ロールモデルを目指すと失敗する。その必然性と解決策とは?(前編)
こんにちは。米川(@yoneshi0320)です。
今回は企業、特に大企業や官公庁など「大きな組織」でのキャリア形成を目指す方に向けた内容です。
お時間ない方は、30秒で読める要約でどうぞ。
30秒で読みたい人のための要約
35歳で課長。年収1,000万円、結婚、マイホーム。
今から10年前。就活時期に、大学のキャリアカウンセラーから熱弁されたのが、見出しのロールモデル像。
35歳まであと2−3年ですが、達成できそうになく。ただ、後悔しているかといえば、まったくです。これは企業に勤めていないから、のみならず、「ロールモデルをベースにしたキャリア形成」そのものへの懐疑(かいぎ)のためです。
※もちろん、見出しのキャリアそのものを否定しているわけではありません。あしからず。
初出は1950年代
そもそも、『ロールモデル』とは?
1950年代、コロンビア大学教授の社会学者 ロバート・キング・マートン氏は「個人は『目指す社会的役割を担う人々』と自分とを比較する」仮説を提唱。
その後、仮説の検証結果をもとにしたビジネス書の台頭で、「ロールモデル論」が提唱され、1990年代のアメリカでは日常的に使われるまでに。
現代でも、キャリア研修などでは「(社内外で)目指したい(あこがれの上の世代の)人」の意味で使われるのがほとんど。
社員個人の目線でみれば、会社=社会の一部 ですので、あなたも(ほぼ)この意味で使っているはず。
強く願うと、夢はかなわなくなる
しかし、作家の橘 玲氏が著書『バカと無知』で提示したのは、なんとも無慈悲な研究結果でした。
驚きの結果。ただ、このままでは「ロールモデルなど作るな。あこがれるな。」で終わってしまう。
絶望だけではなく、きっと、希望もあるはず。
引用元のニューヨーク大学心理学教授 ガブリエル・エッティンゲン氏の実験を少し、読み解きます。
詳細までわかるか?
エッティンゲン氏の実験では、願い(Wish)だけでなく
願いを達成したことによって得られる成果(Outcome)
達成に向けての障害(Obstacle)
具体的な計画(Plan)
上記をセットにした「WOOP (ウープ)」で考えると、ポジティブな自己期待をした被験者でも目標を達成できました。
つまり重要なのは、「ああなりたい」という抽象から、「どうやったらなれるか」の具体まで解像度を上げること。この点はぼくも、まったく同意です。
一方、キャリアの話に戻ると一つ問題が。それは、”ゴールやキャリア環境は変化する”です。
隠された前提
「WOOP」を使う場合、前提には2つのことが隠されています。
ゴール(=あこがれのロールモデル)は、大きく変わらない
障害には、自分の力だけで対応できる
たしかに、ダイエットや資格の勉強であれば、上記はたいした問題になりません。しかし、キャリアの場合はどうか。
1.について、あなたもロールモデルも、人間です。物理的には、体細胞が約2ヶ月ですべて入れ替わる。さらにロールモデル自身も、自らのゴールに向かい、変化している途中。そのなかで、なぜゴールは変わらないと断言できるのでしょうか。
2.については、昨今「上司ガチャ」「配属ガチャ」と揶揄(やゆ)される、異動や転勤。企業のリソース配分からいえば効率的な行為なのですが、こと社員個人からすると、寝耳に水です。
最近は地域限定職や転勤無しの職種も増えてきました。が、それでも事業環境の変化(=買収や事業部門の子会社化)も踏まえると、不確定要素は多分です。
IT界のサグラダファミリア
さらに、ロールモデルをベースにしたキャリア形成には、致命的な弱点があります。それは”途中でキャリアに変更があれば、その後の計画すべてが無意味になる”。似た事例に、みずほ銀行のシステム開発が挙げられます。
度重なる障害で、ついに金融庁が直接指導するまでにいたる。その複雑さと完成しないさまから、”IT界のサグラダファミリア”と呼ばれる現状。
さまざまな要因が挙げられますが、そのひとつが、ウォーターフォール型の開発手法。
ウォーターフォール型とは、文字通り滝が流れるように、上流から下流に向かってシステムを開発する手法のことです。
もちろんメリットもありますが、1番のデメリットは「一つ変更があると、ほかの全てを変えないといけない硬直性」。後工程が全てムダになるため、途中変更や修正に莫大なコストがかかります。
それは「分けられる」か?
一方、世界の主流は、DevSepOps (デブ・セプ・オプス)=モジュール化です。開発単位をある程度の機能で分け、小さなパッケージ単位で組み合わせるこの手法は、アジャイル型と呼ばれます。
この手法の利点は、次の2点。
(全員が)同時に作れる
必要な機能が出てきたら、あとから簡単に追加できる
どちらも、変化や不確定要素が多い現代のキャリア形成に、必要な要素。以降はこれを”アジャイル型キャリア開発”と呼びます。
鞄(かばん)持ちができる、は例外
とはいえ、ロールモデルをベースにしたキャリア形成(=以降、”ウォーターフォール型キャリア開発”と呼びます。)、すべてを否定するつもりはありません。
ウォーターフォール型キャリア開発の弱点は、常にロールモデルのそばにいれば、解決します。
そばにいることで解像度が上がり、自分のゴールやプランに素早くフィードバックでき、修正できる。これを満たす最強のアクションが、”ロールモデルの鞄持ち”です。
ロールモデルは具体的に、日々のなかで、なにを観て、なにを重視し、なにを選び、なにを捨てるのか。
つぶさに思考と行動をリンクできる鞄持ちは、もしとれるのであれば、最強の手段です。
とはいえ、全員の方ができる手法ではありません。ので、別の手段も考える必要があります。
ぼくのかんがえるさいきょうのキャリア開発
ぼくは10年弱、人材開発と呼ばれる領域に携わっています。その中でキャリアも開発の対象とされますが、うまく開発している人はみな、モジュール化と、もうひとつ、工夫をしています。
自分のやりたいことを仕事にしながらも、会社の利益や成長につなげる。
その具体的な内容は……長くなってしまうので、来週の後編でお伝えします。どうぞお楽しみに。
30秒で読めるまとめ
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後編はこちら。
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がんばるぞ。
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