トロッコ問題
トロッコがレールの上を走る。トロッコには5人の子どもたちが乗っており、開放感と疾走感に歓声を上げている。レールの先には別の子どもが遊んでいる。子どもは耳が不自由なのか、トロッコの歓声に気づいていない。レールの途中には分岐器(ポイント)があり、子どもが遊んでいる方向とは別のレールには1人の老婆が足を痛めてその場に佇んでいる。どうやら自分では動けないようだ。あなたはトロッコが分岐器を通過する前に、その転てつ機(切り替えレバー)を倒せる位置にいる。
あなたならどうするか。
転てつ機のレバーを押して老婆の方に切り替えるか。
そのまま子どものいるレールに走らせるか。
あなたが決められないうちに、トロッコは分岐器を通過した。
私は惨事を恐れて目をつぶる。
やがてレールが軋む音がする。
目を開けると、子どもたちは言った。
「自動ブレーキが作動したよ」
令和のトロッコには、安全装置が施されていたのだ。
*この物語はフィクションです。