Yukiya Sasaki/佐々木幸哉

元大学病院勤務の精神科医。製薬業界に転身後は中枢神経領域の新薬開発に従事しています。臨…

Yukiya Sasaki/佐々木幸哉

元大学病院勤務の精神科医。製薬業界に転身後は中枢神経領域の新薬開発に従事しています。臨床医として外来診療も継続中です。   Twitter: @YukiyaMEDICAL, Blog: http://psychopharmacology.blog.fc2.com/

マガジン

  • ベンゾジアゼピンの減薬・断薬

  • 断章 - 操作的診断基準はなぜ無力なのか

    ネット上で議論されるベンゾジアゼピン依存症・離脱症状に当てはまる基準は、操作的診断基準のゴールデンスタンダードとも言えるDSMにもちゃんと採用されています。「鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱」がそれに相当し……

  • 断章 - 難治化要因

    ベンゾジアゼピンの離脱症状が遷延化・難治化する要因について述べたnoteをまとめました。

  • 断章 - SNSが当事者に及ぼす影響

    インターネットによる情報収集がベンゾジアゼピン依存当事者の方々に及ぼす影響について述べたnoteをまとめました。

  • 断章 - 減薬リーフレット

    広く用いられているベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬の減薬法の「原法」について解説しています。減薬を開始するに当たって理想的な環境が整った場合の減薬法なので、実際の減薬は主治医とよく相談の上でご自身の体質や病状に合った方法を選んで下さい。

最近の記事

ベンゾジアゼピン・コラム - 質問が多い診察室 [Free full text]

ベンゾジアゼピン減断薬を希望される患者さんは質問が多い。 彼ら或いは彼女らが確度が高い情報を求めているからである。 僕の勤務先で特別予約診察を受ける患者さんは、僕に会う以前に既に複数の医師や「有識者」から情報を得ていることが多い。「ベンゾジアゼピン減断薬を行っている」ことをネット上で標榜する複数の医師を既に受診していることも少なくない。重複受診まではしていなくても、SNSなどで精力的に情報を収集している。 ベンゾジアゼピン減断薬を希望される患者さんを診察するには、一般の患

    • ベンゾジアゼピン・コラム - 精神科医の嗜みとしての減断薬 [Free full text]

      僕は「アンチ・ベンゾジアゼピン」の精神科医ではない。SNSにおいてもnoteにおいてもベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)の負の側面についてしばしば言及しているが、睡眠薬・抗不安薬としてのベンゾジアゼピンの使用に絶対反対の立場ではない。使い方さえ誤らなければ、ベンゾジアゼピンは優れた治療選択肢であるとさえ思っている。 かつて(あるいは現在でも)ベンゾジアゼピンの処方は時にあまりに野放図であった。ベンゾジアゼピンの不適切使用に起因する副作用や離脱症状が社会問題

      • ベンゾジアゼピン・コラム - 我らの敵を根絶やしにせよ [Free full text]

        減断薬界隈医療側エリアにおいて最近台頭が目覚ましいのは、「反ベンゾジアゼピン特務局第13課」とでも形容すべき医師たちである。 ベンゾジアゼピンの負の側面を認識していて、だからベンゾジアゼピンをいっさい使用しないという立場の医師の一群だ。比較的若い精神科医がこの派閥を構成していて、彼らの勤務先は大学病院や総合病院精神科といったアカデミックな要素が強い医療機関であることが多い。 興味深いのは、彼らがベンゾジアゼピンを処方しないからといって代わりに精神療法を行うわけではないとこ

        • ベンゾジアゼピン・コラム - 半知半解の減断薬 (2) [Free full text]

          ベンゾジアゼピン依存・離脱症状で苦しまれている当事者の中には、力価や半減期、等価換算といった、数値で表せる「何か確実なもの」に縋りがちな方々が少なからずおられるように感じている。 そのような当事者自身が、これらの「パラメータ棒」を振り回して独自理論を構築し、自助会的コミュニティの中で他の当事者を「指導」することもあるようだ。 しかしネットで得た知識と自身の体験だけをベースに、当事者が他の当事者の治療者の役割を果たすという構図はひどく危うい。コロナ禍でワクチンに関してSNS上

        ベンゾジアゼピン・コラム - 質問が多い診察室 [Free full text]

        マガジン

        • ベンゾジアゼピンの減薬・断薬
          66本
        • 断章 - 操作的診断基準はなぜ無力なのか
          4本
        • 断章 - 難治化要因
          6本
        • 断章 - SNSが当事者に及ぼす影響
          12本
        • 断章 - 減薬リーフレット
          14本
        • 段章 - 減断薬における精神療法的側面
          5本

        記事

          ベンゾジアゼピン・コラム - 半知半解の減断薬 (1) [Free full text]

          僕の減断薬外来を受診する患者さん、医療相談を利用されるクライアントが服用している頻度が高く、そしてしばしば減薬に苦戦するベンゾジアゼピンとしてメイラックス(ロフラゼプ酸エチル)とリーゼ(クロチアゾラム)が挙げられます。 僕はこの2剤を「半知半解の減断薬」が行われやすいベンゾジアゼピンとして少し警戒しています。 メイラックスやリーゼを第一選択の抗不安薬として処方する医師は、ベンゾジアゼピンの副作用や依存性について一定の知識をもっていて、その観点から、リスクが相対的に低いベンゾ

          ベンゾジアゼピン・コラム - 半知半解の減断薬 (1) [Free full text]

          ベンゾジアゼピン減断薬 - 抗生物質との相互作用

          今回のお題は「抗生物質を服用するとベンゾジアゼピンの離脱症状が悪化する」。一部の当事者がネット上に拡散し、拡大再生産され続けている言説のひとつだ。風説といった方がしっくりくる。 界隈の言説が常に非科学的・反医学的であるというわけでは必ずしもない。根拠となる学説はあることが多い。 しかし科学的・医学的バックボーンを有さない人達が科学的・医学的バックボーンを有さない人達に知識を行き渡らせようとした結果、その内容は極度にデフォルメされ、「わかりやすいが厳密な意味では正しくない」お

          ¥500〜
          割引あり

          ベンゾジアゼピン減断薬 - 抗生物質との相互作用

          ¥500〜

          ベンゾジアゼピン・コラム - 離脱症状としての疼痛に関する備忘録 [Free full text]

          ベンゾジアゼピン減断薬の相談や臨床において、「離脱症状としての疼痛」、時に慢性疼痛の訴えが患者さん・相談者様から聞かれることがあります。 これに関して僕が自習した内容を、本稿にまとめておこうと思います。 ベンゾジアゼピンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬 )やオピオイド(麻薬性鎮痛薬)、その他の鎮痛治療薬のように痛覚の経路に直接影響を及ぼしません。 ベンゾジアゼピンに鎮痛作用があるとすれば、それは抗不安作用や筋弛緩作用を介した間接的なものであろうと考えられています。

          ベンゾジアゼピン・コラム - 離脱症状としての疼痛に関する備忘録 [Free full text]

          ベンゾジアゼピン・コラム - 睡眠負債と不眠症治療のジレンマ [Free full text]

          昨今、「睡眠負債」という言葉が広く知られるようになり、睡眠時間の短さがもたらす様々な弊害についての認識が高まってきました。 確かに、十分な睡眠を取ることは、心身の健康にとって非常に重要です。しかし、不眠症などの睡眠障害に悩む患者さんーー「眠りたくても眠れない」人々にとっては、このような情報はプレッシャーにもなりえます。治療者側にもまた、短期的に結果が出る治療を志向させる圧力になりうるような気がしています。 不眠症で悩む患者さんにとって、睡眠薬を用いた薬物療法は、もっとも短

          ベンゾジアゼピン・コラム - 睡眠負債と不眠症治療のジレンマ [Free full text]

          ベンゾジアゼピン減断薬シミュレーション - ゾルピデムと服用間離脱

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、具体的な減断薬法を事例に即して述べたことはあまりありませんでした。このシミュレーションはベンゾジアゼピンの減断薬の臨床の概

          ¥1,000

          ベンゾジアゼピン減断薬シミュレーション - ゾルピデムと服用間離脱

          ¥1,000

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ジアゼパム(ホリゾン、セルシン)

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありませんでした。このリーフレットは個々の薬剤の減薬法の具体例を示すことを目的として作

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ジアゼパム(ホリゾン、セルシン)

          ベンゾジアゼピン・コラム - オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)への置換 [備忘録]

          レンボレキサント(商品名:デエビゴ)とスボレキサント(商品名:ベルソムラ)といったオレキシン受容体拮抗薬は、耐性や依存性が生じない(とされている)新しい作用機序の睡眠薬です。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存や離脱症状で苦しまれている当事者の方々からすれば「最初からこの薬を処方してくれていたら」「自分が睡眠薬を飲み始めた時代にこうした薬が発売されていたら」と思えてしまうかもしれません。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは「眠れ方」は異なりますが、オレキシン受容体拮抗薬は自然に近い

          ベンゾジアゼピン・コラム - オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)への置換 [備忘録]

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありませんでした。このリーフレットは個々の薬剤の減薬法の具体例を示すことを目的として作

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ブロチゾラム(レンドルミン)

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありませんでした。このリーフレットは個々の薬剤の減薬法の具体例を示すことを目的として作

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ブロチゾラム(レンドルミン)

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ロラゼパム(ワイパックス)

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありませんでした。このリーフレットは個々の薬剤の減薬法の具体例を示すことを目的として作

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - ロラゼパム(ワイパックス)

          ベンゾジアゼピン減断薬 - 睡眠・覚醒リズム表 [Free full text]

          ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減断薬を行う際、僕は患者さんに睡眠・覚醒リズム表を用いて睡眠ログを取っていただくようにしています。 漸減中に「減らしてから眠れなくなった」というフィードバックが続きステイが長くなってしまった患者さんに試しに睡眠・覚醒リズム表を付けてもらったところ「意外と眠れている」ことが判明し減薬を先に進められたケースを経験したことがそのきっかけです。 これは使ってみると非常に有用です。じっさい睡眠・覚醒リズム表を付けてもらうと、漸減前と後で睡眠時間や深さに大きな

          ベンゾジアゼピン減断薬 - 睡眠・覚醒リズム表 [Free full text]

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - フルニトラゼパム(サイレース)

          前書き ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)は不安や睡眠障害の治療に広く用いられている薬剤群です。長期使用により依存が生じる可能性がありますが、ベンゾジアゼピンを処方する医師の、依存や離脱症状への理解が十分ではない場合があります。 僕はこれまでベンゾジアゼピンの依存や離脱に関する一般的な情報を提供するnoteをいくつか執筆してきましたが、個別の薬剤に関して述べたことはあまりありませんでした。このリーフレットは個々の薬剤の減薬法の具体例を示すことを目的として作

          ベンゾジアゼピン減薬リーフレット - フルニトラゼパム(サイレース)