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四年目

32
2022年の詩まとめ
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#現代詩

ひとりでたべる

ひとりでたべる

すきな半熟ゆでたまごすら作れない日は冷房の効いた部屋でタオルケットにくるまって寝てしまいたい、そういえば、今年の夏もそうめんを食べなかったなって食器棚に並ぶガラスの器を眺めておもう、商店街の夏祭り、パックにぎゅうぎゅうに詰められたぎとぎとの焼きそばに惹かれるし、お祭りが終わる間際になるとわざとじゃんけんに負けておまけをくれるあんず飴の屋台のおじさんの笑顔がすきだし、綿飴売りのおじさんはどこでもやる

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逃避行

「死にたい」は自分をまもるためのおまじないである、自転車の鍵を捨てて海まで歩こう、潮のにおいと波の音、先に気づいたほうが勝ちね、砂浜にのみこまれないように、磨いたばかりのローファーで波打ち際にむかう、きみと目が合う、生きてるね、僕もきみもたとえ死んだとしても、僕やきみであった肉体や生活の痕跡や卒業アルバムのくそださ写真も無くならないし、人生で関わった他人の記憶からは居なくなれなくて、それは僕たちの

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とも

とも

半年後に会っても、おはよう で、はじまるふたりの時間がすきです、ひととして好きって最高じゃないのか、異性だから愛になることが必然だとか、神様は酷い、うさぎのリンゴをきれいにつくる君はきっと誰からも愛されているのでしょうね、地球を狙うならいまですよ、不法侵入した学校の屋上できみとUFOを呼ぶ儀式、手を繋いでくるくるまわる、星たちだけが記憶する、会わないほどに美化されいく、お互いの記憶、はやく会ってき

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愛していないあなたへ

愛していないあなたへ

あの子は好きな人の話をするとき、とても可愛くてきらきらしていて清くて、尊いなぁとお日様の光を浴びるように聴いているよ、好きという感情は誰にもおかされず純度100%でいてほしい、その好きを向けられているのは自分ではないとしても愛しいなと思ってしまう、性のこと、自分のこと、こそこそするのは嫌だっていうけれど、それは相手がいいですよって聴くことを受け入れている状態だから許されるわけで、そうじゃない場合は

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居なくなる

居なくなる

ひとりで居るときに他人は孤独だと認識してくるけれど、ひとりでいるわたしは「わたし」と一緒に過ごしているから孤独を感じない、むしろ集団で行動しているときの、ふとした瞬間に孤独を感じてしまう、いざ死の過程を想像してしまうととてもこわくなる、死の完結のその瞬間がきっといちばんこわい、なにかに怯えて夜に一番星をさがす、手の届くことのないそれに安心する、帰りたいと居なくなりたいってすこし似てる、理由なんかな

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13:30

13:30

駅の改札前で待ち合わせをするとき
きみが先に到着していて
人混みにiPhoneをいじっている姿をみつける
改札をぬけるときSuicaのタッチ音がやけに響いて
はやく顔をあげて見つけてほしいのにひっそりと近づいて
おはよう、
きみの瞳がわたしにピントをあわせるとき
僕ときみの世界が繋げる

透明

透明

あなたは水
誰の領域にも違和感なく入り込んでくるのに
なにも残してくれない
掴ませてくれない
忘れてしまうほど無色透明無味無臭
ずるい、
満たされるのはわたしばかりで
溺れてみたい
あなたの濁ってしまった感情に