それでも朝は、やってくる.
朝が来なければいいと、思っていた。
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数年前、持病のアトピーが悪化した。
止めることができないくらい、体中が干ばつ状態のようだった。水分を補っても、「激落ちくん」のように意味をなさない肌。
バリア機能がなくなり、ささいな刺激でも、ものすごく痒くなってしまう。というか、何もしなくてもやけど状態で痛かった。
そして、掻くと信じられないほどに、肌はえぐられてしまう。
かさぶたをつくる機能もなく、傷口はそのまま空気にさらされる。感じたことのない、痛みだった。
よく、あの時期を耐え抜いたなぁと、思う。
人の記憶は非常に良く出来ている。詳しくは、覚えていないのだから。
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私のアトピーのサイクルは、心のストレスに比例する。
今回も、世の中が揺れるだいぶ前から、じわじわと侵され、どんどん乾燥していった。
そして極めつけに、ここ数日でヘルペスになった。久しぶりの、ヘルペス。
首に出来たので、近くの耳下腺がぷっくり腫れてしまった。昨日はひたすら寝たけど、どうにもならず、少しずつ広がっている。
病院には極力行きたくなかったが(アトピー時代に、薬だけでは対処療法で延々と続くことを痛感していたので)、やはりウイルス性とのことで、慌てて病院へ行った。
このご時世、かなり空いていた。
行きたくても自粛している人が多いのか、それとも行かなくとも案外大丈夫なのか。
様々な物事が、コロナによってふるいにかけられ、
「それは、本当に大切なこと?しなければ、ならないこと?」
と問われていると思う。
病院に行かなくとも、代替療法、自然療法はいくらでもある。
でもことさらに、炎症をともなう急性期の症状には、西洋医学(対処療法)以上のものはないだろう。
症状を抑えたその「あと」の方が、大切で。
まず、人命。
その次に、治癒や完治を。
何が原因だったか?完治するためには、再発しないようにするためには、
どうしたらいいのだろう?
自らで、自らの答えを導き出す過程が、治癒につながると思う。
でもやっぱり、病院で症状の説明を受け、お薬をもらうと。
なんだか安心してしまう自分がいた。
そしてこの時期、同じような心情を抱えている人はたくさんいるのだろうな、と思った。
お医者さんも受付の人も、薬局の人も、こうして変わらず職務を遂行されている。感染病棟など、如何な状況なのだろうか。想像しただけでも、頭が下がる思いだ。
ひとまずは、ほっとしたけれど。
昨晩は、自分の体の弱さに打ち負かされた。
なかなか完治しない肌の症状にも、急性のヘルペスにも。
なんでこんな風になってしまうのだろう。
原因はあるんだろう、自分に。でも考えすぎて、わからない。
悲しかった。苦しくて、自暴自棄になった。
このまま、心臓が止まってくれたらいいのに。
朝が、来なければいいのに。
何度も何度も、思った。
そんなことをずっと考えていると、バイクの音がした。
あ、もうこの時間だ。
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数年前も、毎日寝れなかった。かゆくて、苦しくて。
布団の中で同じように過ごす。
新聞配達のバイクの音と、そのあとに来る鳥たちのゴールデンタイム。
その2つで、時間を知らされる日々。
何度か涙を流す。でもすぐに、止まってしまう。しっかり泣くことすらできない私の心身は大丈夫なのかな、と思いつつ、どうすることもできなかった。
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でも、なんだか今朝は違っていた。
あれ、朝が来た。
朝独特の、エネルギー。
私の中で、破壊と再生が、行われたようだった。
嫌な思いも、苦しい思いも、吐き出して、天に返して。
やがて、朝が来た。
朝って、こんなにも、清々しかったっけ。
それだけが、数年前とは違っていた。
私の感覚の、問題なのかな。
私ってやっぱり、ちっぽけだ。
私のアトピーも、ヘルペスも、そんなのあってもなくても、変わらず世の中はまわる。
そんなこと、分かってても、つらい気持ちは減りもしない。
はずなのに。
朝が、綺麗なのだ。
そんなの、取るに足らないことなんじゃない?
その美しさをもって、私に訴えかけてくる。
いつか、私のアトピーが治って、つるんと綺麗な肌に戻れる日が来るのだろうか。
来なくても、いいのかもしれない。
そんなことすら、どうでもいいのかもしれない。
私は世の中に、振り回されている。
その、美しさに。
明日は、どんな、朝が来るだろう。
*monica*
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