髪切る人から花切る人へ?

わたしが「花×食」というコンセプトを掲げ、カフェバーを、オープンしたのは三年半ほど前のことである。

20歳で美容専門学校を卒業し、美容室で働き始めて一年経った頃、父親が脳梗塞で倒れた。

その頃美容室のお給料はものすごく安く、拘束時間も半端なく長く、時給を割り出すと300円程度だった。でも技術を学ぶために通ってるからむしろ技術学びに通うなら学費払うものだしなぁ、くらいな気持ちに切り替え、最低限のお金しか使わない生活でとくになんとも思わず暮らしていた。

とはいえ実家暮らしの中、親に甘えて暮らしていたので父親が倒れたとき、これからリハビリなどで家族がバタバタしたときに、家にいられる時間の確保が大事かもって考えると、このままここで働くより、一旦退職し、当時時給1100円くらいもらえる派遣のアルバイトをしたほうが、家にもいられる、プラス金銭面でもコスパがいい的な、、そんな判断で退職させてもらった。まあ、美容師はいつでもまた戻れるしなって気持ちで。

そして100円ショップの品出しや、結婚式場の配膳などを経験したが、その間に、ちょこちょこ友人に「髪の毛、玄関でいいから切ってー」と連絡をもらい、頻繁に玄関でカットしたり、カラーまでしたときにはキッチンのシンクで頑張って洗髪した。

そしてその時に思ったのが、いや〜どこかの部屋にシャンプー台つけられないかな。。シャンプー台ってめっちゃ便利。。。という考えだった。

その日からわたしはネットサーフィン、ひたすらヤフオクでシャンプー台を探しはじめた。が、どの部屋につける?!。。水道屋さんにみてもらう??

うーん。。困ったなぁ。

じゃあ家の庭に小さいプレハブ建てて、そこにつける?!という考えが浮かんだことからさらに考えは大きく膨らんだ。とりあえずいくらか調べてみるかな。

うーん、たくさんでてくる!意外とわたしの貯金で買えるぞー。(高校一年からの五年間温泉センターでアルバイトをしていて200万円ほど貯めていた)むしろ、このちょっとお洒落なログハウスぽいセルフビルドキットの家、いいなー。(もうプレハブじゃなくなってる)問い合わせよう。自分でどうやって建てるんだろ。トンカチかしら??

ということで次の日にはログハウスの社長さんがバイクでかっこよく現場を見に来てくれた。

「あー消防法というものがありまして、この現場ですと、全部木材だと法律上建てられないんです」

ボボボボー

バイクは去っていった。

どうやら、土地が広くないと、塀とか道路から5メートルくらい離さないとログハウスは建ててはいけないらしかった。燃えやすいから、半分以上が木材だとそうらしい。

うむ。残念。

しかしその晩、社長さんから電話がかかってきた。「うちのログハウスも都内とかみたいに家が密集してる場所で建てたいという希望も多く、半分以上珪藻土の壁にして新しい商品を開発しようと思ってたところだから、お宅、モデルハウスとして建てさせてもらって、施工費は無しで、どうですか?」

との提案だった。

えーーなんかお得っぽい!お得には目がないので、、とりあえず見積もりしてもらった。

うむうむ。これならシャンプー台ひとつと、セット面3つ(なぜか欲張った)で…

私の貯金と、、半分母親に借りて(こんな最中、借りる娘、、)まさかの、庭にログハウスを建てることに。田舎なので割と土地も広い。両親の所有している土地に、自分の城。。。出勤時間ゼロ分。今思えば相当ありがたい話だ。

そこからはもう、どれだけ安くていいものを見つけて初期費用を抑えるか、どれだけ自分の気に入ったデザインのものを収集するか。毎日ヤフオク。

かなりDIYで色々なものを制作して、そして、社長さんのご好意でかなり色々なものを無料で付けてもらい(窓いくつか、立派な梁、カウンター、、笑)

結果的に、予想よりもとても立派なログハウスが建ってしまった。

なので近所の方が、なんのお店が建つの?なにはじめるの?聞いてくるようになった。

ど、どうしよう!まだ修行して一年、まだ美容師として一人前じゃないよな。。21歳で独立?そんなつもりなかったな。。

でも、友達の髪の毛やりたくて建てたわけだし、ここでやるのは美容室。うーん、嘘つくのもなぁ、、、

ーーー「美容室はじめます」…!

きゃー。言ってしまった。やるしかない。

とりあえず友達を切ったり染めたりパーマしたり。そしてその友達、またその友達。時々新規のご近所のお客さん。またその友達。

あれよあれよと、2.3年後には数週間先まで予約がいっぱいになるようになった。この頃母に借りたお金を返済完了。振り返ると簡単なような言い方になってしまったが、当時は必死だったと思う。とにかく神経使った。「やっぱり経験浅いとうまくないじゃん」「まだ一人前じゃないのに独立なんてするから」「下手くそだった」なんてぜーーーーったいに思われたくない、という強い思いだけでどんな辛いこともこなせた。人を笑顔にしたいっていうよりも、人を満足させたいっていうよりも、自分を満足させたかった。許せない自分じゃ、生きていられない?的な完璧主義なところがあるからだ。(これは昔も今も良いほうに働くこともあれば、悪いときもある)

なので、経営としてある程度成功したのは、必然だったと思う。「お客さんの満足」が自分にとって1番の優先順位、どんなに大変でも満足させるまでは帰さない。という気持ちで仕事をしていたのだから。(ちょっと怖いね、、笑)

そして8年がたつころ、もっと先まで予約が埋まってきた頃に、結婚や出産が訪れる。なんだか断るのも苦手だし、がんばりたい気持ちが大きかったので、出産前日までカットしていた。そして産後も割とすぐに復帰した。寝不足も大変、なにやら産後ってめちゃくちゃ大変だぞ。。。という中で、仕事も育児もがんばった。でもなんか気持ちが、身体が、辛い。産後鬱というものか??

《続く》





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