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小説「声」冒頭 小山右人
声
たった一度の愛の告白に賭けた声
小山右人
1
「話してごらん?」
私は君に向き合い話しかける。君は首を横に振ったきり、頑なに口をつぐんだままだ。しかめ面に空疎な笑みを浮かべると、鉛筆を胸ポケットから取り出し、机上のメモ用紙に書きつけた。
〈話すと良くないことが起こると、もう一人の自分が脅すんです〉
ぽとりと鉛筆を落とすと、一転悲しげに私を見つめた。その眸は異様なまでに澄んでいるに
声
たった一度の愛の告白に賭けた声
小山右人
1
「話してごらん?」
私は君に向き合い話しかける。君は首を横に振ったきり、頑なに口をつぐんだままだ。しかめ面に空疎な笑みを浮かべると、鉛筆を胸ポケットから取り出し、机上のメモ用紙に書きつけた。
〈話すと良くないことが起こると、もう一人の自分が脅すんです〉
ぽとりと鉛筆を落とすと、一転悲しげに私を見つめた。その眸は異様なまでに澄んでいるに