- Darwin 1859『On the Origin of Species /邦題: 種の起源』
・Dirty Paws / Of Monsters And Men
・前回からの続き:
tool 1: ✔️進化というアルゴリズム(Evolution as Algorithm)
#「進化/Evolution」のエンジンとはなんだろうか?────アルゴリズムだ
R.ドーキンスの親友で、ともに現代におけるダーウィニズムの知の先導者であるダン=デネットは、チャールズ=ダーウィンが提唱した自然界に存在する「進化」プロセスのことを、「アルゴリズム」に喩える。
この自然界に存在する「機械的なアルゴリズム」こそが俺たち生命体を (バクテリアレベルから) 生みだし、進化させてきた────これがダーウィンの主張内容だというのだ。
デネットは述べている。
デネットは、ダーウィン「進化論」の内容を以下のように現代的な言葉で述べていく。
(ダーウィンの時代には存在しなかった、進化というプロセスを喩えるのにもっといい言葉が現代には存在するのは素晴らしいことだ)
(前回も述べたように、「もっとも優れた設計」などというと、ポリコレな人々は「その表現を改めよ」と言うのだが、そのような “各方面に配慮した表現の修正” は本質的な理解を妨げてしまうのでここでは行わない。「優生学」との差異は良識があれば誰でも理解できる)
デネットは、ダーウィンが発見したこの「進化」=「自然選択」によって行われる一連のプロセスを「アルゴリズム(Evolution as Algorithm)」と呼ぶのだ。
- Dennett, 2017 『From Bacteria to Bach and Back: The Evolution of Minds / 邦題:心の進化を解明する バクテリアからバッハへ』
# コンウェイのライフゲーム:「物理」から「設計」へ
ダン=デネットは、「アルゴリズム」こそが進化を駆動するということを例証する際、数学者ジョン=コンウェイが考案した「ライフゲーム」というコンピュータプログラムを提示する。
(まずはこの動画を見て欲しい。)
コンウェイのライフゲームは、単純な図形群が、これまた単純なアルゴリズムが規則的に繰り返されることによって、次第に変化していき、ついには “予測不可能性” へと至るというものだ。
✔️ライフゲーム/Conway's Game of Life(Wikipedia)
────ここではこの「ライフゲーム」に関して詳しい説明はしない(内容に関してはDennett 2003 『Freedom Evolves/邦題: 自由は進化する』を参照)が、ただ単純な規則に従って展開されるだけの図形たちが、やがて複雑化し、生命体と同じようにさまざまな「戦略」と呼べそうなものを採用しはじめるというのは面白い。
デネットは述べている。
(Dennett 2003 『Freedom Evolves/邦題: 自由は進化する』より引用)
────ライフゲームの図形は、“ターン”を重ねるごとに、デネットが「物理レベル」と呼ぶものから「設計レベル」へと次第に移行する。
────進化のアルゴリズムが「生命体の設計」を行う上で必須の要素は、とにかく「構造(constructs)」を維持しつづけられるもの、生き残りつづけるものをつくるということだ。これを医学用語では「ホメオスタシス/Homeostasis」と呼ぶ。
そしてそのホメオスタシスを保つという “ミッション” は、静的ではなく動的に為されなくてはならない(俺たちがメシを食ってウンコを排泄することで生きる存在である限り)。
────当然それと同じことが、ライフゲームの世界でも起こりはじめる。なぜならライフゲームの世界においても、生命体を作り出した自然淘汰とおなじ、“ live or die ”の生成-テスト・アルゴリズムが(人知れず)駆動しているからだ。
・参考: Complexity versus Uncertainty: The Question of Staying Alive(J.Wagensberg 2000)
https://www.researchgate.net/publication/226247910_Complexity_versus_Uncertainty_The_Question_of_Staying_Alive
───さて、この「アルゴリズムによって自然と組み立てられるデザイン」「ライフゲーム世界において長く生きのびられるデザイン」といったアイデア(概念)をカンタンに頭に突っ込んだ上で、「進化論」の原点、ダーウィンに戻ってみよう。