マガジンのカバー画像

よすけの短編小説まとめ

75
書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

【短編小説】モーニングルーティン

【短編小説】モーニングルーティン

1,824文字/目安3分

 朝、目が覚めたらまずコーヒーを入れ、タバコに火をつける。
 コーヒーは何もこだわりはなく、ペットボトルのものだ。タバコはラークのマイルド。
 何をするでもなく、会社に行く前、家を出るまでの時間をただただコーヒーを啜ってタバコを吸う。とにかくボーッとする。
 これをやらないと起きた感じがしない。この少しの時間で頭がスッキリと冴えてくる。
 これを毎朝。いわゆる日課である

もっとみる
【短編小説】メルマガ

【短編小説】メルマガ

1,082文字/目安時間2分

「あのさぁ」
「んー?」
「ふと思い出したというか、ちょっと思ったんだけど」
「なに」
「俺、彼女と別れたじゃん」
「いつの話してんだよ」
「一年前くらい?」
「で、それがどうしたよ」
「俺けっこう引きずってたじゃん」
「なかなか酷かったな」
「もう俺生きる意味ないとか言って」
「言ってた」
「基本わがままだし、奢らないと怒るし。言うことがいちいち鼻につくし、待ち合

もっとみる
【短編小説】今日は家で

【短編小説】今日は家で

1,091文字/目安2分

 だいぶ日が伸びてきたものの、あたりはもう薄暗くなっていた。

 大学生活にはすっかり馴染んでいるが、一つの講義の時間が高校の時までと比べて倍くらいはあるのは時々しんどい。しかも必修科目が重なって、終わりが一番遅い日だ。そろそろ就活のこともちゃんと考えないといけない。

 なんだかやけに疲れた。キャンパスに近いアパートでよかった。今日は帰り道に弁当でも買って、家でゆっく

もっとみる
【短編小説】蛍

【短編小説】蛍

2,816文字/目安5分

 花火の音は遠く、静かな夜を微かに温め、赤、青、緑と空を照らす。
 音を立てず通るぬるい風が、あちこちで鳴く虫の声が、わたしの心をざわつかせる。

 ああ、嫌だな。

 夏は嫌いだ。夜が短いから。
 こうしてベランダでただ外を眺めているのも、夏のせい。祭り囃子も浴衣も嫌いだ。
 わたしは世界に一人、置いていかれたような気分でいる。

 待ち合わせの時間は確か午後の四時だ

もっとみる

【短編小説】旅立ちの時に

1,735文字/目安3分

 公園の隅っこにある木は、わたしがまだ小さな頃に父と植えたものだ。

 どこかから貰ってきた木なのだけれど、家の庭だとせまいから、育っていくとやがて窮屈になってしまうし、かと言ってそのまま捨てるのはあまりにも悲しい。成長すればそこそこ大きくなるこの木をどうするかすごく困ったわけだけど、幼いわたしは植えると言って聞かなかったらしい。それで、近所の公園を使った。

 公園と

もっとみる