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「一心」のお通し@仙台

 仙台市の中心部を東西に走る定禅寺通りが好きだ。広い通りがケヤキ並木となっていて、中央に歩道がある。昼も夜もこの歩道を歩くだけですがすがしい気分になる。通りに面した、複合文化施設、伊東豊雄さん設計の「せんだいメディアテーク」もいい。定禅寺通りを西に歩いていくと、開放的な西公園があり広瀬川に至る。いわずもがなだが、仙台が日本でも有数の緑あふれる「杜の都」となったのは、伊達政宗の街づくりに端を発している。政宗公に感謝したい。
 定禅寺通を中心に西公園や勾当台公園などなど街じゅうをステージにして、9月に行われる「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」がある。ストリートの名の通り、野外でジャズのみならずさまざまなジャンルの音楽がプレイされ、仙台の街に音楽が響き続ける2日間だ。  
 河北新報本社近くのウェスティンに泊まってみて歩いたことがある。プロ、アマ問わず、さまざまなバンドや個人がそれはそれは楽しげに演奏していて、アルコールやフードの屋台もあちこちに出ており、こちらも幸せになる2日間だったと思う。東北大学の学生を中心に編成されたビッグバンドの真剣なスウィングを聴いたときは、なぜか涙ぐんでしまった。
 さて、東北最大の繁華街、国分町から定禅寺通りを渡ってすぐのところに「一心」がある。全国的に人気の居酒屋で、宮城県の純米酒を中心に幅広い日本酒を揃えている。いつ行っても、地元の人、出張族、観光客が入り乱れて繁盛している。特筆すべきはお通しだ。レベルの高いお刺身をすこしずつ盛り付けていて、スターターとして立派な一皿となっている。加齢とともにたくさん食べられない状態となっている身としては、このお通しと、仙台名物の牛タン、それにこれも人気メニューの油揚げでもとれば、ちょうどいいひとり飲みの分量だ。
 宮城の純米酒を2合くらいはいただいて、ほろ酔い気分となって店を出るとすぐ定禅寺通りだ。ケヤキ並木に面して外の席があるカフェなどで、すこし強めのお酒をとって並木を見上げながらちびちびといただく。ストリートジャズフェスティバルが開催される9月初旬であれば夏の終わりと初秋が混ざった夜風が吹いてくる。旅はいいなあとしみじみ思う。

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