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マイ・ガトー・ダミエをめぐる、ロング・ロング・ジャーニー

昨晩からアラートが出そうなくらい外では大嵐が吹き荒れている、ここフランス北部のとある街。外に一歩でも出ようもんなら、みるぅは確実に、私でさえ飛ばされてドーバー海峡を越えかねない勢いなので、今日もひきこもりとなりそうだ。

時間が有り余っているため、ここ最近、何度も匂わせ投稿をしていたマイ・クリスマスガトーのことを今日は書きたいと思う。サプライズでもなんでもなくいきなりどーんと出してしまったけれど、出来上がりはTOP画像の通り。

自分でいうのもなんだけど、往年のキムタク風に「すごくないっすか??」

ここまでたどり着くのにロンバケもびっくりなロンジャニ(ロング・ジャーニー)なので、長くなることをご承知おきのうえ、コーヒーでもビールでもワインでも焼酎のそば湯割りでもハイボールでもなんでも飲みながら読んでほしい。私もお昼寝したり休憩したりたまにワイン注入しながら、だらだらと半日かけて書くことにする。


きっかけは、ギンガムチェック

最近の私のクッキー狂の原点、ギンガムチェックのクッキーを作ったとき。
恒例の材料からの推測クイズに見事正解いただいた、お菓子上手なしずかさん

コメントで、

「チェッカーかダミエ(サン・セバスチャンとも言う)かな?」と思って、あとは材料からの推測でした〜。」

とおっしゃっていて。

ダミエって、ルイ・ヴィトンのバッグの柄しか思い浮かばないぞ?
そしてなぜサン・セバスチャン?

サンセバはスペインバスクにある美食の街。食べ飲みを愛するものにとって聖地だ。日本でいうところの野毛か。ディープすぎるか。

旅と食コーナーでそういえばまだ書いていないので、そのうち書きたいと思っている場所のひとつだ。

頭の中がはてなだらけで、気になりすぎて秒で調べた。

なんじゃこりゃあああぁ!!
心臓ぶち抜かれるんですけどー💘

上のサイトによると

「フランスとスペインの国境近くにあるバスク地方の高級リゾート地サン・セバスチャンに魅せられたフランス人が、美しい街並みの“石畳”を模して作ったことが由来とされています。」

何度か訪れたことのあるサンセバ。海も海岸線も街並みももちろん美しかったのだけど、石畳そんなに美しかったっけ?どこもヨーロッパって石畳だし、ひたすら食べ飲みすることしか頭にない食い道楽、万年花より団子なので、イマイチぴんとはこず。

ちなみにフランス語でサンセバスチャンの名で調べてもバスクチーズケーキが出てくるだけで、代わりに「Gâteau damier (ガトー・ダミエ)」では沢山レシピが出てきた。フランスではこのガトー、サンセバスチャンとは言わないようだ。

それにしても、見た目シンプルの極みなのに、切ったらチェック柄お目見えなんて、なんちゅーサプライズ!これ絶対つくってみたい!!

ただこれ、上のサイトではさらっと書いているけれど、普段作りのおやつとしてはハードルがやけに高そうだ。
こちらのクリスマスケーキの定番はやはりビュッシュ・ド・ノエルだけど、Otto氏に尋ねたら「アイスのビュッシュは好きだけど、ケーキのはクリームが多いから好きじゃない」と言っていた。

ちょうどいい、じゃあ年に一度の特別なクリスマスのデザート、今年はガトー・ダミエ。これでいこう。


形から、入る

私は何かはじめるとき、典型的な形から入る人間なのだが、いくつかレシピを見比べて研究したところ、このガトー・ダミエはスポンジ型に合わせてセルクル型が複数必要だ。厚紙を円形に切って代用する技もあるらしいが、まずコンパスがないので美しい円が描けない。

コンパスを買うか、セルクルを買うか。

セルクルのほうが圧倒的に楽ちんかつ綺麗に仕上がるのは間違いない。ただでさえすでに5つくらいサイズ違いを持ってはいたけれど、なんだかんだでこれ、料理にも使えるし、クッキー型としても活躍。いくつあっても困らないだろう。

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ちなみにセルクル、すでにこれだけある(笑)

ということで外出禁止が緩和された日に、スポンジ型およびうちにないサイズのセルクル型を探しに、パリの合羽橋に向かった。

日本のレシピは大抵直径12cmか直径15cmの小さめのスポンジ型のレシピしか載っていないのだけど、こちらでスポンジ型はミニマムで直径18cmからの展開。専門店を何店か行き来しながら直径18cmか20cmかで2時間くらい迷って、結局直径18cmのスポンジ型でいくことに決めた。

それに合わせて、均等となるようにセルクル型をシミュレーションしながら選ぶ。結局14cm、10cm、6.5cm(はうちにあるので不要)、3cmでいくことに決めた。

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スポンジケーキの型もまさにガトー・ダミエが印刷されているものを発見したのでこちらで決定。お買い物結果は、こちら。

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ちなみに右上の袋は、ケーキ用のデコレーション。以前、かなこさんの投稿で、毎年大事に使っているクリスマスケーキ用のサンタさんを拝見して、私も毎年使えるようなケーキ用のサンタさんが欲しいなと思っていた。

運良く、可愛らしいものをいつもの専門店で発見した。店員さんがひとつずつバランスを考えて入れたのであろう、袋ごとに5個くらいちょこちょこと色んなデコが入っている。袋によって同じサンタさんが2個入っていたりして、さすがおフランスな適当ぶり。

中身をよく観察してよりすぐって選んだのがこちらのセット。サンタさん掃除中なのがキュート!!

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こうして事前準備は無事終了。
あとは材料をそろえて、イブの朝を迎えるだけだ。


旅プランを立てる

プランはしっかり立てるタイプ。
ガトー・ダミエの旅プランは、こうだ。

・イブの朝、生地をつくって焼いて冷やすところまで
・午後、最大の難関、組み立て
・夜までにデコレーション。冷やして、全体写真だけとる
・クリスマス当日、義母宅に移動。移動方法はあとで考える
・昼か夜に入刀。いただく

こりゃー、時間も距離もかかるなこれ。さらに生地を作るとき、プレーン生地とココア生地を別々に焼くので、型がひとつだけでは2倍の時間がかかる。ローストビーフとカプレーゼも作る予定なんだけど大丈夫かなこれ。ひとつも失敗は許されないばかりに、緊張が走る。

参考にするレシピは、こちらに決めた。ただしスポンジは15cm型用なので、材料はすべて1.5倍にしてお料理ノートに最初書き写してから始める。

使う型とセルクルををちゃんと揃えてからとりかかろう。まずは型。

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お気づきだろうか。右上のスポンジ型。
なんと18cmの型、まさかまさかの、すでに持ってた

収納困るし、買う必要なかったじゃん・・・と自らに猛烈なツッコミを入れつつ、まあこれで一気にプレーンとココア生地を焼くことができるので時間短縮だ!これから沢山つくればいいじゃないか!


工程1、生地をつくる

まずは2つの型に、クッキングシートをしいておく。

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材料は、小麦粉、卵、バター、牛乳、砂糖、ココアパウダー、ベーキングパウダー、ラム酒、アプリコットジャム。特別なものは必要としない。これと、デコレーション用に板チョコ。

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プレーンとココアを同時に作っていくので、家にある限りのボウルを総動員して材料を計量。左の3つがプレーン用で、右の3つがココア用。

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2つの生地とも、バターと砂糖をすり混ぜる。プレーンが終わったら、ココア。
泡立て器が2つあってよかった(本当は3つあったけどひとつ私が破壊した)

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卵黄を加えて、さらに混ぜ、ラム酒も入れる。すでに腕から手首が痛い。

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粉類をふるって、ゴムベラで混ぜる。混ぜ終えたら牛乳も加える。もちろんゴムベラも2つありますよ。
それにしても粉の量が意外に多く、かなり重たい。確実に腱鞘炎決定案件だこれは。

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渾身の力を振り絞って、粉っぽさがなくなるまで混ぜた。スポンジつくるときってこんな感じだったかな・・・一抹の不安を覚えつつ、もう後戻りできないので、このままGo。

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ハンドミキサーでメレンゲを作る。もうちょっとしっかりしたメレンゲにしたかったけど、これが限界のようだった。前にケイチェルのおいたんもメレンゲ苦戦していたけれど、メレンゲってほんと繊細。

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メレンゲを半量ずつ計量して生地に入れて、絶対つぶれるけど泡をつぶさないように意識してゴムベラで混ぜ、型に入れる。

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180度に予熱しておいたオーブンで35分焼いて、真ん中に竹串を通して火が通っているか確認し、焼き上げる。トータル45分くらい焼いたかも。

思ったより膨らまなかったけれど、一応形にはなった。
このまま完全に冷やす。この時点ですでにお昼。

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工程2、組み立て

クレソンを買いにちょいと外出をすませ、次の工程、最大の難関にとりかかる。

まずはアプリコットジャムを小鍋にいれて熱して、ラム酒をとぽとぽいれてアルコール分を飛ばし、シロップっぽいものを作っておく。ここは適当でいっかなと瓶の半分くらい入れた。

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おそらくここがガトー・ダミエの最難関であろう。カットと組み立てだ。
完全に熱のとれたスポンジを取り出す。お、悪くないか?

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トップ部分の膨らんだ部分は使わないので、まず切り落とす。
あーやっぱり気泡入ってるな。。スポンジって難しいのよね。ケーキ型の元取れるようにスポンジはもうちょっと今後研究しよう。

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両方とも、2枚にしたい。高さ約3cmだから、1.5cmにずつの厚さを目指して、慎重に水平にカット。

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ちょっとガタガタだけど、大体同じっぽいものが4つできた。

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底部分の生地のほうがしっかりしてそうなので、下半分のプレーン・ココア生地を最初に組み立てていこう。

中心がぶれないように、セルクルで型取り、切り抜く。

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ココア生地も同様。

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交互に移植しまーっす!
まずは外側2周目から。

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次に中心2周目を移植したら、第一ペアのオペ完了。

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残りのペアも同様に移植する。若干厚さがガタガタしてしまっているので第1ペアより難しかったが、絶対失敗できないドクターYの必殺、崩れてもシロップで縫合の技で、フィニッシュ。

写真にうつりきらなかったけど4つの白黒ディスクが完成。考えたひとほんと天才だなこれ。

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最初に作っておいたアプリコットのシロップ的なものを刷毛で都度ぬりぬりしながら、交互に重ね合わせていく。

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最初が外周プレーンなら、次は外周ココア。
この上にも刷毛でシロップぬりぬり。

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すべて積み上げたら、土台完成!もうこの時点でかなりエネルギーを消費している。

ちょっと疲れたのでカプレーゼ用のトマトの湯むきでもすることにして、ガトーは一度冷蔵庫で冷やすことにした。

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工程3、デコレーション

今日は王道シンプルにダークチョコのガナッシュでデコレーションしよう。
いつかホワイトチョコとか抹茶チョコなんかでもやってみたい。

生クリームを火にかけて、チョコレートを溶かす。

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チョコが溶けたら、予熱でバターも。
あーもうこれすごいカロリーだな・・・。

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デコレーション用のくるくる回るやつ、昔持っていたけど実家においてきてしまったことを後悔しつつ、即席でデコ環境をボウルと網で整えた。

まずはてっぺんからチョコをぬりぬりしていく。

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側面も、まんべんなく。

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全面まんべんなくぬれたら、冷蔵庫で冷やし固める。

ちなみに、最初に切り落としたスポンジのトップ部分。
これは小さく切って冷凍しておやつにしようと思って、気づいたらダミエ柄に並べていた。もはや病気だ。
味見したらとても美味しかったので期待大である。

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小一時間後、チョコが固まったら、最後の飾り付けを。

粉砂糖で雪を降らせよう。夜更すぎに雪へと変わったやつだ。

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サンタさんたちを置いて、

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完成!!!

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サンタさん掃除中。なんと可愛いではないか。
私のクリスマスケーキの定番にしよう。

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ここまできて、それじゃあ入刀して食べよう!!と言いたいところだが、まだまだ旅は終わらない。


当日朝、大移動

寝ぼけ眼のまま、パリから200km北上の旅へ。
可愛い子には旅をさせよの、リアルジャーニーである。

ガトー・ダミエをどうやって運ぼうか。肝心の写真を撮り忘れたけど、Otto氏が所有していた直径28cmくらいの大きなケーキ型に入れて、上からアルミホイルをかけ、冷蔵バッグに入れて周りを固定して運ぶことにした。

生クリームとか使わなくてよかった。チョコが固まってくれているので、意外にスイスイ梱包することができた。

ナイス梱包のおかげで無事に200kmの旅を終え、目的に到着した。義母のお宅の冷蔵庫でしばし旅の疲れをとってもらう。

当日のお話で触れたけれど、当日の昼はお腹いっぱい牡蠣とフォアグラとチキンを頂いたので、デザートは夜に持ち越し。

夜、緊張の入刀。

3、2、1・・・・・・・うわああああああ!

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作った張本人のテンションはもちろん最高潮なのだが、周囲からも歓声があがる。といってもふたりだけだけど。

義母も、「ブラボー!ダミエじゃない!どうやって作るのこれ!?」とよいサプライズになったようだ。期待どおりの反応でうれしい。

シャンパーニュとともにいただくことにした。

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スポンジケーキの段階で美味しかったので味は心配していなかったが、これがまた大変美味しかった!そして食べているときもなんだか楽しいのがいい。

サンタさんには移動してもらって、結局3人で一度に半分がなくなった。
粉に対してバター控えめな気はするけど、控えめにいって3000kcalくらいはありそうな気もする。
よってなんだかおそろしい気もするけど、特別な日だし、いっか。

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一晩明けて、クリスマス翌日の昼のデザートにもいただいた。

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さらに、「そういえばこれもあるのよ」と、義母が用意してくれていたビュッシュのアイスがお目見えした。

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ということで、ビュッシュのアイスとともに。Oh My カロリー。

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とにもかくにも、可愛い子には旅をさせよ作戦、大成功。

最近狂ってるクッキー作りに限らず、ここ半年、ほぼ週1で甘いものを作り続けてきたわけだけれど、今年最後に集大成の出来で旅を終えることができて、感無量である。


今日のおまけ

毎日が異文化交流。
今日のお昼のデザートにみた衝撃の光景を2つ。

衝撃の、ビュッシュの上にまさかのヌテラ。もちろんOtto氏。

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ビュッシュの付け合わせにと義母が棚から取り出した、バケツサイズの収納ケースに入った手作りのゴーフレット。200枚焼いてくださったらしい。

こりゃーかなわんわ!

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みる爺もびっくりだぜ🐶


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