与井杏汰

「よいあんだ」です。ショートショート的な短いストーリーを書いています。ちょっとした空き…

与井杏汰

「よいあんだ」です。ショートショート的な短いストーリーを書いています。ちょっとした空き時間で楽しんでいただける話を載せていきます。https://twitter.com/yoi_anda

最近の記事

幸運クーポン

「ねぇ見てこのアプリ」  電車の中で、佳美は手中のスマホをかざした。 「毎日、抽選で幸運が当たるんだよ」 「幸運? 何かと引き換えのクーポンじゃなくて?」  隣にいた昌宏は聞き返した。 「これはね。幸運がもらえるクーポン」  佳美はニコッと笑うと、そう答えた。 「どういうこと?」  昌宏の怪訝な顔に、佳美は軽く答えた。 「マサ君も試してみたら? 私はまだ当たったことないけど」  昌宏は教えられたアプリをインストールし、アカウントを登録した。早速クーポンが複数表示され、良くあ

    • 【雑文】 春、新年度

      なんとなく新年度は楽しいですね。 何かが変わっていくような、一新されるような「雰囲気」が好きです。 (実際はあまり変化がないとしても) 日本の場合、新年(1月1日)と新年度(4月1日)の2回区切りがあります。 大晦日(12月31日)から元旦(1月1日)へ切り替わりは、厳かな、年末の押し迫った、ある種の息詰まった感じから、何も無い真っ白な「年」が始まる開放感(今年については元旦から大変な事が続きましたが)という終点→始点へ切り替えのようなダイナミックさがあります。 それに対

      • トロッコ問題

         トロッコがレールの上を走る。トロッコには5人の子どもたちが乗っており、開放感と疾走感に歓声を上げている。レールの先には別の子どもが遊んでいる。子どもは耳が不自由なのか、トロッコの歓声に気づいていない。レールの途中には分岐器(ポイント)があり、子どもが遊んでいる方向とは別のレールには1人の老婆が足を痛めてその場に佇んでいる。どうやら自分では動けないようだ。あなたはトロッコが分岐器を通過する前に、その転てつ機(切り替えレバー)を倒せる位置にいる。  あなたならどうするか。

        • 【雑文】 現代に生きる幸せ

          春が近づいています。 寒いながらも、季節は順調に進んでると思います。 さて、大谷選手と水原元通訳の件は気になりますが、今回の記事を書くきっかけは、大谷選手のこれまでの活躍と、それを見て歓喜するたびに感じたことが関わっています。 私は(そしてこの記事を同時代に読んでいる諸氏は)、偶然この時代に生きています。中には未来から来た、とか、実は前世で希望を出して通った、とか、あの世もゴニョゴニョが通じるから、希望の時代があるなら覚えておくと良い、とか、そういった特殊事情の方もいるか

        幸運クーポン

          夢の再生

          「あなたは自分の見た夢を覚えていますか?」  そんな問いかけに、真治は「いえ」と答える。するとその男が妙なものを取り出した。 「こちらはまだ一般には販売していないものですが」  男はそう言うと、その装置の説明を始めた。 「寝ている間にこの箱を枕元に置いて、こちらの輪を頭に巻いてください。目が覚めたら、この箱とリンクしたあなたのスマホでアプリを立ち上げると、あなたの見た夢が再生されます」  にわかには信じがたい、それこそ夢のような話だったが、お試し版ということで無償になるそうな

          1枚の似顔絵

           しばらく会えなくなるから、と彼女は包に入った板状の物を差し出した。 「これ、たまたま街で似顔絵屋さん見つけて、描いてもらったの」  僕は、包を開いて、中を見てみる。 「へー、いい感じの絵だね」  そこには、わずかに微笑む彼女の姿が美しく描かれていた。 「これからは遠距離になるけど、これ部屋に飾って、私のこと思い出してね」  彼女はそう言うと、今日は用事があるから、と手を振って別れた。  それから1週間後、彼女がこの街から居なくなった。僕は寂しさを紛らわすため、毎日部屋の似

          1枚の似顔絵

          「リアルいいね」開発者の思うこと

          *この物語はフィクションです。  世の中、SNSの普及で「いいね」流行りだ。  写真だろうと、文章だろうと、音楽だろうと、創作活動に携わる者は、いや、ただの思いつきの投稿しかしない者まで、誰かに承認されたい欲求と、それを簡単に叶える魔法のシステムで、とりあえず「いいね」の数が増えれば満足、少なければ落ち込む、そんな社会になってしまった。  だから、私は考えた。そして開発した。ネット上だけじゃない、リアル空間でも「いいね」が押せる世界だ。IoTって言葉をご存知だろうか。あら

          「リアルいいね」開発者の思うこと

          【雑文】 ドラマとかで見かける「時間」

          現代人、余裕がない人、多いと思います。小生もそうです。 小生どころか、極小性、超極小生、などと進化しても良いくらい、時間や気持ちに余裕がない時もあります。 ところがドラマを見ていると(そういう時間はあるんだ、という指摘はさておき)、超多忙であるに違いない医者や刑事、経営者や学校の先生などが、結構な暇ごと(失礼)に付き合ってるんですよね。悩みを持つ人の話をゆっくり聞いて寄り添ったり、一緒に解決したり、あるいは楽しい時間を過ごしたり。 「これは、小生が時間の使い方が下手なだけ

          【雑文】 ドラマとかで見かける「時間」

          判断力向上サービス

          「あなたの判断力を高めます」  谷繁はSNSで流れてきた広告を何気なくクリックした。 「いつも迷ってばかりのあなた。あの時、ああすれば…と後悔の多いあなた」  そんな大きな見出しが踊っている。 「そんなあなたの判断力を向上させます!」 「それでも迷ったら、高度AIがあなたの判断をサポート!」  なるほど。そういうサービスか。ま、今風だな。値段は?そう思って画面をスクロールする。 「今なら、1ヶ月無料で開始できます!」  お、そうか。どうせ暇だし、試しにやってみるか。谷繁は深く

          判断力向上サービス

          【雑文】 発想!の数珠つなぎ

          何かを生み出そうとしている時ではなく、日常生活で、急に面白いことが思い浮かぶ事があります。それは創作のネタに限らず、ビジネス的なアイデアだったり、それ以外のことだったりします。(なお、ビジネスアイデアはそれ を職業的に活かすチャンスがあるわけでもない、別次元のことが多いですが) で、その「アイデア」は、なんとなくおぼろげな形で、今にも壊れそうな弱々しいもの、な時も往々にしてあります。 「あ、今いいこと浮かんだ!」 という瞬間に、その柔らかくて消えそうな「何か」を形にして、あ

          【雑文】 発想!の数珠つなぎ

          【雑文】 2月?早くない?

          2024年という新年が始まり、相変わらず時間に余裕の無い生活をしていると、気づいたら2月(しかも3日)。早すぎだろ、と思うのは私だけでしょうか。 節分、豆まき、恵方巻(元は関西のさらに一部のローカル行事だったようですが、商業的に全国区に)、などの季節系イベントがあるため、何となく時間経過に疎くなっている私のような者でも、「あ、2月3日だ」などと知ってしまいます。そして思うのです。「やばい」「はやい」「まずい」と。 「やすい」「はやい」「うまい」なら3拍子揃って申し分無いの

          【雑文】 2月?早くない?

          ラッキー・トレイン

           島村は今日も通勤電車に乗る。慣れた駅、慣れたホームから乗る見慣れた列車。ドアが開いて、いつものように車両中程へ進む。始発駅から離れたこの駅では、既に空席はなく、島村はいつものように吊り革に手をかける。  電車が隣の駅を過ぎた頃、何気なく吊り革を見上げる。島村は目を見張った。その吊り革は薄く光っていたのだ。両隣の吊り革は、特に何の変化もないようだ。何事かとそのまま眺めていると、車内にアナウンスが流れた。 「本日も、○○鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。本日から

          ラッキー・トレイン

          【雑文】 新年と干支

          こんにちは。与井@自宅です。 note、続けて2年を超え、まだまだ創作の楽しさを感じていますが、以前より新作ペースは落としております。あしからず。 で、新年が始まり、その挨拶もせずに新作発表から幕開けしたり、相変わらず自由に記事を上げております。あしからず。 毎年、年末になると、「今年の1年」を振り返ったり(昨年の私は、余裕がなくて足早に思い出して終わりでしたが)、年賀状を準備したり、来年のことを少し考えたりします。特に年賀状のくだりで、「干支」を意識します。来年はナニ

          【雑文】 新年と干支

          【雑文】 寒いのら

          ら・ら・ら と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 特定の楽曲? どこかで聞いた歌の一節? それとも、「RA」か「LA」か、と言った外国語へ変換した場合の表記(発音)問題? 寒い中、キーボードを打っていて、とりあえず思い浮かんだタイトルが、「寒いのら」だったのですが、そういえば「ら」で終わる方がしっくりくるな、今日は「ら」がフィーチャーだ、ということで今に至ります。 「ら」と似た言葉で「らん」があります。 乱、欄、蘭、卵、LAN、RUNなど、様々な意味がありますが、今現在

          【雑文】 寒いのら

          沸点調整剤

          「うちの課長、怒りっぽいのよ」  庶民的な居酒屋で、美乃花は友人の里美にぼやいた。 「今日も話の途中で、勘違いして1つ下の後輩を叱り倒してたわ」  里美はそんな課長ネタを一通り聞くと、スマホの画面を見せた。 「これ、私の知り合いが販売してるやつだけど」  美乃花は何だろう、と身を乗り出して見る。 「怒りやすい人の『沸点』を上げる調合をした粉末。一応医薬品じゃないから、販売に認可とか処方箋は要らないんだって」  里美の説明に半信半疑だったが、値段も安く、体に害も無いというので、

          沸点調整剤

          【雑文】 大晦日(最終日)

          今日が今年最後のようです。 つい先日、2023年(令和5年)が始まったと思ったら、もうおしまいです。 まぁ、2023年は無料なので文句の言いようもありません。 これが有料コンテンツなら、ちょっと早すぎない?などと言えるのですが。 「短いのは楽しかったから」「充実してたから」 というのは映画や旅行では妥当な評価ですが、「年」というコンテンツでもその理論で良いのか、自信がありません。 でも、その検証にまた1年くらいかかりそうなので、その辺りはぼやけたまま、グレーなまま、2024

          【雑文】 大晦日(最終日)