見出し画像

<ラグビー>女子RWC準決勝、ウェールズ対オールブラックス、アイルランド対南アフリカ、フランス対オーストラリア、スコットランド対フィジー、イングランド対アルゼンチン、RWC2023最終予選、アイルランドA対オールブラックスXV、そして明慶及び帝早戦の結果から

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

(そして、今回はかなり盛沢山です。おかげで土・日・月は、フルでPCに向かっています!)


 先日、区の防災訓練に参加しようとして、朝一番に行ったら誰もいなかった。日曜日ということもあり、犬の散歩や家族で子供のスポーツに向かう人の姿は多数見かけたが、防災訓練に真面目に参加する人は、少なくとも朝の早い時間帯には誰もいなかった。結局、私も一人では恥ずかしいので参加しなかったが。


 その後文化の日(明治天皇生誕祝日)に、自宅マンションの防災訓練があった。来年は管理組合役員になること、また10年間海外勤務で不在だったことの穴埋めもあって夫婦で参加した。区からの防災用品配布もあり、休日の午前中ながら幼児を連れた家族連れが多く参加していた。なお、マンション管理組合といっても、管理会社が運営するので役員の仕事はあまりないのだが、ここでも管理会社の人たちが訓練を会社の仕事として担当していた。また、若い住民数人が防災要員グループを作っていて頑張っていた。これでは、私のような老体が出る幕は少なそうだ。


 そうは言っても、「もしも」というときには、私がベアー・グリリス(元英国海兵隊員でエベレスト登頂歴を持ち、TVのサバイバル番組で人気)のサバイバル方法を見て学んだ知識を生かしたいと思っている。少なくともグリリス監修の火打石はあるし、ヨルダンで買ったアラブの守り刀(鞘の先が曲がっているやつ)がある。生活に必要な水(と魚)は近くの運河から取り放題(そのためのホースとバケツを常備したし、釣り竿もある)。できれば簡易浄水器が欲しい。


 東京湾に近い運河では大きなスズキを釣る人が多数いるし、大きな公園(トイレ、水場、屋根付きのベンチ、沢山の薪になる樹木と落葉、広い芝地)が近所にあるので、なんとか生き残れるでしょう。もちろん、停電・断水・騒擾事案・戒厳令などは、バングラデシュ、インド、マレーシア、ヨルダンで多数経験済みなので、(身体の調子はわかりませんが)心の準備はいつでもOKです(笑)。


1.女子RWC準決勝

(1)カナダ19(3T2C)-26(3T1C3P)イングランド

 イングランドはオーストラリア・ワラルーズに準々決勝で圧勝して、連勝記録を29に伸ばした。カナダは、プールマッチの再戦となるアメリカを準々決勝で一蹴し、調子を上げているように見える。

 試合は、予想通りにイングランドが2トライを先行するが、その後カナダも2トライを返す。イングランドは、かろうじて前半最後にPGを入れて、15-12で折り返した。後半は、イングランドがPGとトライで、23-12とリードした。しかし、54分に、チーム反則の繰り返しでシンビンとなり、カナダにチャンスを許す。ところが、カナダがこのPKからのゴール前ラインアウトでノットストレートをして、自滅してしまう。

 それでも10分間の数的優位を経た68分、ようやくカナダがアタックを実らせるトライを挙げて、19-23と4点差に迫る。その後は一進一退が続くが、イングランドは手堅く71分にPGを決めて、26-19と7点差にし、トライだけでは逆転できない点差にした。カナダは最後の猛攻を繰り返し、79分に22m内でラインアウトのチャンスを得るが、またしてもノットストレートのミスを犯して、自滅。そのままイングランドが逃げ切った。

 イングランドは、13番CTBエミリー・スカラットのゴールキックをはじめ、50分に自陣ゴール前のターンオーバーからつないだ14番WTBアビー・ダウのトライなど、カナダの武骨なFW一辺倒のラグビーと比較して、総合的なラグビー力で連勝を30に伸ばし、決勝に進んだ。MOMは、イングランド4番LOゾー・アルドクロフト。

 ラグビー偏差値は決して高くないラグビーながら、FWとフィジカルの強さで準決勝まで進んだカナダも、最後は自滅するような形で力尽きた。来週は3位決定戦に臨むが、準決勝のイングランド戦で力を使い果たした感が強い。

(2)NZブラックファーンズ25(3T2C2P)-24(3T3C1P)フランス

 ブラックファーンズは、プールマッチ初戦のオーストラリア・ワラルーズ戦の入りで苦戦したものの、それ以外は準々決勝まで順調に来ている他、トライの山を築く圧勝だ。しかし、この準決勝のフランスには、昨シーズン末のヨーロッパ遠征を含めて4連敗しているので、今回はそのリベンジマッチとなる。

 フランスは、プールマッチでイングランドに負けたものの残りは全勝し、準々決勝もイタリア相手に危なげない勝利を挙げている。イングランド同様にフィジカルを前面に押し出すチームなので、ブラックファーンズとしては手強い相手になる。また、フランスはブラックファーンズに連勝しているという自信を持っている。

 実に心臓に悪いゲームだった。フランスは、7分にSOキャロライン・ドルアンのPGで先行したあと、23分にNO.8ロマネ・メナジェールがトライし、ドルアンのコンバージョン成功で、0-10と引き離す。ブラックファーンズは、27分に、フランス12番CTBガブリエラ・ヴェルニエールの14番WTBルビー・ツイへのリフトタックルが、TMOの結果シンビンは避けられたものの、ここからPKを得て攻撃を繰り返すが、いずれもインゴールでヘルドアップとなり、トライを取りきれない。そして、29分にFBレニー・ホームズのPGで3点をようやく返す。

 これで調子の出てきたブラックファーンズは、35分に、13番CTBステイシー・フルーラーがトライし、ホームズのコンバージョン成功で、10-10にスコアを戻した。ところが、この日のブラックファーンズは、アタック途中のブレイクダウンでターンオーバーされる場面が多く、トライを取りきれないばかりかフランスに逆襲されてしまう展開が続く。ついに40分、フランス12番CTBヴェルニエールにトライをされ、ドルアンのコンバージョン成功で、10-17とリードされて前半を終える。

 ブラックファーンズは、後半に入ると優勢なスクラムを起点にして攻撃を繰り返し、44分に14番WTBツイがトライを挙げるが、ホームズのコンバージョンは失敗して、15-17と2点差に迫る。さらに49分、PGのチャンスが訪れるが、急に調子を崩したホームズがこれを外してしまう。しかし57分、12番CTBテレーサ・フィッツパトリックがトライ、キッカーを交代したSOルアヘイ・デマントがコンバージョンを決めて、22-17とようやく逆転した。

 続く63分、ブラックファーンズはSOデマントがPGを決め、25-17とリードを8点差に拡げた。しかし65分、ブレイクダウンでのターンオーバーからフランスに反撃され、NO.8メナジェールに2つ目のトライを許し、ドルアンのコンバージョン成功で、25-24と一点差に迫られてしまう。

 緊迫した時間が続いた70分、フランス19番LOサフィ・ヌディアエがブラックファーンズ18番PRサント・タウマタにハイタックルして、TMOの結果シンビンになり、15人対14人の数的優位を得たブラックファーンズが、残り時間を考慮すれば、勝利に大きく近づいたかに思われた。ところが、シンビンの相手だったタウマタが、79分にフランスHOアジャテ・ソシャットにハイタックル(ビデオを見る限り、ナイスタックルにしか見えないが・・・)して、TMOの結果シンビンになっただけでなく、フランスSOドルアンに正面30mのPGのチャンスを与えてしまう。

 これで万事休すと思いきや、ドルアンがPGを左に外してしまい、その後ブラックファーンズがボールをキープし、綱渡りの勝利を得ることができた。この結果ブラックファーンズは、昨シーズンに負けているイングランドとの決勝に進むことになった。MOMは、ブラックファーンズ7番FLサラ・ヒリニ。プレーのポイント毎でラグビー偏差値の高い好プレーを連発していた。

 昨シーズンに負けているフランス相手とはいえ、ブレイクダウンでターンオーバーを連発されたことや、最後にPGで逆転負けする可能性があったことから、ブラックファーンズとしては決勝のイングランド戦に向けて、多くの不安を抱える結果となった。

 一方のフランスは、あと少しで勝利を逃してしまったが、3位決定戦のカナダ相手に勝利を得られることが期待される、内容のある良いゲームをしていた。

ビデオハイライトのある公式ウェブサイト


2.ウェールズ23-55オールブラックス


 オールブラックスは、日本遠征で怪我をしたHOダン・コールズ(ふくらはぎ)とFLサム・ケーン(鎖骨骨折の他に顔面二ヶ所も軽微な骨折)をNZに帰国させた。また、めまいが治っていないWTBウィル・ジョーダンは、年内はNZに残って休養させることとなった。コールズの代わりには、アサフォ・アウムアを既にオールブラックスXVから呼び寄せており、ケーンの代わりとして、同じくオールブラックスXVからビリー・ハーモンを招集している。なお、キャプテン代行は、予想通りにLOサムエル・ホワイトロックが指名された。また、彼をサポートするバイスキャプテンとして、FL/NO.8アーディ・サヴェア、SO/FBボーデン・バレットがそれぞれ指名されている。

 一方、LOのスコット・バレット及びサムエル・ホワイトロックの代わりとして、オールブラックスXVから招集されたパトリック・ツイプロツは、スコット及びホワイトロックが戻ってきたことから、元のオールブラックスXVに戻りキャプテンを担う。また、日本戦に先発したCTBロジャー・ツイヴァサシェックとブライドン・エンノーは、オールブラックスXVに移動した。

 日本戦でレッドカードになったLOブロディー・レタリックは、火曜に裁定委員会が開かれ、レッドカードから自動的に算定される6試合の出場停止処分が、本人の違反歴の少なさ等を考慮した結果、2試合のみの出場停止となった。そのため、このウェールズ戦及び来週のスコットランド戦はプレーできないが、今年最後かつ最も手強い相手となるイングランドとのゲームではプレーできることとなった。

 BKでは、WTBレスター・ファインガアヌクがスコッドに戻ったため、一時的に招集されたダミアン・マッケンジーがオールブラックスXVに戻った。同チームではSOまたはFBを担うだろう。

 金曜日、オールブラックス監督イアン・フォスター、アシスタントコーチのジョー・シュミットとジェイソン・ライアンは、ウェールズ戦の23人のメンバーを発表した。日本戦で調子のでなかったフィンレイ・クリスティーがメンバー外となり、アーロン・スミスがSHで113試合目をプレーする。これはオールブラックスのBKでは、ダニエル・カーターを越える最多記録となる。リザーブには、オールブラックスXVから招集されたブラッド・ウェバーが入っている。また、18番PRオファ・トゥンガファシは50キャップを迎える。

 ウェールズのNZ人監督ウェイン・ピヴァクは、新型コロナウイルスのため中止となった2020年のNZ遠征で得られる貴重な経験を、この試合で取り返したいと願っている。また、複数のメディアの分析では、オールブラックスはイングランド戦をメインに考えているので、スコットランド戦やこのウェールズ戦は、心理的な隙が生じやすい機会だと見ている。

 23人のメンバーで注目されるのは、初キャップとなる11番WTBリオ・ダイヤーで、トライを取れる選手と期待されている。怪我で欠場していた2番HOケン・オウウェンス、6番FLジャスティン・トゥプリック(キャプテンそして7番から移動)、FBリー・ハーフペニーがそれぞれ復帰した。SOは先発にNZ人のガレス・アンスコム、22番はリーズ・プリーストランドとなっており、かつての「SOの製造工場」と謡われたウェールズでもSOは人材難となっている。

 このゲームでレフェリーを務めるイングランド人のウェイン・バーンズは、2007年RWC準々決勝でフランスの明らかなスローフォワードを見逃すことで、オールブラックスに屈辱的な敗戦を強いたことで有名なレフェリーだが、その後は世界トップのレフェリーとして活躍し、この試合で100キャップを得る。これを記念して、1905年にウェールズ3-0オールブラックスのゲームで使った歴史的な笛を使用する。

 1905年のゲームは、当時27歳と若くレフェリー歴が2年しかないスコットランド人レフェリー(オールブラックスがウェールズ人レフェリーを拒否したため)のジョン・デュワー・ダラス(同時に代表でもプレーもしていて、2年後にはスコットランド代表としてイングランド戦でトライを記録している)が、後半にオールブラックスWTBロバート・G・ディーンズがタッチダウンしたときに、なぜか遠くにいたためトライを認定しなかった「幻のトライ」で有名な試合だ。

 この「幻のトライ」は、ウェールズ13番CTBリーズ・T・ゲイブが最後にディーンズにタックルしたのだが、このときディーンズはゴールラインの内側6インチ(約15cm)にタッチダウンした。そこでレフェリーのトライ宣告を待たずに、ボールを離して立ち上がった。その後、ディーンズにラストパスをしたオールブラックス14番WTBウィリアム・J・ワレスの証言では、ウェールズSHリチャード(ディッキー)・M・オウウェンがボールを取り上げてゴールラインの外側に置き直したのを見ている。ワレスは、近くでプレーを見ていなかったレフェリーにトライをアピールしたが、まったく認められなかったという。

 後年、ウェールズ11番WTBエドワード(テディまたはエディ)・モーガンは、ディーンズがトライをしていたと証言したが、後の祭りとなってしまった。なおゲームは、ディーンズのトライが認められなかった後も、オールブラックスが再びインゴールに入ったものの、レフェリーにスローフォワードと認定されてしまい、最後まで得点(トライ)を取れずに終わった。それまで不敗記録を続けていたオールブラックスが、歴史的な記録を止められる因縁のゲームとなっている。


 試合当日、直前にウェールズFBリー・ハーフペニーが怪我で欠場し、SOガレス・アンスコムがFBに下がり、SOには22番のリザーブだったリーズ・プリーストランドが入り、22番にはサム・コステロウが入るメンバー変更があった。

(以下試合経過)

3分、オールブラックス10番SOリッチー・モウンガがPG、0-3。
10分、オールブラックスが、NO.8アーディ・サヴェアの自陣ラックのターンオーバーから攻め、7番FLダルトン・パパリイが大きく前進。最後は、右中間ゴール前ラックから左を攻め、2番HOコーディ・テイラーが右中間にトライ。モウンガのコンバージョン成功で、0-10。
19分、オールブラックスが、ポスト左ゴール前ラックから左を攻め、HOテイラーがポスト左に2つ目のトライ。モウンガのコンバージョン成功で、0-17。


25分、ウェールズが、左ゴール前5mラインアウトから右展開。ブラインドサイドから走りこんできた11番WTBリオ・ディア―が右中間にトライ。FBガレス・アンスコムのコンバージョン成功で、7-17。
31分、アンスコムがPG、10-17。
34分、オールブラックスが、左中間ゴール前5mラックからSOモウンガが右へキックパス。これを右スミで取った12番CTBジョルディ・バレットが右スミにトライ。モウンガのコンバージョン失敗で、10-22。
41分、アンスコムがPG、13-22。

前半、ウェールズ13(1T1C2P)-オールブラックス22(3T2C1P)

45分、アンスコムがPG、16-22。
47分、オールブラックスが、左中間25mラックから右へ攻め、SHアーロン・スミスがパスダミーで抜け、そのまま走りきってポスト左にトライ。モウンガのコンバージョン成功で、16-29。
50分、ウェールズが、左中間ゴール前15mラックからSHトモス・ウィリアムスがキック。競り合ってこぼれたボールを6番FLジャスティン・テュプリックがインゴールで押さえる。TMOでノッコンの有無が確認されるが、トライ。アンスコムのコンバージョン成功で、23-29。
53分、オールブラックスが、中央ゴール前10mラックから左を攻め、NO.8アーディ・サヴェアがパスダミーで抜け、サポートしたSHスミスが左中間に2つ目のトライ。モウンガのコンバージョン成功で、23-36。

65分、オールブラックスが、右中間ゴール前ラックから右へピックアンドゴーで攻め、NO.8サヴェアが右中間にトライ。モウンガのコンバージョン失敗で、23-41。
67分、オールブラックスは、自陣でFBボーデン・バレットのタッチキックを、ウェールズFBアンスコムにチャージされ、そのままインゴールへ走られるが、SOモウンガがカバーディフェンスして、アンスコムをタッチに押し出す、見事なトライセービングタックル。
77分、オールブラックスが、中央ゴール前5mラックから左展開。21番SHブラッド・ウェバー→後ろから走りこんできたFBボーデン・バレット→12番CTBジョルディ・バレットで左中間に2つ目のトライ。ボーデン・バレットのコンバージョン成功で、23-48。
82分、オールブラックスが、左ゴール前5mラインアウトからモール。それがつぶれたゴール前ラックから、16番HOサミソニ・タウケイアホが持ち出して左中間にトライ。ボーデン・バレットのコンバージョン成功で、23-55。

後半、ウェールズ10(1T1C1P)-オールブラックス33(5T4C)。
合計、ウェールズ23(2T2C3P)-オールブラックス55(8T6C1P)。

 日本戦の内容から苦戦を予想されたオールブラックスだったが、終わってみればウェールズ相手に圧勝した。FWでは、NO.8アーディ・サヴェアが攻守に奮闘し、BKでは12番CTBジョルディ・バレットが大活躍した。これで、長く懸案となっていたオールブラックスの12番は、ジョルディに決まったと言っても過言ではないだろう。

  他の選手では、HOコーディ・テイラー、3番PRタイレル・ローマックス、7番FLダルトン・パパリイ、SHアーロン・スミス、SOリッチー・モウンガ、16番HOサミソニ・タウケイアホがそれぞれ勝利に貢献した。来週は、好調とは言えないスコットランド相手となるため、プレー時間の少ない選手を入れてくるかも知れない(月曜日、オールブラックスXVにSHウェバーを戻し、代わりにTJ・ペレナラを招集。また、WTBレスター・ファインガアヌクをオールブラックスXVに入れた。一方、CTBロジャー・ツイヴァサシェックとブライドン・エンノーの2人をオールブラックスに戻した)。

 ウェールズは、想像以上であったオールブラックスの力に圧倒されたが、それでも50分には6点差に迫るなど健闘していた。来週のアルゼンチン戦では、アルゼンチンがイングランドに歴史的な勝利を挙げた後なので、オールブラックス同様に手強い相手になりそうだ。


3.アイルランド19-16南アフリカ


 南アフリカは、通常より一日早くメンバーを発表するが、今回のアイルランド戦では、FBに怪我から復帰したばかりのチェスリン・コルベを先発させ、ベテランのウィリー・ルルーをリザーブにした。コルベは本来WTBの選手である他、スピードとアジリティーはある一方で高さはないので、FBに求められるハイボール処理については、かなりの不安があると思われる。またアイルランドも、コルベをターゲットにしたハイパント攻撃をしてくるだろう。

 SHはジェイデン・ヘンドリクス、SOはダミアン・ウィルムゼがそれぞれ先発するが、リザーブにSOを置いていない。もし必要な場合は、23番のルルーまたは22番のSHファフ・デクラークが担当するものと思われるが、ここにも不安が残るポジションとなっている。

 アイルランドのアンディ・ファレル(イングランド代表オウウェン・ファレルの父)監督は、現時点でWRの世界ランク1位になっていることを、南アフリカ相手に証明したいところだろう。そして、今年のRWCを花道に引退すると見られる大ベテランのSOジョニー・セクストンも、「世界ランク1位を得たアイルランドに必要なものはRWC優勝だ」と豪語している。

 23人のメンバーでは、SHコナー・マレーが100キャップを達成する一方、SOでキャプテンのジョニー・セクストンが、アイルランド歴代5位の109キャップを達成する。また、南アフリカとは2017年以来の対戦となるが、この時にプレーしていたのは、マレーとセクストンに加えて、3番PRタデュク・ファーロング、6番FLピーター・オマーニー、12番CTBロビー・ヘンショウ、17番PRキアン・ヒーリーとなっており、5年間で世代交代が進んだ結果となっている。

 試合は、最後まで拮抗した展開になった。前半は、アイルランドSOジョニー・セクストン、南アフリカはSOダミアン・ウィルムゼとFBチェスリン・コルベがPGを入れ合い、スコアは6-6で終わる。コルベはトライゲッターとばかり思っていたが、ゴールキッカーとしても優れていることを知った。また、身長がないことからハイボール処理を心配したが、無難にこなしている。

 後半は、アイルランドが7番FLジョシュ・ファンデルフリアーと11番WTBマック・ハンセンのトライでリードすれば、南アフリカは19番FLフランコ・モスタートがトライを返し、67分時点で、アイルランド16-11南アフリカの5点差となる。この後74分に、セクストンのPGで19-11として、アイルランドはほぼ勝利を確実にしたが、76分に南アフリカ14番WTBカートリー・アレンゼがトライを返し、19-16と3点差に迫られる。その後は、拮抗した中でアイルランドがリードを守り続け、どうにか逃げ切った。

 アイルランドは現在世界ランキング1位となっているが、2019年RWC優勝の南アフリカに勝利したことで、ランキング1位を証明することとなった。しかし、わずか3点差の結果が示すとおり、FW戦においては南アフリカがいつもの猛攻を見せた一方、アイルランドはいつ引退してもおかしくない大ベテランのSOセクストン頼りとなっているので、万全の勝利とは言えなかった。

 アイルランドは、来週はスコットランドに敗れたフィジーと対戦するので、負ける可能性は少ない。一方の南アフリカはフランスと対戦するので、こちらは再び激しい肉弾戦となりそうだ。


4.フランス30-29オーストラリア


 オーストラリアのNZ人監督デイヴ・レニーは、前週の辛勝したスコットランド戦の反省を生かしたゲームをしたい。23人のメンバーでは、3番PRアラン・アラアラトアが脳震盪でプレーできないため、タニエラ・ツポウを先発させ、トム・ロバートソンを18番のリザーブに入れた。また19番LOには、ヨーロッパでプレーする巨漢ウィル・スケルトンを入れている。

 BKでは、SHの先発をニック・ホワイトにし、21番のリザーブにはジェイク・ゴードンが入った。スコットランド戦で先発したテイト・マクダーモットは、メンバー外になっている。ワラビーズには、オーストラリアで待機しているライアン・ロナーガンを含めて、4人のSHがメンバー入りを争っている。一方、怪我をしていたララカイ・フォケティが12番CTBに戻り、ハンター・パイサミが22番に下がった。

 FBトム・バンクスが足首を怪我したため、ジョク・キャンベルが先発し、23番にリース・ホッジが入った。この結果、専門のSOは先発のバーナード・フォリーだけとなるが、ホッジはFBの他SOもプレー可能なので、万一の場合はホッジがSOに上がる。

 フランスのファビアン・ガルティエ監督は、怪我から復帰したSHアントワーヌ・デュポン、SOロメイン・ヌタマック、7番FLにシャルル・オリヴォンを揃えたベストメンバーで挑む。前戦となる日本とのゲームから、先発11人を変更しており、日本戦がBチームであったことを証明している。

 試合は、前半、フランスFBトーマス・ラモスとオーストラリアSOバーナード・フォリーが、互いにPGを刻む展開で進む。先にトライを取ったのはオーストラリアで、18分に12番CTBララカイ・フォケティがトライを挙げ、オーストラリアが6-13と先行する。しかしフランスは、その後ラモスの2PGで追いすがり、41分には、HOジュリアン・マルシャンのトライで19―13と逆転して、前半を終えた。

 後半に入ると、再びフォリーとラモスがPGを応酬した後の56分、オーストラリアFBジョク・キャンベルがトライを挙げ、22-23と逆転し、その後66分にフォリーのPGで、22―26と差を拡げた。しかしフランスは、73分にラモスがPGを決めて、25-26と迫り、オーストラリアも75分に、23番BKリース・ホッジが珍しく緊張するPGを入れて、25-29と4点差にする。ところが76分に、フランス14番WTBダミアン・プノーが値千金のトライを挙げて、30-29と再逆転し、そのまま逃げ切る結果となった。

 両チームとも、反省の多いゲームとなったが、辛勝したフランスは、来週は南アフリカと対戦するので、これはかなり厳しい戦いになるだろう。惜敗したオーストラリアは、来週はイタリアとの対戦なので、19日のアイルランド戦に備えたメンバー調整ができそうだ。


5.スコットランド28―12フィジー


 TV放送があったので、遅い時間だったがライブで見た。特に前半は、フィジーがいつものエンターテイメントなプレーをして楽しめたが、後半はスコットランドが確実に得点を重ねて完勝した。

 前半のスコットランドは、(スコットランドの儀礼的君主である)アン王女の観戦している前で調子が出ず、スクラムが課題であるフィジーにスクラムを押される失態もあったが、SOアダム・ヘイスティングスの良いプレーで14-12とリードした。スタンドには、アダムの父親ギャビン・ヘイスティングス(かつてのスコットランドの名FB)の姿があったが、息子のプレーを微笑しながら楽しく観戦している雰囲気だった。

 後半スコットランドはスクラムを修正し、怪我で退場したヘイスティングスに代わったSOブレア―・キングホーンが、キック中心のプレーながら手堅くリードして勝利を確実にした。フィジーは、前半もそうだったが、軽く粗っぽいプレーが多く、これで数回のトライチャンスを逃していた。NZ人の名将ヴァーン・コッターだが、このフィジーのカルチャーを変えるのは難しそうだ。

 スコットランドは、来週オールブラックスと対戦するが、かなり苦戦しそうだ。フィジーはアイルランドとの対戦となり、軽いプレーが許されない真の力試しになりそうだ。


6.イングランド29-30アルゼンチン


 イングランドのエディー・ジョーンズ監督は、イングランドの2クラブが破産状態になったことをまったく気にしていない。もともとイングランド協会とクラブ側は関係が良くないという背景がある。代表の試合でプレーした選手が怪我することをクラブ側が憂慮している一方、代表に必要な選手を自由に招集できないという軋轢が解消されていないためだ。そのため、今回のクラブ側の困窮は、代表選考にとってはむしろプラスになるという面をジョーンズ監督は意識しているように思われる。

 これまで、イングランドにとってアルゼンチンはお客さん的な相手だったが、今年アルゼンチンはオールブラックスに初めて勝った他、南アフリカやオーストラリアと互角の勝負を繰り広げており、今やティア1の強豪になっている。2015年RWCでベスト4に入って以来、順調に安定した実力を発揮している。

 イングランドは試合メンバー23人に、怪我で欠場していたマヌー・ツイランギが13番CTBで復帰し、キャプテンのオウウェン・ファレルが12番CTBに入った。10番SOは、ジョーンズが大いに期待している若いマーカス・スミスが先発し、FW6人+BK2人にしたリザーブでは、23番のヘンリー・スレードが交代SOとなる。

 1番PRエリス・ジェンジと14番WTBジャック・ノウウェルは、バイスキャプテンとしてオウウェンをサポートする。4番LOアレックス・コールズと19番LOデイヴィット・リボンズは、ともにテストマッチのデビューとなり、ジョーンズがRWCに向けて期待しているLOだ。この関係でマロ・イトジェが、本来のLOから6番FLに移動し、トム・カリーが7番FLとなっている。

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、今シーズンのザ・ラグビーチャンピオンシップで、オールブラックス、スプリングボクス、ワラビーズにそれぞれ勝利した実績を踏まえ、2006年にトウィッケナムでイングランドに25-18で勝利したゲームの再現を睨む。

 試合の23人のメンバーは、ベテランと若手を複合したものとなっているが、キャプテンの2番HOフリアン・モントーヤ、7番FLパブロ・マテーラ、11番WTBエミリアーノ・ボッフェリなど、世界トップレベルの選手を揃えた。一方リザーブの21番SHにはエリセオ・モラレス、22番SOにはトマス・アルボルノツを入れて、世代交代も考慮している。

 アルゼンチンがまたもや歴史的快挙を達成した。トウィッケナムでは、当時のイングランド監督アンディ・ロビンソン更迭の契機となる勝利を16年前に挙げて以来の、敵地での勝利となった。また、2009年から続くイングランド相手の連敗を10で止めた。来年のRWCでは同じプール(しかも、日本も同じプール)となるので、その前哨戦を制した形となった。

 試合は豪雨の中、お互いのチームが得意とするFWとHB団のみの「10人ラグビー」に徹する状況となった。その中で、アルゼンチンはディフェンスが健闘した他、スクラムを制したのが勝利につながった。

 前半、アルゼンチン11番WTBエミリアーノ・ボッフェリのPGでスタートするが、イングランドも12番CTBオウウェン・ファレルがPGを返す。そして、25分にイングランドは、巨漢11番WTBジョー・ゾカナシガがトライを挙げ、10-6とリードする。その後もボッフェリとファレルがPGを決め合い、前半は16-12とイングランドがリードして終わる。

 後半は、アルゼンチンが、11番WTBボッフェリとSOサンチャゴ・カレーラスのトライで16-24と51分に逆転する。イングランドも55分に交代SH22番ジャック・ファン・プールヴィエットがトライを返し、23-24と1点差に迫る。その後は再びボッフェリとファレルがPGを決め合い、70分にボッフェリがPGを入れて29-30としたのが決勝点となった。

 アルゼンチンは、11番WTBボッフェリ、NO.8パブロ・マテーラなど多くの選手が、ザ・ラグビーチャンピオンシップでもまれてきた成果を発揮し、またチェイカ監督の好指導もあって、エディー・ジョーンズ監督が自信を持つイングランド相手に、アウェイとなるトウィッケナムで勝利したことは、この後の世界ラグビーの力関係に大きく影響することになりそうだ。

 イングランドは来週日本と対戦する。日本はオールブラックス相手に善戦しており、イングランドが「10人ラグビー」を仕掛けてきた場合の対応も十分だ。元日本代表監督であるジョーンズ監督は、なんとしても日本には負けられないプライドがあるので、いつものBチームではなく、Aチームを揃えてくると思われる。良い試合になって欲しい。

 アルゼンチンは、チェイカ監督を迎えた結果を次々と出している。そして、RWCでは誰もが認める実力ある存在になってきた。来週はウェールズと対戦し、19日にはスコットランドと対戦するが、ここでも勝利を得ることができれば、世界トップチームの仲間入りをすることになる。


7.RWC2023最終予選


 来年フランスで開催される第10回RWCに参加する、最後の1チームを決める敗者復活戦が、ドバイで3週にわたって開催される。出場権を争うのは、アメリカ、ケニヤ、ポルトガル、香港の4チームで、総当り戦を行って勝者を決める。これまでの実績からは、アメリカが最有力と思われるが、ポルトガルも実力を付けているので侮れない。

6日に行われた最初の2試合の結果は以下のとおり。

アメリカ68(10T9C)-14(2T2C)ケニヤ

 前半は、アメリカ19-0ケニヤ。アメリカはHOディラン・ファウシットと14番WTBクリスチャン・デイヤーが、それぞれハットトリックを記録した。

ポルトガル42(6T6C)-24(2T2C)香港

 前半は、ポルトガル21-7香港。ポルトガル11番WTBラファエレ・ストルティが2トライを記録している。

 これで、RWC出場を得られるのは、ほぼアメリカとポルトガルの2チームに絞られた。そしてこの2チームは、18日に直接対戦するので、ここで敗者復活戦出場チームが決まるだろう。


8.アイルランドA19-47オールブラックスXV


 オールブラックスXVのレオン・マクドナルド監督は、アイルランドAとアウェイで対戦するメンバー23人を発表した。PRロス、LOツイプロツ、FLジェイコブソン、SHペレナラ、SOマッケンジーとリザーブのイオアネ、CTBツイヴァサシェックとエンノーの8人の前及び現オールブラックスを含んでいる。

 アイダン・ロス、ブロディー・マカリスター、テヴィタ・マフィレオ、ジョシュ・ディクソン、パトリック・ツイプロツ(キャプテン)、ドミニク・ガーディナー、ルーク・ジェイコブソン、マリーノ・ミカエレツウ、TJ・ペレナラ(バイスキャプテン)、ダミアン・マッケンジー、AJ・ラム、ロジャー・ツイヴァサシェック、ブライドン・エンノー、ショーン・スティーヴンソン、ルーベン・ラヴ。(リザーブ)タイロン・トンプソン、フィンレイ・ブルイズ、タマイティ・ウィリアムス、ザック・ギャラハー、クリスチャン・リオウィリー、カム・ロイガード、ジョシュ・イオアネ、アレックス・ナンキヴェル。

 また、怪我人などにより、HOアンドリュウ・マカリオとFLトム・クリスティーを追加招集している。今年6月、NZに遠征したアイルランドは、実質アイルランドAとしてマオリオールブラックスと2回対戦しており、第1戦はマオリ24-30アイルランド、第2戦はマオリ32-17アイルランドだった。

 一方のアイルランドAは、純然たるBチーム主体のメンバーとなっている。その中で代表チームでもトライゲッターとして活躍しているWTBジェイコブ・ストックデールのプレーぶりが注目される。

 試合は、試合開始早々のオールブラックスXVの10番SOダミアン・マッケンジーからのキックパスを取った、14番WTBショーン・スティーヴンソンのトライを皮切りに、スティーヴンソンの2トライ、2番HOブロディー・マカリスター、15番FBルーベン・ラヴ、13番CTBブライドン・エンノー、11番WTBのAJ・ラム、そしてマッケンジーらが、計7トライを挙げ、この日大活躍のマッケンジーが6コンバージョンを決めて、圧勝した。

 オールブラックスXVのメンバーでは、アタックのパス・キック・ランで貢献したマッケンジーの他、6番FLドミニク・ガードナー、キャプテンの5番LOパトリック・ツイプロツ、14番WTBスティーヴンソン、FBラヴらが、トライにつながる起点で数々の良いプレーをしていた。ただし前半30分、7番FLルーク・ジェイコブソンが、ラックで横から入ってシンビンになったのが、キャプテンシーを期待される選手だけに惜しまれるプレーだった。

 アイルランドAは、10番SOキエラン・フラウリーが、トライと1コンバージョンを記録した他、18番PRマリー・ムーア、20番FLマックス・ディーガンにより、計3トライを挙げ、コンバージョンはフラウリーの他、22番SOジャック・クラウリーが記録した。しかし、キャップ持ち8人を含むオールブラックスXV相手に、全体的に歯が立たなかった。なお、最後のアイルランドAのトライは、ゴール前でタックル成立した後にボールをリリースせずにそのままインゴールに持ち込んでいるので、トライは認められずアイルランドAの反則になるプレーと思われる(詳しくは、以下のビデオハイライトを参照)。

ビデオハイライト(ハカをSHのTJ・ペレナラのリードで行っている)


9.明慶及び帝早戦(おまけ)


(1)明治54(8T7C)-慶應3(1P)

 テストマッチと比べれば、日本の大学生のゲームなんて、という感じですが、一応明治OBでもあるので、毎年の対抗戦として気になるわけです。また、伝統的に明治は慶應に苦戦しやすく、慶應は明治に相性が良いという傾向がある(ただし、昭和の時代の話ですが)ので、余計に心配になります。

 ゲームは、明治が最後まで得点を重ねる一方、慶應はイージーなミスが目立ち、そこをさらに明治につけ込まれて得点される展開。正直、心配するような内容ではなかったが、帝京の試合ぶりを見ると、優勝にはまだまだだと感じる。MOMは5番LO竹内慎になったが、TV解説者が絶賛しているように、13番CTB斎藤誉哉が良いランニングをしていたと思う。

 慶應は、こういうゲームをしていては23日の早稲田戦に不安が残るし、帝京には手も足も出ないのではないか。

(2)帝京49(7T7C)-早稲田17(3T1C)

 正直、ここまで差があるとは思わなかったが、想像以上に帝京は強く、早稲田が期待以上に帝京に対抗できなかった。80分を通して、その大半を帝京が攻撃を継続し、早稲田が必死に守る展開。帝京のミスをついて早稲田は3トライを挙げられたが、全て理詰めのアタックではないので、帝京としてはディフェンスの綻びを気にするものではない。

 帝京はこのまま大学選手権優勝まで勝ち上がりそうだが、二週間後の明治との対戦が、大学選手権決勝の前哨戦になりそうな気がする。早稲田は、慶應には勝ちそうだが、明治戦はわからない。ただし、早稲田が勝つには明治の慢心が前提条件になりそうだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?