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フランスの”おふくろの味”って?〜ベルメール風・マドレーヌ

「おふくろの味」といえば、日本でいうと「味噌汁」とか「卵焼き」とか、「肉じゃが」とか、はたまたは「自家製の漬物」とか、おそらくそんな感じだろう。

パートナーと食生活を共にするようになると、味噌汁の味が違うだの卵焼きは甘い・甘くないだのと慣れ親しんだ味の違いによるちょっとした論争が起こるというのはよくあるエピソード。それはそれで大変そうだなあと思いつつ、共通の食文化があるからこその議論、育ってきた食文化が異なる我が家ではあまり起こらないので、面白いなあと羨ましくもある。

以前、何かのきっかけは失念したけど、Otto氏にふと尋ねたことがある。
「あーたのおふくろの味ってなに?」と。

Otto氏から開口一番で返ってきた答えが、これだ。

「マドレーヌ・ゴーフル・クレープ。食事系はグラタンとか。」

・・え?フランスってそんな感じなの?と。さすがお菓子の国だなあと感心しつつ、「さすがフランス人だね!」と言ったら「いや、私はグルマン(食いしん坊)だから甘いものがくるけど、人によって違うだろう」と返された。

バターカレーを作りながらSNSとの付き合い方を自らに問う餃子たん並に、ああ、うちの氏の言動がフランス人全てに当てはまるわけじゃもちろんないよなあ・・・とちょっと反省するのであった。

で、Otto氏のおふくろの味の話に戻る。マドレーヌである。

そもそも、おふくろ in France

フランスでは義母のことをbelle-mère(ベルメール)と呼ぶ。義理の娘のことはbelle-fille(ベルフィーユ)だ。ちなみにbelleは「美しい」という意味の形容詞、メールは「母」。かつてそのことを知らなかった時、義母に「彼女(私)はベルフィーユよ」と紹介されて、「え、他人様に紹介する時に美しい娘はないでしょう…」と本気で思った自意識過剰気味のおバカちゃんな私である。

前々から感じていたけど義母って呼ぶたびに私の脳内では故・宜保愛子氏のモノマネをする貴さんが思い浮かんでしまうので、今日くらいはベルメールと呼ぼう。


かくして、Otto氏にとっておふくろの味はママンの味、私にとってはベルメールの味ということになる。このベルメールの味を追究してみようではないか。


マドレーヌ型を探す旅に出る

私は、「引っ越しをするたびに製菓道具を新たに買っては実家に送ってを繰り返す病」なので、底取れ18cmのタルト型・マドレーヌ型・マフィン型あたりはおそらく3つか4つくらい実家の屋根裏に眠っているはずだ。

そして今回も案の定、荷物はなるべく少なくと思って渡仏したため、型類は持ってきていないわけで。Robotとか絞り出し袋業務用100枚入りとか謎の道具持ちなOtto氏も、マドレーヌ型は持っていない。これはパリの合羽橋(料理道具街)で仕入れなくてはと思いつつ、サブレやガトー・ダミエ、マカロンなど他のものがマイブームだったのでいつも後回しになっていた。

カフェ・レストランのテラスと文化施設と商業施設がオープンした今週の水曜、早速相棒の俺を引き連れてパリの合羽橋に向かう。

レ・アールの大きな商業施設(Forum des Halles)もようやくオープン。

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フランスでも人気なMUJI。

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天気は晴れたり通り雨が降ったりと不安定。

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雨が降ったりやんだり。水も滴るいいオトコとは俺のことをいう。

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いいオトコには友達も寄ってくる。否、俺から尻尾を振って寄っていくというほうが正しい。

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さてお買い物。問屋感漂うとあるお店には、天井までぎっしりとセルクル型が陳列。

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別のお店にて。パスタ関連コーナーにくるとPATA師匠を思い起こす病。

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パスタマシーン、これくらいならいつか手が出せるかな。まあ私がつくりたいのは中華麺なのだけど。

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こっちは3万円近くする。

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一風堂もテラスをオープン。ラーメンはフランスでも市民権を獲得しつつある。

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我が家の小さめのオーブンにも入りきりそうな型をようやく見つけた。
INOXなのでちょっとお高めだけど、これは投資ということで。

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テラスで賑わうパリの街を横目に、ルンルンを買っておうちに帰ろう。


ルセットを決める

さて、どのルセット(レシピ)で作ろうか。
在宅だったOtto氏に言われた。

「マドレーヌのルセット?あれがあるじゃないか!」

そうだ私としたことがすっかり忘れてた!

先日北でマロワールのタルトを作ったときに使った、ベルメール愛用の年季が入った家庭料理の本。

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私があまりに興味を示すので、こっそりベルメールがAmazonで見つけて買ってプレゼントしてくれた。なんとありがたや。

こちらが現代版。
中身は写真がゼロになっただけでほぼ変わってないことは比較済み。

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ベルメールの料理はほぼこの本に書かれているルセットに則っていると言っていたので、これで作ればOtto氏のおふくろの味に近づけるのではないか??
淡い期待をもちながらスタート。


レッツ・マドレーヌ

こちらの本に載っているルセット、一応エルメとかコンティチーニとかトップパティシエールのルセットも見たけど、それらに比べたらめちゃくちゃシンプルである。

シンプルこそ素材なのかと思い、キモとなるバターはちょいと奮発してエシレといこう。

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ちなみにエシレ以外にも美味しいバターはたくさんあるけれど、わかりやすく知名度でアピールする作戦である。何アピールだよ。


全ての材料はこちら。卵、砂糖、薄力粉、バター、ベーキングパウダー、バニラパウダー。クレープ同様、最低1時間、できたら一晩寝かせるとよいとあるので、夕食前に生地を作って翌朝焼き上げる計画。

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工程も至極シンプルである。
まずは卵と砂糖をハンドミキサーでムース状になるまで泡立てる。

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薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるったものを加えてさらに混ぜる。

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湯せんして生ぬるくなるまで置いておいたバターを加えてさらに混ぜたら、ラップをかけて冷蔵庫でおやすみタイム。

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深夜1時のマドレーヌ工房

この後フレンチな創作晩ごはんを作って食べてnoteを書いたりなんだりしていたんだけれども、突如wifiがなくなったので、震えを止めるためにフライングして夜中に焼いてしまうことにした。

震えていたので写真を撮るのさえ失念。新入りのマドレーヌ型に刷毛でバターを塗って薄力粉をはたき、生地をのせていく。

200度のオーブンで10分から15分焼き上げる。
1回転目は生地をのせ過ぎた感がある。

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綺麗に焼けた。香ばしいバターの香りがたまらんぜよ。

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テーブルに並べてドヤ風を演出したら、ようやく就寝。

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さて翌朝。起床したらば、このような感じに収納されていた。

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氏いわく、「乾燥が大敵だから入れといた!美味しかった!!」とのこと。
でもこれじゃどれだけ食べたかわからないじゃん。。3つ食べたと言っていたけど、もっと減っているような・・・きっと気のせいだ。
ちなみに食べてるところを目撃できなかったので、ヌテラを塗っていたかは今回不明。


Otto氏のおふくろの味、ベルメール風・マドレーヌ。
個人的にはレモンとか入れたいしデコったりしたいしプロのルセットも試したいけど、こういうシンプルなものがなんだかんだで一番、舌の記憶に残るのかもしれない。

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昨日もつぶやいたけど、ご近所友との朝カフェでマドレーヌをお裾分け。
俺も欲しいか?

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(追記)ヌテラの件、直接本人に尋ねてみたら、やっぱり塗ってた!!

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