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「篠田屋」の中華そば@京都

 三条京阪駅駅前、三条大橋からすぐの「篠田屋」は、ある意味では京都の外食文化を体現する一軒といえるかもしれない。
 京都の「外食」と聞けば、祇園花見小路の敷居の高い和食店や、市内各地に点在する、新進気鋭の料理人が腕を競う人気店を思い浮かべる人も多いだろう。たしかに京都には、国内の同規模の都市と比べたときに、圧倒的にレベルの高い飲食店が多いことは誰も否定できないだろう。ではなぜそのようなレベルの高さを実現するにいたったのか。
 京都の街を歩いてみると、個人商店や家内制手工業に類するような小さな会社、作業所のような佇まいの家屋が現在でも多く並んでいることにすぐに気づくことができる。このような環境で働く人々が忙しい日常に「さっと食べられる」外食を好んだことは想像に難くない。「外食」がけっして特別なことでなく、日常の時間の流れのなかで、ごく自然なものとして人々とともにある。京都で花開く数多い人気店や高級店の存在を、じつは長い歴史とともに育まれた、人々と飲食店の自然なおつきあいがささえているように思えてならない。ちなみに、京都にはおいしいコーヒーを出す喫茶店も多い。このことも同じ文脈で理解できると思う。
 さて、今回は「中華そば大」を注文した、予想に違わぬ和風だしのほっこりした味わいで、麺はやや硬め、デフォルトで大量にかけてサーブされるコショウのパンチとともに、気持ちよく完食できた。ここの店舗や内装はあくまで和風のうどん、そばで商売をしています、という風情なのであるが、お客もお店も、「中華そば」と「皿盛り」なるメニューを二枚看板と考えているように見えなくもない。皿盛りはかつカレーで、それぞれ並と大がある。京阪三条という場所がら学生の客も多く、彼、彼女たちの胃袋を満たしてきたのだろうなとも感じる。ちなみの創業は明治期とのこと。
 京都の街なかのどこにでもある、うどん、そば、中華そばなどの看板を掲げた、おそらくは個人経営の「普段づかい」のお店が好きだ。ご近所のお店や小さな会社の人々とともに、これまでもこれからも京都の味を支えてほしいと思う。このてのお店の「主力選手」(?)であるうどんについては、また別の項で。

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