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ベンゾジアゼピンの減薬・断薬

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#離脱症状

ベンゾジアゼピン・コラム - 質問が多い診察室 [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 質問が多い診察室 [Free full text]

ベンゾジアゼピン減断薬を希望される患者さんは質問が多い。
彼ら或いは彼女らが確度が高い情報を求めているからである。

僕の勤務先で特別予約診察を受ける患者さんは、僕に会う以前に既に複数の医師や「有識者」から情報を得ていることが多い。「ベンゾジアゼピン減断薬を行っている」ことをネット上で標榜する複数の医師を既に受診していることも少なくない。重複受診まではしていなくても、SNSなどで精力的に情報を収集

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ベンゾジアゼピン・コラム - 精神科医の嗜みとしての減断薬 [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 精神科医の嗜みとしての減断薬 [Free full text]

僕は「アンチ・ベンゾジアゼピン」の精神科医ではない。SNSにおいてもnoteにおいてもベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)の負の側面についてしばしば言及しているが、睡眠薬・抗不安薬としてのベンゾジアゼピンの使用に絶対反対の立場ではない。使い方さえ誤らなければ、ベンゾジアゼピンは優れた治療選択肢であるとさえ思っている。

かつて(あるいは現在でも)ベンゾジアゼピンの処方は時にあまりに

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ベンゾジアゼピン・コラム - 半知半解の減断薬 (1) [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 半知半解の減断薬 (1) [Free full text]

僕の減断薬外来を受診する患者さん、医療相談を利用されるクライアントが服用している頻度が高く、そしてしばしば減薬に苦戦するベンゾジアゼピンとしてメイラックス(ロフラゼプ酸エチル)とリーゼ(クロチアゾラム)が挙げられます。
僕はこの2剤を「半知半解の減断薬」が行われやすいベンゾジアゼピンとして少し警戒しています。

メイラックスやリーゼを第一選択の抗不安薬として処方する医師は、ベンゾジアゼピンの副作用

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ベンゾジアゼピン減断薬 - 抗生物質との相互作用

ベンゾジアゼピン減断薬 - 抗生物質との相互作用

今回のお題は「抗生物質を服用するとベンゾジアゼピンの離脱症状が悪化する」。一部の当事者がネット上に拡散し、拡大再生産され続けている言説のひとつだ。風説といった方がしっくりくる。

界隈の言説が常に非科学的・反医学的であるというわけでは必ずしもない。根拠となる学説はあることが多い。
しかし科学的・医学的バックボーンを有さない人達が科学的・医学的バックボーンを有さない人達に知識を行き渡らせようとした結

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ベンゾジアゼピン・コラム - 離脱症状としての疼痛に関する備忘録 [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 離脱症状としての疼痛に関する備忘録 [Free full text]

ベンゾジアゼピン減断薬の相談や臨床において、「離脱症状としての疼痛」、時に慢性疼痛の訴えが患者さん・相談者様から聞かれることがあります。
これに関して僕が自習した内容を、本稿にまとめておこうと思います。

ベンゾジアゼピンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬 )やオピオイド(麻薬性鎮痛薬)、その他の鎮痛治療薬のように痛覚の経路に直接影響を及ぼしません。

ベンゾジアゼピンに鎮痛作用があるとすれ

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ベンゾジアゼピン・コラム - 睡眠負債と不眠症治療のジレンマ [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 睡眠負債と不眠症治療のジレンマ [Free full text]

昨今、「睡眠負債」という言葉が広く知られるようになり、睡眠時間の短さがもたらす様々な弊害についての認識が高まってきました。

確かに、十分な睡眠を取ることは、心身の健康にとって非常に重要です。しかし、不眠症などの睡眠障害に悩む患者さんーー「眠りたくても眠れない」人々にとっては、このような情報はプレッシャーにもなりえます。治療者側にもまた、短期的に結果が出る治療を志向させる圧力になりうるような気がし

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ベンゾジアゼピン減断薬シミュレーション - ゾルピデムと服用間離脱

ベンゾジアゼピン減断薬シミュレーション - ゾルピデムと服用間離脱

前書き

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。
僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、具体的な減断薬法を事例に即して述べたことは

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ベンゾジアゼピン・コラム - オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)への置換 [備忘録]

ベンゾジアゼピン・コラム - オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)への置換 [備忘録]

レンボレキサント(商品名:デエビゴ)とスボレキサント(商品名:ベルソムラ)といったオレキシン受容体拮抗薬は、耐性や依存性が生じない(とされている)新しい作用機序の睡眠薬です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存や離脱症状で苦しまれている当事者の方々からすれば「最初からこの薬を処方してくれていたら」「自分が睡眠薬を飲み始めた時代にこうした薬が発売されていたら」と思えてしまうかもしれません。

ベンゾジ

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総論01 ベンゾジアゼピン離脱症状

総論01 ベンゾジアゼピン離脱症状

ベンゾジアゼピンの離脱症状について定義しておきましょう。 

毎日服用していたベンゾジアゼピン系の睡眠薬を中止したら眠れなくなった。 

これは、必ずしも離脱症状ではありません。 

睡眠薬ですから、不眠に対して処方されていたはずです。睡眠薬は対症療法に過ぎませんから、服用を中止すれば、服用開始前と同レベルの不眠が現われます。これを離脱症状とは呼びません。 

服薬中止によって、服薬開始前よりも

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ベンゾジアゼピン減断薬 - 睡眠・覚醒リズム表 [Free full text]

ベンゾジアゼピン減断薬 - 睡眠・覚醒リズム表 [Free full text]

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減断薬を行う際、僕は患者さんに睡眠・覚醒リズム表を用いて睡眠ログを取っていただくようにしています。

漸減中に「減らしてから眠れなくなった」というフィードバックが続きステイが長くなってしまった患者さんに試しに睡眠・覚醒リズム表を付けてもらったところ「意外と眠れている」ことが判明し減薬を先に進められたケースを経験したことがそのきっかけです。
これは使ってみると非常に有用です

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ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - フルニトラゼパム(サイレース)

ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - フルニトラゼパム(サイレース)

前書き

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。
僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありま

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ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - エスタゾラム(ユーロジン)

ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - エスタゾラム(ユーロジン)

前書き

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。
僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありま

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ベンゾジアゼピン・コラム - 不確実性と科学性

ベンゾジアゼピン・コラム - 不確実性と科学性

僕の勤務先の減薬外来を受診される患者さんや、オンライン医療相談を利用して下さるクライアントの中には、過去に(多くの場合は我流で)断薬を試みたが失敗に終わった経験を持っている方々が少なくない。
そうした患者さんやクライアントと話していると、彼らが「必ず成功する断薬法」や「絶対に失敗しない薬の止め方」を所望しているように感じることがある。「絶対に~」や「~としか考えられない」は頻出フレーズだ。
断薬前

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ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)

ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)

前書き

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。
僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありま

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