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2022年6月の記事一覧
「イワタコーヒー店」のモーニングセット@鎌倉
黒澤明監督の数ある傑作のなかでも、『天国と地獄』は誘拐事件の犯人を追う横浜の刑事たちの姿を緊張感たっぷりに描いていて、何度観ても飽きることがない。仲代達矢をはじめとする刑事たちが自分の担当部分の小さな手がかりを真摯に積み重ねていく捜査手法の描写は圧巻だ。犯人を追う山場のシーンで、江ノ電沿線の腰越あたりが舞台になっている。
関西出身でおもに東京の城北エリアで過ごしてきたせいか、江ノ電沿線にはあま
「和成豊」のフカヒレスープ@バンコク
チャイナタウンが好きだ。国内であれば横浜、神戸、長崎があって、三大中華街などどいわれてにぎわっている。横浜、神戸は規模も大きく、行かれたかたも多いだろう。月刊誌の編集部にいた若いころ、長崎の新地中華街を取材したことがある。端から端まですぐ歩けてしまうような面積で、お店の数も少ないのだが、長崎の街によくなじんでいてなんだか愛おしく感じられた。すっかりファンになり、その後もときどき旅をする。
一般
「キャプテンズバー」の軽食@香港
文藝春秋の新刊(2022年4月刊)『辮髪のシャーロック・ホームズ』を楽しく読んでいる。香港の作家が書いたもので、本家のホームズものと時代はまったく同じだが、同じなのは時代だけで、舞台はロンドンではなく植民地時代の香港、名探偵とその相棒は清朝末期の中国人だ。二人が暮らすのは荷李活道(ハリウッドロード)221の乙、事件を持ち込んでくる二人の警部(レストレードとグレグスンか)は、英国人が支配する警察で
もっとみる「白龍」のじゃじゃ麺@盛岡
これも古い話だが、30代の頃小説の出版部に在籍しており、当時人気があった盛岡在住の作家さんの担当になった。うちあわせ、新刊の本ができたときのお届け、各社の編集者が集まるような会などがあり、けっこうな頻度で盛岡に出かけた。その作家さんは、盛岡にやってきた編集者と食事に出かけて酒席をともにするのをなによりの楽しみとされていて、当方としてはそのおかげで盛岡の多くのお店を知ることができた。
いまは、ふ
「羅富記粥麺専家」の皮蚤痩肉粥@香港
香港の食事が好きで何度もくりかえし旅をしてきた。2000年前後に、当時出版業界でさかんに刊行されていた情報誌の編集部にいたころは、香港に関する旅記事や情報コラムなども作ったりした。人々が雑誌に実用情報を求めていたほぼ最後の時代にあたるだろうか。その後、特に旅の情報などの入手手段は、雪崩を打つかのように一気にウェブに移っていくことになる。
取材のときは、気心の知れたスタッフの人たちと、安くておい
「驪山」の五目焼きそば@松本
長野県の松本へは新宿から在来線の特急「あずさ」などで約2時間半だ。考えようによってはほどよい時間と距離で飛行機や新幹線とは別の旅情を楽しめるのではないかと私は思う。
松本での街歩きの楽しみの一つは井戸だ。周囲の美ヶ原、東山などの山々に降った雨や雪が、地下水系を形成し、松本の豊富できよらかな湧水の水源になるのだとか。街じゅうのいたるところに誰でも利用できる井戸が整備されていて、マイボトルを持ち歩
「元町別館牡丹園」の牛腩飯@神戸
神戸が洗練されて趣味がよく、都会的な街であるということに反対する声は多くないであろう。旧居留地といわれる歴史的な洋風建築が立ち並ぶ界隈に、大丸百貨店の神戸店がある。古い洋館をいかした見事な店舗だと思うが、神戸の人から聞いた話によれば、地元ではこの百貨店のことを「神戸大丸」と呼んでおり、「大丸神戸店」とはいわないとのことである。なるほどそうかもしれないなと思う。
その旧居留地がある港に近いエリア
「一心」のお通し@仙台
仙台市の中心部を東西に走る定禅寺通りが好きだ。広い通りがケヤキ並木となっていて、中央に歩道がある。昼も夜もこの歩道を歩くだけですがすがしい気分になる。通りに面した、複合文化施設、伊東豊雄さん設計の「せんだいメディアテーク」もいい。定禅寺通りを西に歩いていくと、開放的な西公園があり広瀬川に至る。いわずもがなだが、仙台が日本でも有数の緑あふれる「杜の都」となったのは、伊達政宗の街づくりに端を発してい
もっとみる「アサヒ」の鍋焼きうどん@松山
四国、松山の中心街の一角、狭い路地に「アサヒ」と「ことり」という2軒のうどん店が、向き合うように店を構えている。鍋焼きうどんが松山のソウルフードともいわれているのをご存知だろうか。鍋焼きうどんといっても、東京のそばのお店などのメニューにある、麺類の具オールスター全部乗せ、味つけ濃いめ、カロリー高め、土鍋でぐつぐつ煮込んでアッツアツ、風邪っぴきにはぜひどうぞ、という存在とは似て非なるものである。