ユキ

本の感想と本の感想にかこつけた日記と単なる日記など書いていくつもりです。 自分の人生…

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本の感想と本の感想にかこつけた日記と単なる日記など書いていくつもりです。 自分の人生を取り戻す過程を書けたら、と思っています。 1記事2,000字程度です。 ※このアカウントに書かれてあることはすべてフィクションです。 (2024.2.11)

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  • 2024年読んだ本

    2024年に読んだ本・聞いた音楽の感想文です。 日記風に時系列で見れるように、フォルダ分けしました。 最終的に何冊までいくかな

  • 昔読んだ本たち

    過去にノートやSNSに書いた本の感想文をnoteに転記したものです。 最近読んで感想文を書いたものと分けたくて作りました。

  • 買ったまま読んでない本を読んだ!フォルダ

    買ったまま・手に入れたまま読んでない本(つまり積読)を読んで、感想文を書いていくコーナーです。 未読本100冊あります・・・ これを減らすことが人生の目標のひとつです。 応援してください!

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生きてきたことを刻みつける-『私が食べた本』村田沙耶香(2018年)

買ったまま読んでない本を読んでくシリーズ①:759円 (あと100冊ある…)  この本を買った理由は村田沙耶香の創作方法を知りたかったから。  この本を読むのをやめた理由は、書評の文章が型通りの展開で、あまり面白く感じられなかったから。  再開した理由は、私が今こうしてnoteに本の感想文を書くようになったので、参考になるかもしれないと思ったから。  『文藝別冊』の川上未映子特集で村田沙耶香の文章を読んだことがある。8人の作家それぞれが川上未映子作品を紹介するというもので

    • ここから抜けられてよかった-『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(2022年)

       (1,741文字)  10/8(火)丸善ジュンク堂書店 池袋本店で、高瀬隼子と金原ひとみのトーク・サイン会に参加する。だから高瀬さんの芥川賞受賞作を読むことにした。  高瀬さんのことは何も知らない。芥川賞をとったこと、女性ということ、左手に指輪をしていたので、既婚者だろうというくらいだ。作者のことを知らない状態で作品を読みたいと思っていたので、久しぶりに純粋な読書ができた。  芥川賞をとったとき職場の人間関係の話だと聞いて、今いる自分の立場と照らし合わせて読んでしまうだ

      • どうでもいいみたいな“普通の生き方”へのまなざし-『コンビニ人間』村田沙耶香(2016年)

         (1,545文字)  最近の私の明けることのない精神の闇に“面白い小説”という光を届けてくれた芥川賞受賞作。電車で読みながら吹きだすのを手で抑えていた。読み終わってしまった帰りもどこか浮き足だっていた。  さりげなくというよりは、どうでもいいみたいに示唆している、“普通の生き方”への違和感。  主人公のこだわりのない考え方が羨ましいような、寒々しいような。寒々しいというのは揶揄ではなくて、私とは遠くかけ離れた考えなので畏怖を感じるということだ。白羽さんに相当ひどいこと言わ

        • 人一人の何にも替えられない特別さ-『初夜』イアン・マキューアン(英2007年・日本2009年)

           (1,730文字)  森博嗣のミステリーを読み終えたあと、新潮クレストブックスを読みたいと思った。まだ今の私とまったくの別世界にいたかった。  イアン・マキューアンは読んだことのない作家だったが、以前、江國香織が彼の作品の書評を書いていた覚えがあり、もっとも薄いこの『初夜』を選んだ。そしてそれは今後の私の読書のために正解だった。もしくは私の人生のために。  こんな恋愛小説ならいくらでも読みたい。普段は避けてきた恋愛のジャンルが、これほど面白く貴重に読めたのは悦ばしかった。

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        生きてきたことを刻みつける-『私が食べた本』村田沙耶香(2018年)

        • ここから抜けられてよかった-『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(2022年)

        • どうでもいいみたいな“普通の生き方”へのまなざし-『コンビニ人間』村田沙耶香(2016年)

        • 人一人の何にも替えられない特別さ-『初夜』イアン・マキューアン(英2007年・日本2009年)

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          文学フリマ大阪に行ってきた②9/8日記-吉村萬壱さん、新生ミステリ研究会

          (つづき) 芥川賞作家 吉村萬壱さん  吉村さんのTwitterで14:00〜16:00に「あゆみ書房」のなかむらあゆみさんのところに参加すると告知があったので、時間になってすぐブースに向かった。  熱心な男性ファンが吉村さんに声を掛けていて、持参した芥川賞の『ハリガネムシ』にサインしてもらっていた。「手が震えて…」と言ってて、思わず見ると本をケースから取り出す手が本当に震えていた。  吉村さんの写真エッセイ『萬に壱つ』を購入する。吉村さんが撮った写真の束からわたしがひ

          文学フリマ大阪に行ってきた②9/8日記-吉村萬壱さん、新生ミステリ研究会

          文学フリマ大阪に行ってきた①9/8日記ーエリーツ・三橋宇見子さん

           大阪 天満橋駅直結の施設OMMホールで開催された「文学フリマ大阪」に行ってきた。今年で12回目だそう。会議室用の長テーブルごとに区切られたブースにたくさんの出店者がいた。その数833!(ホームページより)  わたしも同人誌を作りたいので、観察観察だ。  まず思ったのは、こんなにも本を出したい人や表現したい人がいるんだってこと。  どうしても埋もれてしまう。まず、本を手に取るまでハードルがあるし、立ち読みくらいしかできない中、お客さんにピンと来させるのもハードルがある。さ

          文学フリマ大阪に行ってきた①9/8日記ーエリーツ・三橋宇見子さん

          不幸の捉え直し-「壬生夫婦」江國香織(2006年)『Vintage'07』より

           (1,490文字)  これを借りたとき、江國香織の『物語のなかとそと』を読んでいた。色んな媒体に載ったエッセイや短編をまとめた本で、未読の江國作品が読めるのがうれしく、もっと江國さんを読もうと思った。すぐに図書館の端末で検索し、存在の知らなかった本を予約した。そのときの一冊だ。  主人公の富美子(谷崎の小説に出てきそうな名前)は離婚していて、毎週土曜日に介護施設に入所している母の見舞いにいっている。  父と、父の後妻の可奈子とともに温泉旅行に行くこともある。可奈子は富美子

          不幸の捉え直し-「壬生夫婦」江國香織(2006年)『Vintage'07』より

          語られる言葉があれば生きていた証になる-『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ(2022年)

           (1,962文字)  買ったまま読んでない本シリーズ③:1,700円  希死念慮女子と婚活しなきゃ女子という、2人合わせてわたしの二大劣等感を現してる小説。  ずっと前に買ったのにやっと読み出した。婚活女子の内容に落ち込む可能性を憂慮したのだ。もし少しでも「結婚しないとやばいよ!」って書いてたら、わたしはしばらく死ぬことになる。  帯の馬場ふみかさんの推薦文がいい。この帯のものが欲しくて何軒か探した。 この帯裏の引用。これで買った。  この婚活腐女子・由嘉里が、希死

          語られる言葉があれば生きていた証になる-『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ(2022年)

          誕生日恐怖症-『バースディ・ガール』村上春樹(初出2002年 本2017年)

           (1,409文字)  誕生日を過ごすのがとても苦手だ。  一年でいちばん不安にかられ、怯える、その予感だけで疲れてしまう。  3年前の誕生日は、2ヶ月以上微熱が止まらなかった。うつ病のように気力がなくて、本が読めなくなった。ベッドに寝転んでいると訳もなく涙が流れた。  去年の誕生日は気管支炎から咳喘息になり、理不尽なくらい咳が止まらず、眠れなかった。  でも、村上春樹はこの本で誕生日を全肯定する。  誕生日を平穏な精神で過ごせる方法があるなら、何としても知りたい。この

          誕生日恐怖症-『バースディ・ガール』村上春樹(初出2002年 本2017年)

          この景色を抱えたまま生きていきたい-『天然理科少年』長野まゆみ(1996年)

           (1,425文字)  図書館というこの世で最も素晴らしい場所で見つけた。今ある疑問に応えてくれる場所なのだ、図書館は。  この小説は、14年前私が好きだった人がいちばん好きな小説だと話してて知った。それ以来、度々この小説を思い出し、読もうと思い続けていた。なぜだろう? 私の「読みたい本リスト」は古参のものがたくさんあり、いつも頭に浮かぶのに、実際はほとんど減らない。やっと読むことができた。図書館のおかげで。  とてもとてもとても良かった。すごく好きだ。本を開くと立ち現れる

          この景色を抱えたまま生きていきたい-『天然理科少年』長野まゆみ(1996年)

          芸術が暴きだす心の奥底-『蜜蜂と遠雷』恩田陸(2016年)

          (1,987文字)  史上初直木賞と本屋大賞をダブル受賞した本作。  音楽を平面で表現するのは難しい。でも、人間の理解が言語を解する必要があるなら、小説の中に音を表現させることも可能なはずだ。  選考が進むごとに登場人物の数だけ音の描写を書き続けるのは非常に骨の折れることだったと推測する。恩田陸はこれでもかというほどの、いくつものバリエーションでそれを達成した。彼女にはふたつの大きな才能がある。音楽をつぶさに聴き、感じ取る力、そしてそれを言葉に置き換える筆力。この豊かさだ

          芸術が暴きだす心の奥底-『蜜蜂と遠雷』恩田陸(2016年)

          自堕落・自意識・貧乏上等-『くっすん大黒』町田康(1995年)

           (2,056文字)  2018年3月10日に町田康さんにお会いした。イベント前の町田さんは無表情でおとなしく、なんだか怖い印象だと思ったが、話しだすとずっと笑わされた。  私は質問カードに人生相談を書いた。「希望が持てず、虚しく、自信がない。どうすればいいでしょうか」と。町田さんは真面目に答えてくれた。意外だった。 「人生はどういうものか。人の人生を見てると楽しそうに見える。いい感じやなと。自分の中で貸借対照表を作るしかない。バランスを。自分だけで考える。他人と(比べて)考

          自堕落・自意識・貧乏上等-『くっすん大黒』町田康(1995年)

          人の生死と日々の深淵-『シズコさん』佐野洋子(2008年)

           (2090文字)  ロングセラー絵本『100万回生きたねこ』の作者佐野洋子のこのエッセイを、私はどこで知ったのだろう。  この本には人一人の人生では認識できないほどの深淵が書かれている。徹底的に日常が書かれてあり、かつ、人生そのものが書かれてあるのだ。それも非常に平易な文で。  これに類する本を私は知らないし、今後も出会うことはないと思う。  認知症はおそろしい病気だ。だからこの本を手に取ったとき、ちゃんと読み進められるか不安だった。  だが、佐野洋子からすると、認知症

          人の生死と日々の深淵-『シズコさん』佐野洋子(2008年)

          角田光代の到達、希望の本質-『紙の月』角田光代(2012年) 

           (※この記事3,130文字あります)  角田光代の小説を読むと激しく心を揺さぶられるから、もうなかなか読むことはないだろうと思っていた。  彼女の作品は2種類あると思っている。道具立ての派手な長編と、空恐ろしいまでに地味な日常を克明に描く短編だ。  後者にあたる『トリップ』はお気に入りだし、『人生ベストテン』は図書館で借りたのに、のちに購入した。「銭湯」(『幸福な遊戯』収録)を、私はいちばんの恐怖小説だと思っている。  冴えない日々の生活に、行き止まりの現在。それを書き、

          角田光代の到達、希望の本質-『紙の月』角田光代(2012年) 

          詩のように書かれる地獄、現実、そして救い-『キス』キャスリン・ハリスン(米1997年)

           海外のすぐれた作品を日本に紹介しつづける"新潮クレスト・ブックス”が創刊されたときの初回配本がこの『キス』だった。  あらすじは知っていると思っていたのだが、小川洋子と平松洋子の本に関する対談『洋子の本棚』を読んで、勘違いしていたことに気付いた。単に父親と娘の近親相姦の話というだけでなく、それ以上に母娘関係のもつれを書いていると聞いて、印象が変わった。毒親の話なら、読むべきだと思った。  抒情詩を思わせる文章。  作者の記憶の断片が淡々と書かれているが、全て象徴的なシーン

          詩のように書かれる地獄、現実、そして救い-『キス』キャスリン・ハリスン(米1997年)

          物語と人生の境い目-『物語のなかとそと』江國香織(2018年)

           (1516文字)  単行本が出たときの帯の触れこみが「すべて初収録」だったが、パラパラめくってすぐに気付いた。「世のなかの、善いもの、美しいものがすべて書きつけられている本を一冊だけ知っている」で始まる文(P.71)は『泣かない子供』で読んだし、短編「奇妙な場所」(P.84)は『ぬるい眠り』に収録されている。また、本にはこの短編の初出を「週刊新潮」と載せているが、おそらく朝日新聞だ(両方に載っていたのかもしれない)。元日に紙面一枚まるまる江國さんの小説が載っていたのを、当時

          物語と人生の境い目-『物語のなかとそと』江國香織(2018年)