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常に気だるいフリーレンと、常に熱いルフィ

アニメ「ワンピース」もやっとのことでカイドウを倒し、ようやくひとつのメドがついたわ。
いくら何でもワノ国編、長すぎるっちゅーねん。
ここまで焦らされると、久々の「宴」が妙に泣けたんだけど・・。
それにしてもルフィというキャラは、少年漫画主人公キャラにおける王道中の王道である。
この「ワンピース」に限らず、「ドラゴンボール」の悟空、「ハンターハンター」のゴン、「ブラッククローバー」のアスタ、「フェアリーテール」のナツ、「七つの大罪」のメリオダス、こうした王道アドベンチャーの主人公たちに共通していえることは
・性格が明るい
・友達が多い
・勉強ができるタイプではない
・でも運動神経は非常にいい
・負けず嫌い
・熱血タイプ
といったところだろうか。
おそらくこういうタイプが、小学生ぐらいの子供にとって理想のヒーロー像なんだと思う。
まぁ確かに、上記のようなキャラならクラスの人気者になるのは間違いないよね。
案外こういうヒーローっぽい少年って、いそうでいない気もするけど。

「フェアリーテイル」少年マガジン
「七つの大罪」少年マガジン

さて、これが少年漫画ではなく、ラノベのヒーロー像ならばどうなるのか。
ひとつの資料として、「このライトノベルがすごい!」における男性キャラクター人気投票の歴代1位をここ10年分列挙する。

【2014年】比企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている)
【2015年】比企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている)【2016年】比企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている)
【2017年】上条当麻(とある魔術の禁書目録)
【2018年】キリト(ソードアートオンライン)
【2019年】上条当麻(とある魔術の禁書目録)
【2020年】綾小路清隆(ようこそ実力至上主義の教室へ)
【2021年】綾小路清隆(ようこそ実力至上主義の教室へ)
【2022年】綾小路清隆(ようこそ実力至上主義の教室へ)
【2023年】綾小路清隆(ようこそ実力至上主義の教室へ)

やはりラノベは対象年齢が少し上だけあって、少年漫画の主人公とはキャラが全然違う。
上記の4名のうち、上条当麻だけは陽キャで友達も多いという少年漫画的キャラだが、残りの比企谷、キリト、綾小路はいずれも陰キャである。
ただ3人とも、頭はいい。
一方でいまどきの処世術とでもいうべきか、ヘタに目立たぬように、自分の能力を隠して生きてる感じが彼らの共通点である。
能ある鷹は爪を隠す。
これがラノベ主人公のヒーロー像かもしれない。
少なくとも、みんなの前で「海賊王に、俺はなる!」と公言する少年漫画とは、180度真逆のスタイルであることは確かだ。
弱そうに見えた奴が実は‥というスタイルこそが厨二世界の王道であって、熱血とは真逆の価値観。
そもそも「友情・努力・勝利」というジャンプ三原則を全否定するのが厨二的ヒーローであり、綾小路清隆なんて、友情どころか誰にも心を開いたことがないぞ。
努力せずとも、物語が始まった時点で既に桁違いの最強だったし。

「ようこそ実力至上主義の教室へ」綾小路清隆
「やはり、俺の青春ラブコメはまちがっている」比企谷八幡

昔から少年ジャンプでは、主人公が作中最強であるパターンは少ない。
主人公とその仲間たちもポテンシャルはあるんだけど上には上がいて、必ず途中で挫折し、やがて血の滲むような修行を積む展開になるのがお約束だ。
これは読者が小中学生であることを想定し、「井の中の蛙になるな」「仲間を大切にして苦労を分かち合え」「努力によって自らの弱点を克服せよ」という教育的メッセージを発信することがジャンプの主眼であって、その為にも主人公が最初から最強じゃ都合が悪いのさ。
ある意味、こういうジャンプの啓蒙は正しいと思うよ。
ひとつ、考えてみてくれ。
仮に、あなたが企業の人事部で新入社員の面接担当者だったとしよう。
で、ふたりの若者が面接に来た。
一方はジャンプの愛読者で、ルフィに憧れてる子。
もう一方はラノベの愛読者で、比企谷八幡に憧れてる子。
さあ、あなたならどっちを選ぶ?
そりゃまあ、ほぼ全員が前者を採るよね。
だって前者は「友情・努力・勝利」の価値観だし、その熱血は会社にとって有益だから。
対する後者はどっちかというと省エネ志向、仮に能力があっても出し惜しみしそうだよ。
つまり、そういうこと。
ジャンプは、社畜を大量生産するのに極めて有効な啓蒙書。
対するラノベは、そういう社畜になるのに抵抗する者たちへの慰みの書。
皆さんはジャンプとラノベ、どっちが好きですか?

「葬送のフリーレン」少年サンデー

だけど、最近「葬送のフリーレン」を見てて、あれ?と思ったんだ。
私は原作を読んでないからよく知らなかったんだけど、主人公フリーレンはめちゃくちゃ強いんだね。
まるでラノベのような主人公最強設定。
ああ、そうか。
これって、少年サンデーなんだ。
サンデーは、少年誌の中でも独自の路線である。
思えばフリーレンって比企谷や綾小路と同じで、常に冷めた目をしてるんだよね。
ルフィは常に燃える目をしてるのに。
こういう「友情・努力・勝利」のジャンプはいうまでもないが、マガジンだって「東京卍リベンジャーズ」や「炎炎ノ消防隊」など熱血系が主軸。
しかしサンデーはそのての熱血の色がやや薄めで、どこかクールである。
思えば「名探偵コナン」とか、あれって明確な主人公最強系でしょ?
コナンの警視庁やFBIすら手玉にとる知能の高さ、最近はバケモノじみてきて少し恐いよ。
古くは、あだち充先生の名作「タッチ」もそうだ。
今思うと、上杉達也のキャラって比企谷八幡っぽいというか、能ある鷹は爪を隠すというラノベ型主人公だったよね。
なるほど。
今の時代、これほどラノベが人気を博してるってことは、ジャンプ熱血系の牙城をサンデーが少しづつ浸食してるってことか?

少年誌発行部数推移

いや、上の図を見ての通り、サンデーだってジャンプやマガジン同様、発行部数を落としてきている。
というか、もともとジャンプ・マガジンの二強と大きく差をあけられてたんだね。
ただし直近の数値を調べてみると、ジャンプ・マガジン・サンデー三誌の中で唯一、サンデーだけが発行部数の前年同期比を上回ったんだそうだ。
おお、遂にきたか。
いよいよ日曜朝9時半のアニメ枠に、サンデー系が放送される日も近いかもしれんぞ。
もしも日曜朝に気だるい主人公の姿を見ることになったら、その時は日本のGDPが少し下降することを覚悟して下さいね(笑)。

やはり、これこそが男の理想像なんだろうか?

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