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『写真で描写』シリーズ

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撮った写真から思いついた小説っぽい一節。想像できるような、できないような。いつかこの続きを書く。#写真で描写
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2023年1月の記事一覧

山の途中

山の途中

 暇つぶしに故郷の田舎を散策していたら、いつの間にか山道に入ってしまった。
 舗装されていた道路もすっかり土と葉だけになって、なんなら木の根でできた段差で息が切れ始めている。

 しばらくして、景色が開けた。
 眺めがいいとは言えない。見渡せるわけでもない。ただの山の途中。
 こんなところなんかあったのか。いや、あってどうなるわけでもないか。まるで意味のないことをつぶやく。風が木を揺らす音と、鳥の

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加速する

加速する

 バタバタと追われるように新年を迎えて、それからずっとバタバタしている。日が沈んで終わって、昇って始まる毎日の延長で、また一年が過ぎてしまった。

 散らかったものは散らかったまま。もやもやは晴れないまま。片づかずにいるいろいろなどうのこうのはほったらかしにしたまま。
 できないまま。見えないまま。変われないまま。今年こそは。今度こそは。明日こそは。今日こそは。くりかえし。くりかえし。

 すでに

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透明

透明

 寒いね、と笑う。
 寒い寒いって、ふたりで言いあって。

 それは寒いのがおかしいんじゃなくて。
 冷たい空気はどうでもよくて。

 きみとの時間を感じたんだよ。

休まる場所

休まる場所

 旅行が好き。

 行ったことのない場所。はじめての景色。遠くでも近くでも、暮らしから抜け出して日常を切りはなすことができる。
 おいしいものを食べて、お風呂にも入って、いつもより少しお金も使って、それまでのあれやこれやだっていったん置いておく。

 それでもさ。あれだけ楽しかったのに。あんなに帰りたくないと思ったのに。
 なんだかんだ言っても、家の布団が一番安らぐんだよな。

 明日からのいつも

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見つける

見つける

 流れる川のところで見つけたとり。

「あ、いた」なんて思ってできるだけ近づいて、カメラなんか構えちゃったりもして。だけど動くから全然うまく撮れなくてもたもたする。

 そんなことをしていると、ひんやりした風を感じて、いつの間にか川の音に心を奪われている。

 これからの予定も「まぁいいか」とほったらかしにして、しばらくの時間をここで過ごしてしまうんだ。
 何かとせかせかするから、どこかでひと息つ

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雲の切れ間に

雲の切れ間に

 やまない雨はないけれど、今降る雨がわたしにとって大事な。
 そんなふうに言ったって、雨が好きになるわけでもない。

 何もすることがなく、ただ机に突っ伏している。言葉にならない考えごとを頭の中でぐるぐるまわしながら、はやく今のこの時間が過ぎてくれればなぁなんて思うだけ思う。
 一秒一秒進むだけでなんだか疲れる。楽しいこと一つでも降ってきたらいいのになぁ。

 この空はいつまでも、この空の下を濡ら

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写真で描写『風の中』

写真で描写『風の中』

 行きたいところはだいたい行った。食べたいものも、やりたいことも。長く付き合っていればネタ切れにもなってくる。

 マンネリと言われればそうなのかもしれない。

 どこでもいい。なんでもいい。二人とも旅行は好きだけど、楽しみ方はもう決まってきている。

 何か話すでもなく、この静かな風音の中をただ歩く。横を見れば君がいる。穏やかな時間は続いている。