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ロールモデルを目指すと失敗する。その必然性と解決策とは?(後編)

こんにちは。米川(@yoneshi0320)です。

本noteは、先日投稿した『ロールモデルを目指すと失敗する。その必然性と解決策とは?』の後編です。
前編は以下よりどうぞ。


30秒で読みたい人のための要約

<結論>
- 現代おすすめのキャリア開発は、”脚本家思考を持ち、主人公のように働く”こと

<背景・理由>
- 主人公=もっとも変化する存在
- 変化は避けられない。ので、どんな変化でも意味を見出す必要がある
- キャリアの積み上げは、上方向だけではない
- 脚本家とは、物語をもっとも「メタ視点」でみている人物
- どんな強みも、いつかはゴミになる。


結論。”主人公のように”働く

最初に結論から。

自分のやりたいことを仕事にしながらも、会社の利益や成長につなげる。
具体的なキャリア開発に必要なのは、”主人公のように働く”です。

…大丈夫。
きちんと説明します。

あなたは誰?

質問です。
物語において、「主人公」とはなんでしょうか?


(シンキング・タイム)


おそらく、「最後に一番強くなる存在」や「元気があって明るい」、もしくは「勇気を持って立ち向かう」などが挙がったでしょう。

しかし、最も弱い主人公や、根暗で隠キャ、最後までぐずぐずしている存在もいます。「ドラえもん」の野比のび太は、その典型。

ぼくの仲間のイデトモタカは主人公を、次のように定義しています。

“主人公とは、物語のなかで最も「変化する存在」です。これだけを覚えてもらえれば、あとのことは全て忘れてもらっても構いません。”

出典:『漫画「ゴールデンカムイ」の面白さを言語化してみた』イデトモタカ、2022年

すっきりしますね。
言い換えると、「変化幅が最も大きい存在=主人公」です。

なので、いくら「ドラえもん」で、いくらジャイアンが一番強くても、出来杉くんが優秀でも、彼らには変化幅が無い(ように描かれているため)、主人公たりえません。

人生最後の後悔

では、キャリア開発、特段ここでは企業で働くことにおいて、なぜ主人公であることが必要なのか?

末期がん患者の緩和ケア看護師(=死に際の痛みや不安をセラピー療法などを使い、和らげる)のブロニー・ウェア氏は、2012年、ひとが死に際に後悔する上位5つのリストを作りました。

1.もっと、自分らしく生きればよかった
2.あんなにガムシャラに働かなくてもよかった
3.言いたいことは、はっきりと言えばよかった
4.もっと、友達と連絡をとればよかった
5.もっと、自分の幸せを追求すればよかった

ブロニー・ウェア『The Top Five Regrets of The Dying』

キャリアとは、なにも仕事で得た知識やスキル、経験だけを指しません。
その語源である「轍(わだち)」が示すとおり、あなたが人生で経たものすべてが、キャリアです。

(人生の)キャリアで後悔しないために、自分らしく生きる。つまり、自分の人生=物語において、もっとも変化する存在であることが必要なのです。

あいつならきっと……!

では、具体的にどうするのか?

まず具体的に、キャリアのゴールをイメージしましょう。前編で説明した、”WOOP (ウープ)”で考えても結構です。

その後、あなたが憧れる主人公を1名、思い浮かべます。
たとえばぼくは、漫画「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」に出てくる影の主人公、ポップを選びます。

DRAGON QUEST―ダイの大冒険― (ジャンプコミックスDIGITAL)

その後、キャリアに向けて、あの主人公ならどう変化していくか?を言語化
します。

例:ポップ
臆病で強敵にはきほん逃げ腰。自分の弱さにいつも劣等感を抱いている。
しかし、好きな相手に叱咤され、その後、みなに隠れて鍛錬に励む。
そ最後には、最強の攻撃呪文を習得する。

キャリアに置きかえると
最初は目標に向けて「高すぎるし、頑張るの面倒だな……。」と、逃げ腰でなんとなく手をぬく。
しかし憧れの人との仕事や面談で叱咤され、隠れて研鑽(けんさん)を始める。
最後にはキャリアの核となるようなスキルや実績を積む。

なぜ、番狂わせは魅力的なのか?

あとは、置きかえた行動を、とるだけです。
ただ、「わざと手を抜く必要があるのか?」と思うかもしれません。

もちろん、目指すキャリアへ一直線に行動できれば、それが最良。
しかしここで言いたいのは、たとえな意図せぬ変化や怠惰(たいだ)で目指すキャリアから遠ざかっても、その変化を大切にする、です。

変化とは、エネルギーの移動です。
すべての生き物はエネルギーを求め、食事をし、行動します。
ぼくらが弱小チームの強豪撃破に熱狂するのも、そこに発生するエネルギーが大きいからです。

おなじく映画やドラマ、漫画や小説などエンタメ全般では、主人公の変化量こそ肝(きも)です。

最初からモテる女子が主人公の少女漫画など、誰も読みません。
地味で根暗な主人公が、恋愛やファッションを通じて成長し、綺麗になる。そのストーリーとエネルギーの変化量に、人は魅了されるのです。

俯瞰するとは?

この一連の思考を、ぼくは「脚本家(きゃくほんか)思考」と名付けます。

自分の人生を物語とした際に、どんな場面展開があるのか?
目指すキャリアのゴール以上に、そこに至るまでの道のりをいかに面白く、魅力的なものにするのか?

主人公の変化を俯瞰して、失敗さえも必要性を見出す。
脚本家のような視点を持つことが、これからのキャリア開発には必須です。

それを示すエピソードが、日本を代表する精密機器メーカーから垣間みえます。

いくら損失出した?

新任部長研修(=部長になる上で必要なマインドやスキルを学ぶ研修)での話です。

研修は2日間にわたり、初日の懇親会には、全役員が参加します。
さぞ、これからの戦略や組織のあり方について薫陶(くんとう)がある、かと思いきや、毎年役員の失敗エピソードで終始するそうです。

「A事業の戦略を自分が作ったが、大赤字だった。」
「買収した企業とうまくいかず、2年で撤退した。」
「ある研究結果を特許申請してしまい、逆に他社が模倣製品を開発した。」

どれもこれも、数億〜数十億の損失額。
しかし役員陣はむしろ競うようにエピソードを話し、またそこからの学びをお互いにシェアしあう。

一般的な大企業であれば、自らの出世のために隠すような失敗も、むしろ会社と周りの糧になるならと開示する。
この姿勢に新しい部長陣は感化され、組織として失敗を恐れなくなるとのことです。

結果的にその会社は、ある領域においてグローバルNo.1。実に6割もの市場シェアを誇っています。

強みはすごいが、ゴミになる

もちろん、失敗もなく、最初から飛び抜けて優秀なスキルや経験があれば、ここまでの話はあまり参考になりません。

しかし、どんなにすごいスキル、たとえば論理的思考力やプログラミングなどでも、必ず上にはうえがいます。
たとえ国内のプログラミングコンテンストで優秀だったとしても、海外のコンテンスト優勝者やGAFAMの熟練プログラマーには、負けるときも。
さらに、ひとは老いる生き物。必ず1位を明け渡すときがきます。

その時に大事なのは、失敗を、エネルギーに変換できるか。

あたながあなたの人生の主人公として、キャリアを俯瞰しながら楽しんで働けることを、ぼくも陰ながら願っています。

30秒で読めるまとめ

<結論>
- 現代おすすめのキャリア開発は、”脚本家思考を持ち、主人公のように働く”こと

<背景・理由>
- 主人公=もっとも変化する存在
- 変化は避けられない。ので、どんな変化でも意味を見出す必要がある
- キャリアの積み上げは、上方向だけではない
- 脚本家とは、物語をもっとも「メタ視点」でみている人物
- どんな強みも、いつかはゴミになる。


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次回は2023年03月11日(土)更新予定

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