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体温が宿った言葉を紡ぎたい

「他人に負けるのは恥ずかしいことではないが、昨日の自分に負けるのは恥ずかしいことだ。一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりえらくなる」
「親切にしなさい。あなたが会う人はみんな、厳しい闘いをしているのだから」
「泣きたいときは、泣いてもいいんですよ」
「一日をよいスタートで始めたいと思うなら、目覚めたときに、この一日のあいだに少なくとも一人の人に、少なくとも一つの喜びを与えてあげられないだろうかと思案することだ」
「誠実とか純粋とか優しさとか人に求めるじゃない。なのにあなた、自分はそうなろうとしないじゃない」

これらは、いつかの僕の心に(いい意味で)ドスンとのしかかった言葉です。心が揺れました。意志が強まるような、自分のあり方について考えさせられるような、そんな言葉です。

日々書くことに向き合っていると、「また同じような表現を使っているな」「誰にも刺さらないだろうな」と思いながら書くことがよくあります。どうすれば、誰かに届くような、誰かの心を動かすような言葉が書けるのか、度々考えます。少し、今の自分の考えを整理してみました。


言葉の力強さ

言葉には、パワーがあります。煮えたぎる何かがあります。心を震えさせたり、心に刺さったりもします。ときに暑苦しく、人を熱狂させます。人生の指針となります。時に複雑で迷路みたいで、人を魅惑します。温厚で優しくて人を包み込みます。力強い言葉には、体温を感じます。言葉には、複雑怪奇だけど、そういうパワーがあります。

対比して、力が感じられない言葉もあります。パワーが抜けてしまった言葉もあります。常套句として使われすぎ、言葉の重みが失われることもあります。ビジネスメールなんかで「お世話になっております」「今後ともよろしくおねがいします」のような言葉も、本当に思いや感情を言葉に乗せたのか、と自問してみると、そうでないと思います。マナーやルール、形式がありますから、従うことが悪いと言っている訳ではありません。そういった言葉に心は動かされない、という描写です。

「顧客の事業を深く理解し、課題に対する最適解の提案とプロフェッショナルサービスの提供を致します」みたいな組織っぽい言葉は、正しさが充実して、減点を恐れているようです。感情や人間味を感じられない、飾り立てた形式的な言葉です。真面目で堅物で、意外性も余白もなく、言葉の形式から意味や心が飛び出ることのない言葉かもしれません。具体的な暑苦しさを感じない身の丈にあっていないブカブカの言葉かもしれません。ストーリー性のようなものが欠けています。

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