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閉じられた別世界-『やさしい訴え』小川洋子(1996年)
高校の図書室でこの人小川洋子の『冷めない紅茶』を見つけたとき、きっと私はこの作家を気に入るだろう、と思った。『余白の愛』とか『薬指の標本』とか、語感の美しいものを、私が好むからだ。
そのあと10冊ちかく読んだが、ぱたりと止めてしまった。物語の空気が重厚すぎるとおもった。主人公たちは、そもそものはじめから、前提として「お嬢さん」であるように感じたし、そこに軽やかさではなく、よく躾けられた不自由さ
高校の図書室でこの人小川洋子の『冷めない紅茶』を見つけたとき、きっと私はこの作家を気に入るだろう、と思った。『余白の愛』とか『薬指の標本』とか、語感の美しいものを、私が好むからだ。
そのあと10冊ちかく読んだが、ぱたりと止めてしまった。物語の空気が重厚すぎるとおもった。主人公たちは、そもそものはじめから、前提として「お嬢さん」であるように感じたし、そこに軽やかさではなく、よく躾けられた不自由さ