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魔法瓶にお汁粉入れて公園行こうよ

たべもののはなし、書き初めです!
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。

年末から長いおやすみをいただいたお正月だった。どこか遠くに行くことは例によってうちはなかったが、年末ギリギリまで家のことなど顧みずバタバタと働いていたのが嘘みたいと思えるほどには、体を休めたり家のあれこれを整えたりといったケアが出来てとてもありがたかった。

そう、ケア、であった。ご自愛ください、と私が誰かに願ってもらえることがあるならば、私はきっとこれがご自愛のアンサーだろうなと思えるような日々だったと仕事を始めた週半ばの今つくづく思う。羽を伸ばすとか、そういうやつを存分にやって養生していた。

そして、夫とほんとうによく喋った!おしゃべりな私たちは、一緒に住んでいても朝から晩まで会えなかったり1日の会話がトータル10分に満たない日々はやはりなかなか堪えるものがあり、取り返すかのようにずっと話していた。
そんな激動の師走の合間に、時間がないと出来ないことをしよう、と夫と固く決めていたことがある。それは「お汁粉を持って公園に行くこと」だった。

いま住んでいる場所に越してきて割と浅い時期に、散策がてらピクニックをしたことが今となってめちゃくちゃデカい思い出になっており、えらい楽しかったというのだ。その時はシャケのおにぎりをふたつと魔法瓶に豚汁を入れて持参したのだが、寒空の下でアチアチのスープを楽しむ非日常、あのワクワク感たるや!と懐かしく思ってくれていたらしい。
それならば今度も豚汁とおにぎりかなと思ったところ、「今年はお汁粉がいいな」とリクエストされたのだった。

お汁粉!大好きだけど、そういえば作ったことはなかった。作り方を調べると市販の缶詰茹で小豆なら簡単に作れるらしい。あぁ、人類の叡智…ありがたい、缶詰茹で小豆。
そこでカルディに立ち寄ってひと缶お迎えした。茹で小豆の缶詰を買うのは人生で初めてだった。幾つになっても初めてのことはいくらでもあるなぁと思わされる。

レシピサイトにあったように、茹で小豆を小鍋に入れたのち倍量のお水とひとつまみのお塩を加えて弱く火をつけた。そのうち、分厚いstaub鍋の蓋の向こうから、コトコトというよりもトポトポ、という感じの音が優しく聞こえてくる。きっと沈んでいた小豆がふつふつとおかゆみたいに煮えているんだろうなと思ったら途端に素晴らしいご馳走をこしらえているような気がしてきて嬉しかった。

そうしている間におもちを支度しなければと思いついた。お汁粉を魔法瓶に入れたことはなかったので工夫がいるのかなと思ったが、しかしそんな特別なものは思いつかなかったので四角いおもちにトントントンと3回包丁を入れ、サイコロくらいのミニサイズを6個錬成し魚焼きグリルに入れた。甘い小豆に焦げの風味の組み合わせはあまり得意でないため、固唾を飲んで見守る。ベスト!というタイミングで鍋の蓋を開け、ホワァと蒸気が立ち上るのを見送ったあと優しく入れて馴染ませた。お汁粉、出来上がり。
それをお玉ですくって魔法瓶に入れ、夫と連れ立って公園に行った。暖冬と言われる今冬だがその日は風が強くって、前髪が捲れ上がっておでこが丸出しになるのを笑いながら歩いた。

公園には大きな池があるので、そのほとりのベンチで水鳥の群れを見ながら食べることにした。魔法瓶の蓋を開けると、さっきおもちを入れる為に蓋を開けた時と同じようにホワァと蒸気が立ち上る。外にいるのでなおのこと、そのあったかくて甘い香りに癒された。

細かく切ったお餅が中でくっついてしまうかなと思ったが、全く問題なくて嬉しかった。割り箸で一口たべると、焦げないギリギリ程度にあったまった後、ゆっくりあったかいところにいたおもちはトロントロンになっている。甘くて粒のしっかりした小豆と絡んで、それはそれは美味しかった。隣で夫も嬉しそうに水鳥を眺めながらおもちをつついていて、なんだか不思議なほどに素敵な朝だった。

私の住む街のお正月は大体スッキリと晴れていて、白い光を浴びて昼間の景色はシュガーグレーズドみたいになる。なのでなんだかいつも、お正月の日々は風景というより情景と言いたくなるような、ちょっぴり胸がキュッとなる色合いで記憶にとどまるのだ。

この景色は永遠ではない。お汁粉は食べ終わるし、冬もいつか終わるし、水鳥たちも次の場所へと向かうだろう。全ての時間を記憶の中に留めておくことはできないが、だからこそ私たちは、流れゆく時間を美味しいとか嬉しいとかそうしたもので彩るのだと、思う。全てがやがて終わるなら、初めから何も愛さなくていいと思っていた頃もないことはないが、あらゆる始まりと終わりに挟まれた今というこの時間を、その束の間を共にしてくれる人やものたちを大切にすることの意味を、去年よりも噛み締めている。

お汁粉、大好き。
ここまで読んでくださった方がいらしたら、今という時間を下さってありがとうございます。
今年も素敵な年になりますように。

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