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<ラグビー>2023年RWC敗者復活戦、イタリア対南アフリカ、スコットランド対アルゼンチン、イングランド対オールブラックス、アイルランド対オーストラリア、ウェールズ対ジョージア、フランス対日本、明治対帝京の結果から

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 ある時、しばらくぶりにキッシュカードを使うため、銀行ATMに行った。そこは小さいためか、警備員もいない無人の小屋で、機械が4台あるだけだった。しかし、一応繁華街でもあるので、近くに若い警察官が立っていて、私の姿を見ると「振り込め詐欺に注意してください!」と声をかけられた。私は「はい、大丈夫です」と応えたが、心配だったらしく、ATM小屋の中にまで入ってきて、私の操作をじっと見ていた。私は、無事にいくばくかの現金を引き出して財布にしまい、ATM小屋を出た。警察官は繰り返し「振り込め詐欺にご注意ください!」と言っていた。

 しばらくしてから、「あっ、そうだったのか!」と気づいたことがあった。それは、私一人ではなく、家内が一緒にいたからだ。私より年下の家内が傍にいて、私に現金引き出しを促しているように見えたのかも知れない。そういえばfacebookで、若い外国人女性の画像から、妙に慣れた日本語で友達申請が来る。「これは、絶対に詐欺だな!」とわかるので、すべて無視している。しかし、ATMの事例を考えてみると、家内がこの詐欺グループの一員で、少しボケてきた金持ち老人(または年金受給者)である私を色仕掛けで釣り、多額の現金を騙し取ろうとしていたように見えなくもない。いや、あのかなり若い警察官は、きっと「そのように」思い込んだのではないか?と確信した次第。

1.2023年RWC敗者復活戦

(1)香港22(3T2C1P)-18(2T1C2P)ケニヤ

 優勝がなくなったチーム同士の対戦。意外と接戦になりそう。

 香港が順当に勝利して3位になった。次回2027年RWC出場を期したいが、香港在住ヨーロッパ人中心のチーム構成では、やはり強化に限界がある。そう考えれば、ケニヤの方が次回出場の可能性は大きいと思う。

(2)アメリカ16(1T1C3P)-16(1T1C3P)ポルトガル

 優勝を決める一番。これまでの実績及び実力的に見てアメリカが優勢か。しかし、結果は違った。

 ポルトガルは、得失点差でアメリカをリードしていたので、引き分けでもRWC出場が決まるという余裕があった。そしてゲームは、前半アメリカ9-10ポルトガルと、ポルトガル有利のペースで進む。しかし、後半60分、アメリカがゴール前のラックからHOカペティ・パイフェレットがトライ、SOのAJ・マクギンティがコンバージョンを決めて、16-13と逆転し、RWC出場に向けて前進したかに見えた。ところが、82分、ポルトガルSOサムエル・マルクエスが正面35mのPGを決めて、アメリカにシンビン1枚、ポルトガルにシンビン2枚が出る激戦は、引き分けのノーサイドとなり、アメリカの希望は引き分けという消化不良の結果で消えた。

 アメリカとポルトガルの両チームは、RWC出場を決めるポイントは12で並んだ一方、得失点差ではポルトガルが+113,アメリカが+96となり、得失点差でポルトガルのRWC出場が決まった。この得失点差となった背景には、ケニヤに対して、ポルトガルが85-0で勝利したのに対し、アメリカが68-14と十分な得点を重ねられなかったことがある。どんな試合でもどん欲にトライを取りに行く姿勢が、ポルトガルに幸運をもたらしたと言える。

 なおポルトガルは、元フランス代表WTBでトライゲッターだったパトリス・ラジスケが監督をしている。以前からのチームカラーもあるが、ラジスケ監督の指導により、FWは弱い一方、BKはパスをつないで外に振り、WTBがタッチライン際を抜いてトライを取るラグビーをしている。RWCでは、FWで簡単に粉砕されそうだ。

(3)RWC各プールのチームが確定

 敗者復活戦が終わり、これでRWC全参加チームが決まった。予選プールの組み分けは以下のとおり。

プールA:NZオールブラックス、フランス、イタリア、ウルグアイ、ナミビア
プールB:南アフリカ、アイルランド、スコットランド、トンガ、ルーマニア
プールC:ウェールズ、オーストラリア、フィジー、ジョージア、ポルトガル
プールD:イングランド、日本、アルゼンチン、サモア、チリ

 楽そうなのはプールAとCだと思う。それぞれ上位2強が順当に決勝トーナメントに進出するのは確実だ。逆に厳しそうなのはプールBとDで、どちらも実力が拮抗しているチームが揃っている。しかし、プールDは、さすがにチリは対象外(他の4チームに大敗するのが見えている)になるので、実質4チーム同士の戦い。一方プールBは、意外とルーマニアが(得失点差争いになったときに、高得点を取る相手として)台風の目になりそうなので、こちらの方が厳しいかも知れない。

 順当に考えれば、AはNZオールブラックスとフランス、Bは南アフリカとアイルランド、Cはウェールズとオーストラリア、Dはイングランドとアルゼンチンで、残念ながら日本の二大会連続8強は難しそうだ。なお、もし日本が勝てるとすれば、アルゼンチンよりも意外とイングランドになりそうな気がする。「2015年イングランド大会でイングランドが惨敗」、「エディー・ジョーンズつながり」、「2007年フランス大会はアップセットの大会だった」ことなどをキーワードにして考えると、けっこう当たりそうな予感がある。

 ところで、RWCのたびに期待してしまうのが、1995年に日本代表がオールブラックスに喫した145点という最多得点記録の更新。今回期待できそうなのは、プールAのウルグアイとナミビア、プールCのポルトガル、プールDのチリの各チーム。そして、更新する可能性があるゲームは、オールブラックス対ウルグアイ、オールブラックス対ナミビア、フランス対ウルグアイ、フランス対ナミビア、ウェールズ対ポルトガル、オーストラリア対ポルトガル、フィジー対ポルトガル、ジョージア対ポルトガル、イングランド対チリ、アルゼンチン対チリ、サモア対チリ。いずれも勝者が100点以上(15トライ&コンバージョン以上、約5分ごとにトライ&コンバージョン)を記録するゲームになると見ている。

 本当は、日本対チリで更新できれば、自ら過去の汚名をそそぐことになるので、これが最良なのだが、今の日本のチーム力からすると期待できそうにない。145点以上となるには、21トライ&コンバージョンは必要で、3~4分ごとにトライ&コンバージョンしなければならないからだ。一番期待できるのは、イングランド対チリで、次は案外ジョージア対ポルトガルではないかと思っている。

2023年RWC公式ウェブサイト(日本語版選択可能だが、情報量は英語版が多い)

2.イタリア21(2T1C3P)-63(9T6C2P)南アフリカ

 南アフリカは、ディレクターオブラグビー(意訳すれば総監督)のラッシー・エラスムス(元スプリングボクスNO.8で前監督)が、再びSNSでレフェリーを批判する発言をしたため、2試合の出場停止処分を科された。

 これは、先週フランスに26-30と負けた試合を担当した、イングランド人レフェリーのウェイン・バーンズに対して、その前の週の南アフリカがアイルランドに16-19で負けた試合を引用する形をとって、暗に批判したもの。WRとしては、試合の公平性及び審判団への影響から、試合関係者は審判団に関する発言を公にすべきないとしている一方、エラスムスは今回が初犯でないことから、明確なレフェリー批判ではないものの、今回の厳しい処分を決めた。このため、エラスムスは今週のゲーム及び来週のイングランド戦に関与できなくなった。

 南アフリカ監督のジャック・ニーナバーは、オーストラリアに初勝利したイタリアを警戒して、怪我人以外はほぼベストのメンバーを揃えた。FLピータースティフ・デュトイが怪我で外れたため、フランコ・モスタートを6番FLにし、4番LOにリザーブだったサルマーン・モエラットを入れた他、5番LOにはマーヴィン・オリーが入っている。NO.8にはジャスパー・ウィーゼが戻った。

 BKでは、13番CTBにダミアン・デアレンデが戻った他、引き続きチェスリン・コルベが14番WTB、ウィリー・ルルーがFBの布陣にした。HOはボンギ・ムボナンビが先発、マルコム・マルクスが16番のリザーブというのは変更ない。

 イタリアのNZ人監督キアラン・クラウリーは、Bチームとはいえオーストラリアに初勝利したことが大きな自信になっている。今回はさらに手強い南アフリカであり、しかもAチームを揃えているので、正直勝利までは難しいが、良いプレーを見せたい。FBのアンジェ・カプオッツォは、WRの今年最もブレイクした選手の候補に挙がっている。

 前半イタリアが健闘し、イタリア13(1T1C2P)-18(2T1C2P)南アフリカと5点差で終える。しかし、後半に、リザーブメンバーを投入した南アフリカが、本来の実力を発揮して、最後にはトライを重ねて圧勝した。完敗したとはいえ、強化されていることを実感したゲームとなったのが、イタリアの成果となった。

3.スコットランド52(8T6C)-29(4T3C1P)アルゼンチン

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、先週のウェールズ戦敗退の巻き返しをしたい。怪我で外れていたHO兼キャプテンのフリアン・モントーヤが先発に戻り、大ベテランのアガスティン・クレビイはメンバー外となった。3番PRにエデュアルド・ベロ、13番CTBにマティアス・オランドー、14番WTBにバウティウタ・デルガイがそれぞれ戻った他、11番WTBには、今や世界一のゴールキッカーであるエミリアーノ・ボッフェリが健在だ。リザーブには、21番SHラウタロヴェレツ・ベイザン、22番SOにはベテランのニコラス・サンチェスがそれぞれ入った。

 スコットランドのグレガー・タウンゼント監督は、今年7月のアルゼンチン遠征で1勝2敗の結果だったリベンジをしたい。LOリッチー・グレイが、先週のオールブラックス戦のプレーで3試合の出場停止処分となったため、4番LOにジョニー・グレイをFLから上げた。NO.8のオーストラリア生まれのジャック・デンプシーは、初先発を獲得した。リザーブでは、18番PRにマーフィー・ウオーカーが入った。

 ゲームは、前半23分、アルゼンチン7番FLマルコス・クレメールがレッドカード(退場)となったものの、前半スコットランド19-15アルゼンチンと、14人のアルゼンチンは4点差で持ちこたえた。しかし後半は、アルゼンチンに、49分の4番LOマティアス・アレマンノー、50分の5番LOトーマス・ラヴァニーニと、両LOが連続してシンビンになり、結果的にスコットランド15人対12人アルゼンチンの戦いが10分間続いたため、ゲームは壊れてしまった。またスコットランドにも、63分に7番FLジェイミー・リッチー、80分に12番CTBシオネ・ツイプロツがシンビンになるなど、結果的にゲームが荒れてしまった。後半は、スコットランド33-14アルゼンチンとなり、スコットランドがアルゼンチンに大勝し、7月のリベンジを果たした。

 アルゼンチンは、今秋イングランドに勝つなど良い試合をした一方、スコットランドにレッドカードとシンビン2枚で大敗するなど、チームの調子が安定しないのが難点となっている。一方のスコットランドは、オールブラックスに善戦するなどチーム力が向上しており、RWCに向けて強化が順調に進んでいるようだ。

4.イングランド25(3T2C2P)-25(3T2C1P1D)オールブラックス

 オールブラックス監督イアン・フォスター、アシスタントコーチのジョー・シュミットとジェイソン・ライアンは、Bチームで苦戦しながらスコットランドに勝利したことを、チームの成長と前向きに捉えている。23人のメンバーでは、日本戦のレッドカードで出場停止処分だったLOブロディー・レタリックが、オールブラックスで12人目となる100キャップを達成する。また、5番LOサムエル・ホワイトロックとのコンビは、南アフリカのバッキース・ボタとヴィクター・マットフィールドが持っていた68試合の世界記録を越える、69試合目の新記録となる。

 23人のメンバーでは、スコットランド戦のプレーを評価されて、14番WTBにマーク・テレアが先発し、21番SHにはTJ・ペレナラが入った。また、HOもコーディ・テイラー先発、サミソニ・タウケイアホがリザーブとなっている。6番FLに入ったスコット・バレットは、2019年RWC準決勝のイングランド戦敗退の原因とされたが、今回はそのリベンジとなる。また、リザーブにLOの専門職を置かず、19番シャノン・フリッゼル、20番ホスキンス・ソツツといずれも3列の選手を揃えたので、LOが交代する場合はスコットがFLからLOへ上がることになる。

 12番CTBは、フィジカルでも通用するジョルディ・バレットが戻り、リザーブの22番にはデイヴィット・ハヴィリ、23番にはアントン・リエナートブラウンの二人のCTBを入れた。そのため、SOリッチー・モウンガが交代する場合は、FBボーデン・バレットがSOに上がり、ジョルディがFBに下がることになる。また、13番CTBはスピードのあるリエコ・イオアネが戻り、トイメンのフィジカルの強いマヌー・ツイランギに対抗する。

 イングランドのオーストラリア人監督エディー・ジョーンズは、100キャップを迎えるキャプテンである12番CTBオウウェン・ファレルに、大きな信頼を寄せている。そして、13番CTBには、ジョーンズ監督の好みかつフィジカル自慢のマヌー・ツイランギを入れ、2019年RWC準決勝の再現を狙っている。

 日本戦では6番FLだったマロ・イトジェを本来の4番LOに戻した他、NO.8にフィジカルが強いビリー・ヴニポラを入れた。いずれも力相撲でオールブラックスに勝とうとしていることがわかる。14番WTBは、日本戦で直前に外れたジャック・ノウウェルが戻り、代わりにプレーしたジョー・ゾカナシガは怪我でメンバー外となった。

(試合経過)
4分、オールブラックス7番FLダルトン・パパリイが、右50mのイングランドボールのラインアウトから左へ展開しようとした、SHジャック・ファンプールヴィレットのパスをインターセプトし、そのまま40m走りきって中央にトライ。12番CTBジョルディ・バレットのコンバージョン成功で、0-7。
9分、オールブラックスHOコーディ・テイラーが、左ゴール前5mラインアウトのからモールを押し、左中間にトライ。ジョルディのコンバージョン成功で、0-14。
26分、イングランド12番CTBオウウェン・ファレルがPG、3-14。
41分、ジョルディがPG、3-17。

前半、イングランド3(1P)-17(2T2C1P)オールブラックス。

42分、イングランドSOマーカス・スミスがPG、6-17。
50分、オールブラックスが、自陣22m内でFBボーデン・バレットが左スミへキックパス。これを取った11番WTBケイレブ・クラークをサポートした13番CTBリエコ・イオアネが、約70m走りきって左スミにトライ。ジョルディのコンバージョン失敗で、6-22。

71分、オールブラックスFBボーデン・バレットが正面30mのDG成功、6-25。
72分、オールブラックスFBボーデン・バレットが、自陣ゴール前の故意のタックラーノットリリースでシンビン。
72分、イングランドが、左中間ゴール前ラックからのピック&ゴーで、3番PRウィル・スチュアートが左中間にトライ、スミスのコンバージョン失敗で、11-25。
74分、イングランドが、右中間ゴール前10mラックから、SHベン・ヤングスからのロングパスを取ったFBフレディー・スチュワードが右スミにトライ、スミスのコンバージョン成功で、18-25。
80分、イングランドが、右中間ゴール前ラックからのピック&ゴーで、3番PRスチュアートが右中間に2つ目のトライ。スミスのコンバージョン成功で、25-25。

後半、イングランド22(3T2C1P)-8(1T1D)オールブラックス。
合計、イングランド25(3T2C2P)-25(3T2C1D1P)オールブラックス。

 オールブラックスが6-25の19点差にしたのが、後半71分。しかし、イングランドに残り8分間で19点を取られて、負けに等しい引き分けとなった。一方のイングランドは、ホームで勝ちに等しい引き分けとなり、イングランドファンは満足したのではないか。なお、両チームの引き分けは、1905年以来とのこと。1905年という年は、オールブラックス対ウェールズ戦で、オールブラックスWTBディーンズの幻のトライがあった年だが、世界的にはアインシュタインの特殊相対性理論が発表された、人類の歴史が大きく動いた年だった。そういう点では、2022年も人類の歴史が大きく動いた年なのかも知れないと思う。

 ところで、2019年RWC準決勝はイングランドが勝利。今回の2022年のトウィッケナムでの対戦は引き分けとなった。2023年RWCで両チームは準決勝または決勝でしか対戦するチャンスがないが、この時こそは、オールブラックスが良いプレーをして勝つと信じている。

5.アイルランド13(1T1C2P)-10(1T1C1P)オーストラリア

 オーストラリア監督デイヴ・レニーは、イタリア戦をBチームで戦って負けてしまったことを反省し、世界ランク1位のアイルランド相手のこの試合で、オーストラリアとしての存在感を発揮したい。23人のメンバーでは、FBにアンドリュウ・ケラウェイが戻った他、イタリア戦のプレーを評価されて、14番WTBにマーク・ナワカラニタワゼが入った。SOはベテランのバーナード・フォリーが戻り、NZ人のノア・ロレシアは22番のリザーブに下がった。1番PRにキャプテンのジェイムズ・スリッパ―が戻った他、7番FLにマイケル・フーパーが戻っているのは、チームとして心強い。

 アイルランド監督アンディ・ファレル(イングランド代表オウウェン・ファレルの父、元ラグビーリーグの選手)は、CTBロビー・ヘンショウの怪我により、12番CTBにスチュアート・マクロウスキーを先発させた他、8週間の出場停止処分が明けたバンディー・アーキを23番のリザーブに入れた。また、SHはジャミソン・ギブソンパークが先発し、21番のリザーブにはクレイグ・ケーシーが入っている。

 試合直前に、アイルランドSOジョナサン・セクストンがメンバー外となり、22番ジャック・クラウリーがSOに上がり、22番にはロス・バインが入った。前半は、アイルランドSOジャック・クラウリーのPGだけの3-0でアイルランドがリードして終わる。後半は、55分にオーストラリアSOバーナード・フォリーがPGを返すも、66分にアイルランド23番CTBバンディー・アーキがトライ(クラウリーのコンバージョン成功)で10-3とアイルランドがリードを守る。

 終盤の71分に、オーストラリアは23番CTBジョーダン・ペタイアのトライ(フォリーのコンバージョン成功)で10-10とついに同点に追いついたが、76分に22番SOロス・バインにPGを入れられ、アイルランドが接戦を勝利した。

 オーストラリアは、この北半球遠征でイタリアに初めて負けるなど、現在までまったくいいところがない状況が続いている。最後の試合となる来週のウェールズ戦では、ぜひ一矢報いたいところだろう。一方のアイルランドは、世界ランク1位に相応しい戦績を残すことができて、来年のRWCへ向けてチームは順調に進んでいるようだ。

6.ウェールズ12(2T1C)-13(1T1C2P)ジョージア

 今週もまた大きなアップセット兼歴史的勝利が記録された。ジョージアが敵地でウェールズに初勝利した。前半は、ウェールズに12-3とリードされたものの、後半52分、ウェールズ14番WTBアレックス・カスバードのシンビンからジョージアが攻勢を続け、59分に11番WTBアレクサンドル・ツデュアがトライ、SOテド・アブザンダゼのコンバージョン成功で、12-10と迫り、78分に21番SHルカ・マトカヴァがPGを入れて、12-13とついに逆転。そして、残る2分間を逃げ切った勝利だった。

 ウェールズは不覚の敗戦となったが、来週のおなじく不調のオーストラリアと最後の試合を戦う。ジョージは、ウェールズに初勝利したことで、ヨーロッパのティア1チームという格付けを自ら証明して見せたものとなった。

7.フランス35(4T3C3P)-17(2T2C1P)日本

 日本代表監督ジェイミー・ジョセフは、イングランド戦とこのフランス戦でRWCへ向けてのメンバーを絞り込もうとしており、ベストメンバーと思われるイングランド戦からローテーションを含めた23人のメンバーとした。

 FWでは、テビタ・タタフを20番のリザーブに下げ、姫野和樹をNO.8にし、7番FLにピーター・ラブスカスニを入れた。SHは齋藤直人が先発、流大がリザーブの21番、SOは山沢拓也がメンバー外となり、李承信が先発、22番のリザーブには中尾隼太が入った。また、13番CTBディラン・ライリーを14番WTBに移動させ、13番には中野将伍を入れた。松島幸太朗は23番のリザーブに下がった。

 フランス監督ファビアン・ガルティエは、キャプテンのSHアントワーヌ・デュポンが先週の南アフリカ戦のレッドカードで出場停止になったため、マキシム・リュクを先発させ、22番バプティスト・クロウがリザーブとなる。また、リザーブはFW6人+BK2人としており、日本をFW戦で粉砕する戦術と思われる。キャプテン代行は、7番FLシャルル・オリヴォンが務める。日本へ遠征したときのメンバーから大幅に代わっており、選手選考云々ではなく、確実に13連勝を狙ってきている。

 試合開始から後半までは雨の悪コンディション。さらに一部の芝の状態が最悪で、スクラムでめくれてしまう場面が見られた。今どきこんな芝のスタジアムは珍しい。

(試合経過)

1分、日本がキックオフレシーブ後のラックから、NO.8姫野和樹が大きく前進。その後の右中間ゴール前ラックで、4番LOワーナー・ディアンズがノッコンしてしまい、先制点のチャンスをつぶす。
8分、フランスが、SOロメイン・ヌタマックの左中間インゴールへ向けたゴロパントを14番WTBダミアン・プノーが押さえ、TMOの結果トライ。FBトマス・ラモスのコンバージョン失敗で、5-0。
11分、フランスFBラモスがPG、8-0。
15分、ラモスがPG、11-0。
19分、日本SO李承信がPG、11-3。

24分、日本が、フランスのミスにつけ込んだ後、SH齊藤直人が右タッチライン際からインゴールへゴロパント。1番PR稲垣啓太が追いかけたが、届かず。これがBKの選手だったら間に合ったと思われる惜しいプレー。
29分、フランスが、左40mラインアウトからのモールで、SHマキシム・リュクがブラインドサイドの日本側ディフェンスがいないところ抜け、サポートした7番FLシャルル・オリヴォンが左中間にトライ。ラモスのコンバージョン成功で、21-3。日本のSH齊藤がノミネートミスをしなければ防げたトライ。

前半、フランス21(2T1C3P)-3(1P)日本。フランスがPGで刻んだおかけで、日本は17点差で済んだが、トライを取りにきていればもっと開いていたくらい、全体ではフランスが優勢。日本は、せっかくのアタックチャンスを得た際に、SH齊藤の選択する攻める方向及びパススピードが遅く、チャンスを生かしきれない。この辺りは、テストマッチの経験値の差が出ているのだろう。

41分、日本が、右中間40mラックから、SH齊藤からのパスを後ろから入ってきて受けた13番CTB中野将伍が抜け、サポートしたSH齊藤が左中間にトライ。SO李のコンバージョン成功で、21-10。この辺りまでのプレーでは、フランスSOヌタマックの調子がいまひとつだったが、その後出血により交代。
59分、フランスが、右タッチライン際でショートパントしたのを、日本FB山中亮平が処理できず、これをつながれて14番WTBプノーが左スミにトライ。ラモスのコンバージョン成功で、28-10。

62分、日本が、左ゴール前5mラインアウトからサインプレー。21番SH流大→HO坂手淳史→内から入ってきた11番WTBシオサイタ・フィフィタと綺麗につないで左中間にトライ。李のコンバージョン成功で、28-17。日本代表コーチのトニー・ブラウンが考案した良いサインプレーの成果となった。
65分、フランスが、左ラインアウトからつないで、最後は12番CTBジョナサン・ダンティーがタッチフラッグぎりぎりのインゴール右スミにタッチダウンする。TMOとなり、タッチに出ているとしてノートライ。日本13番CTB中野のトライセービングタックル。
72分、フランスが、左中間10mラックから右を攻め、6番FLアンソニー・ジェロンチが右中間にトライ。ラモスのコンバージョン成功で、35-17。

後半、フランス14(2T2C)-14(2T2C)日本。
合計、フランス35(4T3C3P)-17(2T2C1P)日本。

 日本は後半14対14の競った良いゲームをできたが、前半のスクラムを中心にした劣勢が響いて、今秋頻発した歴史的勝利の一員にはなれなかった。ただし、手も足も出ないという印象はなく、また歴史的に日本はフランスと相性が良いように思えるので、次につながる敗戦になったと思う。

 13連勝となったフランスは、大黒柱のSHアントワーヌ・デュポン不在だと、チーム力がかなり落ちることが良くわかったゲームだった。今回は日本相手だから勝てたが、イングランド、アイルランド、ウェールズ、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチン、オールブラックスのいずれかとの対戦であれば、負けた可能性があったと思う。

8.明治13(1T1C2P)-29(4T3C1P)帝京

 もしかしたら、大学選手権決勝の前哨戦かも知れない。次回は決勝で再戦したい。

 明治OB(非ラグビー部)として、「明治がスクラム押されたら、もう、だめでしょ?」と痛恨したゲーム。それがこのゲームの全てだと思う。

 80分間のゲーム全体を帝京が支配し、明治がアタックチャンスを得ても、鉄壁のディフェンスでトライできない。明治がトライできたのは、インターセプトのみという情けなさ。帝京は、インターセプトトライやPKからの速攻(明治のボーンヘッド)もあったが、他の2トライは力勝負で取ったもの。明治に勝ち目はまったくなかった。また、明治が負けていたスクラムも、後半に一時修正したかに見えたが、最後には半端なものに終わっていた。明治コーチ陣は、大学選手権でのリベンジに向けて、これからスクラムの大反省会でしょう。

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