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『トロッコ』芥川龍之介 「帰り道って怖かったよね」と、懐かしんで

○はじめに

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。


『トロッコ』芥川龍之介

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【芥川龍之介を語る上でのポイント】

①『芥川』と呼ぶ

②芥川賞と直木賞の違いを語る

③完璧な文章だと賞賛する

の3点です。

①に関して、どの分野でも通の人は名称を省略して呼びます。文学でもしかり。「芥川」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学に贈られる賞です。それ以上は僕もよくわかりません。調べてください。

③に関しては、芥川はその性格上完璧を求めるが故に短編が多いです。僕個人短くて凝ってる文章が好きなので、まさに芥川の文章は僕の理想です。


○以下会話

■日本版「スタンドバイミー」

 「子供の頃を思い出す小説か。そしたら芥川龍之介の『トロッコ』がオススメかな。これは少年が大人の世界を知る短編小説で、映画でいうと『スタンドバイミー』みたいな、自分の子供の頃を思い出す、絵本の様な優しい話なんだよ。

■『トロッコ』あらすじ

『トロッコ』は、小田原熱海間に敷く鉄道工事に使われたトロッコに憧れを抱いた良平という8歳の少年の話なんだ。良平はトロッコがゴロゴロ走ってる姿を見て、良いな、乗ってみたいなって思って、毎日工事現場に行ってたんだよ。ある日また見学に行くと、トロッコがポツンと残されていて、周りに工事のおじさん達がいなかったんだ。良平は友達と一緒にこっそりトロッコ近づいていって触ると、ゴツゴツして頑丈で冷たかったんだ。3人で上り坂に向かって力を合わせてトロッコを押して、もう上がらないとこまで来たら、皆で一斉にトロッコに飛び乗ったんだ。すると坂をグワって下っていって、その疾走感と振動と風と音に興奮して有頂天になったんだよね。平坦になってトロッコが止まったからもう一回やろうと思って降りたら、後ろから「何やってんだ!」って怒鳴られたんだ。良平達はいちもくさん逃げて、その場を逃れたんだけど、良平はトロッコに乗った高揚感を噛み締めていたんだ。

10日程経った後、良平はまた工事現場に行くんだ。すると、工事のお兄さんが二人いたんだけど、どちらも優しそうな雰囲気だったんだ。近寄ってトロッコ押していい?って聞くと「おお、いいよ」って言ってくれて、二人と一緒にトロッコを押していったんだ。熱海の方に向かってゴロゴロと一生懸命トロッコを押していく。下り坂まで来たら、「よし乗っていいぞ」と言われて、良平は嬉しくなってトロッコに飛び乗って、みかん畑の匂いを嗅ぎながら、皆で坂を滑っていったんだ。そうやって楽しくトロッコを押してたんだけど、なんだか凄い遠くまで来てしまった気がして、段々不安になってくるんだよ。すると工事のお兄さんに「もう遅いから帰りなさい」と言われて、一人で暗い坂道を帰ることになったんだ。一人歩いていると急に怖くなってきて、一刻も早く家に着きたくて、緊張しながら無我夢中で走って、「命さえ助かれば良い」って思う。そしてがむしゃらに走ったら、やっと家の明かりが見えて、家の中に駆け込んで、両親を見ると安心して大声で泣くんだよ。これでお話は終わり。なんだか自分の子供の頃を思い出すでしょ。

■子供の頃の体験

僕も小学生の頃「もう一生帰れないんじゃないか」って不安になったことあったな。小学1年生の頃コウタ君っていう子と仲良かったんだけど、彼は4つ上にお兄ちゃんがいたから、周りより「大人っぽい物」へ興味を持つのが早かったんだよ。ある日コウタ君の家に遊びに行ったら、コウタ君がエアーガンを抱えて玄関から出てきたんだよ。僕は黒いゴツっとした「本物の」エアーガンを初めて見て、一瞬で心を鷲掴みされたんだよ。触るとひんやりしてて重くて、カッコいいなって思って「僕も欲しい」って何気なく言ったら、「じゃあ今から買いに行こう」って提案されて、コウタ君のお兄ちゃんと一緒に自転車でエアーガン屋さんに行くことになったんだよ。自転車をこぎ始めると楽しくてワクワクしてきたんだけど、15分くらい走って段々見知らぬ街並みになってきて、日も暮れ出してくると、ほとぼりが冷めて冷静になってくるんだよね。まず今僕の財布に入ってるお金では到底エアーガンは買えない。仮に買えたとしても無駄遣いを怒られる。何より僕がエアーガンという野蛮な玩具に興味があることを母親が知ったらショックを受けるんじゃないか。そしてここはどこなんだ。僕は5時までに家に帰れるのか。どうしよう、急に不安になってきた。心臓がバクバクしてきて、店に着く前に既に帰る口実を考えるんだよ。やっとのことでお店に着いて中に入るんだけど、気もそぞろで早く帰りたいんだよ。「高いね。買えないね。帰ろうかな。」って言うと、コウタ君のお兄ちゃんは小学5年生だから、例え買えなくても見て楽しむという高尚な感覚を持ち合わせていて、「もうちょっと見ていこうよ」って言われちゃうんだよ。確かにまだ着いて1分も経ってないんだよね。だけど不安で潰されそうになってて他に何も考えられなくなって「僕今日ピアノ教室だったんだ」って嘘ついて二人を置いて自転車にまたがって帰るんだよ。帰ることになったのは良いものの、道があやふやで、外は暗くなってきて、心臓がバクバクしてくるんだよ。半分泣きそうになりながら、来た道を必死に思い出して、自転車を一心不乱にこいでると、段々見慣れた街並みになってきて家までの道が分かってくるんだ。ちょっと安心して、ふーって一息ついて、でも空は暗くなりかけてるから、「帰ってくるの遅い」って怒られるかなって思って、急いで家まで自転車を走らせて、家に着いて自転車停めて、ドキドキしながらドアを開けたら「おかえり〜」って普段通り迎えてくれて、全然怒ってなくて、緊張が解けて、情けない顔になって、お母さんに駆け寄りたくなって、これからはずっと家にいようって思う。

多分みんな小さい頃は『トロッコ』と似たような体験をしてると思うんだよ。だけど何かきっかけが無いと思い出さないよね。本を開いて文字を追ってたはずなのに、過去を思い出したり、未来を描いたりして、いつの間にか自分の物語に入ってる時あるよね。こういった体験をさせてくれるのも本の良いとこだよね。『トロッコ』は自分の過去へのレールを引いてくれる物語なんだ。今度感想聞かせてね。」



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