあり結構驚きました。

ただ、気持ちは少し分かります。僕も「驚愕の真相」につられて購入し、想像より驚愕ではなかったと感じていたからです。

しかし、中身がなかったかといえばそんなことはないと思います。むしろ中身が詰まっており、メッセージ性の強い作品だと思いました。

終りに

正直、ここまで訴えかけが強い作品はほとんど読んだことがなかったので、お腹いっぱいになりました。

小説は、単なるフィクションの作品ではありません。
そこには、著者の考え方やメッセージがあります。

それを読み解いていくことも、小説を読む醍醐味だと言えるでしょう。

気になった方は是非読んでみてください!

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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