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#ボーイミーツガール
神影鎧装レツオウガ 第百七十話
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「で、だ。ここでエンドマーク、ってワケじゃないんだろ? あんまりめでたい状況でもないし」
腕組みするファントム3――|冥・ローウェルのツッコミが、停滞しかけた空気を打ち砕いた。
「も、モチロン! アタリマエじゃあないですか!」
巌から勢いよく三歩くらい飛び離れた後、ヘルガは大きく息を吸う。大きく吐く。
それで、平常心は概ね戻っていた。
「……ふう。
神影鎧装レツオウガ 第百六十九話
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「……」
「……」
|辰巳は、何も言わない。
風葉も、何も言わない。
久し振り過ぎて。感慨が、深過ぎて。
何を言えばいいのか。見当が、つかないのだ。
それから、しばらくして。
「……あー。えーと。なんだ」
意を決して、と言うよりも。沈黙に耐え切れなくなった感じのファントム4が、おずおずと口を開いた。
「髪」
「えっ?」
「いや。前と違うんだな
神影鎧装レツオウガ 第百六十八話
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立ち込める爆煙。跳ね回る轟音。
室内を蹂躙する光と熱と衝撃は、程なく晴れていく。
後に残ったのは、完膚なきまでに爆散した霊力タンクの金属片。多少揺らいだ程度で、大した損傷も無く部屋を守り続けている霊力装甲。
以上である。
物言わぬ|風葉達が転がる、という光景はない。
誘爆し拠点ごと吹き飛ぶ、という光景もない。
あるのはせいぜい、霊力光の粒子
神影鎧装レツオウガ 第百六十三話
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Chapter17 再起 06
跳ね回る足音が、通路の奥へ消えていく。
その後を追うように、三人は歩みを進める。
ヘルガ。|風葉。オーウェン。それぞれ油断なく武器を構えながら、しかし迷いなく進んでいく。標的の位置も人数も分かっている以上、当然ではある。
「静か、ですね」
「そりゃーそうだよ。さっきのヴォルテック・バスターで、霊地の中にあったヤツは一
神影鎧装レツオウガ 第百五十七話
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ChapterXX 虚空 11
「うひゃあー」
そんな声を出す事しか、|風葉には出来なかった。
背後で未来の術式――時空転移術式が消滅していくが、風葉は気にも留めない。
それ程までに凄まじいエネルギーの大渦が、視界の全てを、三百六十度を覆い尽くしていたからである。
「うーん。改めてこうしてみると、つくづくとんでもないねえ」
風葉の周囲をふわふわと
神影鎧装レツオウガ 第百五十五話
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ChapterXX 虚空 09
「うーん、なかなか一大スペクタクルな感じだったネ! にしてもやっぱシメの方になると演算負荷が高くて見辛いこと見辛いこと。不確定要素が多すぎるんだよね~」
ぱきん、と指を鳴らす。エラーメッセージを表示していた立体映像モニタが切り替わり、半透明の黒い画面に戻る。今まで映していた映像――日乃栄高校における辰巳《たつみ》と風葉《
神影鎧装レツオウガ 第百三十六話
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Chapter15 死線 04
「う、る、ア!」
グレンの拳が飛ぶ。直線の、有無を言わさぬ初撃。辰巳は難なくこれを弾くが、しかし歯噛みする。オウガの操縦のため、左腕をコンソールから外すわけにはいかない。これでは手枷と同義だ。
「まだまだァ!!」
そして当然、グレンの攻め手は始まったばかりだ。鋭い三連続のジャブ。流れるような回し蹴り。意表を突く裏拳。打
神影鎧装レツオウガ 第九十三話
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Chapter10 暴走 14
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
その音は、辰巳の耳へ、酷く明瞭に届いた。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
その音を、感触を、辰巳は良く憶えていた。
それは、潰れる音だ。
肉と、血と、骨が。
混ざり合って、ひとつの、よくわからない、赤黒い、カタマリになってしまう音だ。
そう、憶えている。
二年前。辰巳はその音を、他でも
神影鎧装レツオウガ 第九十一話
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Chapter10 暴走 12
ディスカバリーⅢ四号機のコクピットハッチが、音を立てて開いた。中から出て来たマリアは、素早く地上へ降り立つ。同時に周囲の状況を、特に上空の大鎧装の戦闘を、手早く確認。
しかる後、マリアは今し方辰巳《たつみ》と交わした短い作戦を反芻する。
『それで、どうやって助け出すんです?』
『シンプルに行くのさ。前と同じ事をやる。そ
神影鎧装レツオウガ 第八十九話
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Chapter10 暴走 10
「野暮用だ、キミはそのままでいい。状況のデータは今送る」
レイト・ライト本社ビル近郊。上空を飛び去る赫龍からもたらされた、待機命令とEフィールド上の現状。
フェンリルと交戦中のオウガ。アメン・シャドーと交戦中の赫龍。そして姿が見えぬファントム3。それらの状況と情報を複合したマリアは、最高のタイミングが巡って来た事を悟っ
神影鎧装レツオウガ 第八十七話
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Chapter10 暴走 08 白と、黒と、灰色。
それが今、風葉の視界に映る色彩の全てであった。
白は雪だ。しんしんと降り積もる結晶は、今でさえ足首まで埋めている白色を、更に厚く塗り重ねていく。
黒は森だ。降り続く雪の帳の向こう、悠然と連なる巨大な木々は、槍じみた枝を空めがけて突き刺している。
そして、灰色は空だ。木々の更に向こう、降りしきる雪
神影鎧装レツオウガ 第八十五話
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Chapter10 暴走 06
コクピットを満たす紅茶の香り。しばらくそれを楽しんだ後、マリアはティーカップを傾けた。
舌の上を転がる、熱い琥珀色。こくりと鳴る喉。じわと染みる熱。賦活する霊力。
この紅茶にも回復効果は含まれているのだ。
「ふ、ぅ」
息をつくマリア。ようやく人心地ついた。だが同時に、飲んでる場合なのかという疑問符も沸き上がって来る
神影鎧装レツオウガ 総合目次
■ あらすじ ■
五辻辰巳が怪物を消し飛ばした。
霧宮風葉は、その一部始終を呆然と見ていた。
なぜ、こうなったのか。
発端は、つい今朝方。風葉の髪が銀色になった上、犬耳まで生えていたが為に、全ては始まったのだ。
しかも異常事態はそれだけに留まらない。日常は薄墨色の向こうへ沈み、怪物が当然の如く出現し、果ては巨大なロボットが校舎を揺るがせる。
やがて明らかになるのは、日常の裏で繰り広げられていた
神影鎧装レツオウガ 第一話 【後編】
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Chapter01 邂逅 01 【後編】 みし、と震える空気。
たったそれだけで、世界は影色に沈んだ。
「……なに、これ」
つぶやく風葉。
一直線の廊下。朝日が差し込む窓。向かいに見える北校舎。並んでいる教室の扉。歩いて来る担任の先生方、等々。
風葉の目に映っている全てのモノから、精彩が失われていた。
比喩ではない。本当に、あらゆる色が、薄墨色のベールの向こ