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「『IKIGAI(生きがい)』って言葉、すごく日本人ぽいね」【77日目】

朝8時、配属先の専門学校に着く時間だ。

同僚や学生に朝の挨拶(ほっぺたを合わせることや抱き合うことにも慣れてきた!)をして、私は図書室へ行く。

職員室もあるけれど狭いので、私は図書室を自分の待機場所として使わせてもらっている。


図書室にはいつも司書の女性が座っている。

彼女とは毎朝顔を合わせているので、いろいろな話をする。

スペイン語の表現を教えてもらったり、ドミニカ共和国や日本の文化の話をしたり、といった感じだ。


そして、今朝は彼女からある質問をされた。

「ユカリ、『IKIGAI(生きがい)』と『SHIMEI(使命)』ってどういう意味?何が違うの?」


・・・んん!?

今日は朝から難しい質問がきた・・・!!この質問日本語で答えるのも難しいのに、スペイン語でどうやって説明すればいいんだ・・・!!


彼女によると、「IKIGAI」と「SHIMEI」という言葉を紹介しているインスタグラム(中南米で有名な日系人・ヨコイケンジさんのもの。詳しくは「中南米で有名な日系人『横井研二』さんってどんな人?」)を見つけて興味がわいたらしい。

私はしどろもどろに「生きる理由かな・・・。違いはそんなに無いよ」と答えた。


私が自信なさそうに答えたのが気になったのか、彼女は「IKIGAI」と「SHIMEI」について紹介しているインスタグラムを見て、私の答えが合っているか確かめ始めた。


そのインスタグラムには、「IKIGAI」は「生きる目的」、「指名」は「生きている感覚」と紹介されていた。

なるほど、そういうことか。日本人の私にとっても勉強になる。

彼女も「なるほどねー!」と納得したようだった。


そして、私はふと気になったことを彼女に聞いてみた。

「生きがいってスペイン語で何て言うの?」


彼女はしばらく沈黙した後、困った顔をして

「分からない。そんな言葉はない」

と答えた。

そして、こう付け加えた。

「『IKIGAI』と『SHIMEI』って言葉はすごく日本人っぽい。日本人はまじめに勉強するし、働いてお金を稼いで、自分の人生を考えて生きる。

私たちは日常的に自分が生きている目的なんて考えない。その日その日を生きている感じがする。私たちはお金が無くていきたい大学にいけなかったり、やりたいことができなかったりするから、人生全体より1日が大事」

(*あくまで彼女個人の意見。ドミニカ人の中でも人生や将来を考えている人はいる。でも日本人よりもその数は少ない印象。)


正直、どう答えたらいいか分からなかった。

「日本人でも生きがいや使命を考えずに生きている人はいっぱいいるよ」とか、多分彼女が期待していない応え方をしてしまった気がする。


でも、今日の会話を通して「生きがい」や「使命」はある程度お金の余裕がないと生まれてこないのかもしれないと思った。

1日1日を生きるのに必死な人たちに「人生の目的は?」とか「将来どうしたい?」とか考える余裕はないと思う。


ドミニカ共和国で雇用が生まれたり、給料が上がったりすることはこの国の経済が発展するだけじゃなくて、彼女たちが「生きがいを持った人生を送れる」ことにもなるんだな。



ちなみに、今「IKIGAI」という言葉は「TSUNAMI」や「SUSHI」のように世界で通じる日本語になりつつあるらしい。

スペイン人の作家が2016年に「ikigai」という本を出版したり(ヨーロッパでは各国の言語で翻訳され、ベストセラーになった)、イギリスのBBCのサイトで「Ikigai: A Japanese concept to improve work and life」と紹介されたりしている。



「生きがい」をもって生きられることは幸せなことで、しかも世界的に見たら日本人特有の感覚なのかもしれない。




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