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日記、エッセイのようなもの

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#詩のようなもの

片言日記

駅に着いて改札口を通る。小さな郊外の駅。多くの人は左の方に進む。左に行くとバスのロータリー、タクシー乗り場があって駅前の唯一のコンビニがある。

右に行くと駐輪場があってたくさんの自転車が置いてある。もう日が暮れてはっきりとどんな自転車が置いてあるのかは見えない。小さな無数の緑色のライトが光っている。朝には見えなくなってしまうような光り方だ。

あたりは暗い。通り過ぎる人の顔がちょうど見えないくら

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片言日記

片言日記

中くらいのマンションのような建物が目の前に見えるのだけど、それが景色の一部かと言われるとちょっと違う気がする。長くここに住んでるいるけど、このマンションのような建物が話題にあがったことがない。

僕が小学生の時も、中学生の時も、大学生の時だって変わらずそれはあったけど、思い出の背景にも何かの匂いと関連してることもない。

初めてその建物を見上げてみるとそれはやっぱりマンションだった。たぶんマンショ

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僕のPERFECT DAYS

僕のPERFECT DAYS

朝、4時半に起きる。寒いので寝巻の上に上着を羽織ってから階段を降りる。給湯器に水を入れコンセントを入れる。トイレに行き用を足してから鏡の前で寝ぐせを直す。仏壇の前に座り線香をあげて、りんを鳴らす。

水が沸騰するまでもう少し。お気に入りの雑誌を1ページだけ読む。インスタントコーヒーを作って自分の部屋に行き椅子に座る。パソコンの前で自分の時間を過ごす。

玄関で財布と鍵束をポケットにつっこみ家を出る

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「春の足音」

「春の足音」

とあるオシャレな雑誌のページをめくる。すると、余白たっぷりの真っ白な見開きのページに「春になったらしたいこと」と小さな明朝体で書かれた黒い漢字が目に入る。

そのタイトルの下には、いくつかの春になったらしたいことが、さらに少しだけ小さくなった言葉となって縦に並んでいる。

その言葉たちの横には淡い小さな風景写真。

たいしたことでもないのに、なんだかとてもオシャレなことのように思えてくる。

「ハ

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散りゆく何か。

散りゆく何か。

今年の桜は父が見たがっていた桜だった。

まだ意識があり聞き取れる言葉を話していた時、父は病床で言った。

「来年の桜も見たいなあ」と。

僕は仕事がら海外の人と話す機会がある。この時期になると定型句のように日本は今サクラの季節なんだと説明する。

すると海外の人も「そうそう日本はサクラの季節だな」と言う。たぶん色んな日本人から聞き慣れているのだろう。

この時期にアメリカに出張したことがある。国

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